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自分と同じ顔、仮面の下と同じ顔、けれど違うところがひとつ。
“仮面をつけていない”
そんな彼をブラックはじっと見ていた。それに気がついたのか、別世界のブラックこと、アートルムは視線をブラックに、向けた。
赤い瞳がこちらを覗いており、どこか自分と違うと思った。
「・・・あなたは、私と似ているのに、私と全然違いますね」
「そうですか?」
そうアートルムは聞く。ブラックは少し俯いて答えた。
「えぇ・・・私は、それがすこし、羨ましい」
そうブラックは呟いた。それに、アートルムは答えた。
「・・・私は、あなたが思うほど、いい人間ではありません」
「え?」
アートルムは赤い瞳を悲しげに揺らした。
「・・・私は、母がおらず、父は、私を売りました」
「え」
思わずブラックはそうこぼす。それを気にせず、アートルムは話し続ける。
「買われたところは、子供などを人身売買したりする組織でした。私はその子供たちを拐かして、組織の人がその子供を捕まえることをしました。・・・私は、死にたかった」
「・・・・・」
「でも、生きたかった、毎日、死にたい、生きたいを繰り返し、思ってました。耳には、泣き叫ぶ子供の声や、私を睨む子供の目が今も聞こえます。・・・そんなある日、すまない先生・・・アクアに会いました。」
ブラックはただ黙って聞いていた。
「・・・あの人は私なんかの心配をしてくれて、私を助けてくれました。・・・初めて、私は人が好きになりました。こんな私を救ってくれる。まるで、ヒーローみたいな人がいるなんて。とも思いました」
そうアートルムは懐かしむように答えた。ブラックも、すまない先生に救われた。あのヒーローのような、快晴のような優しい人に救われたのだ。
「・・・そうなんですね」
「・・・だから、私は、あの人のためならなんだってやれます。」
「それは、私も同じです」
2人は顔を見合せ、くすりと笑った。
「・・・やっぱり、私たちは似てますね」
「そうですね、双子みたい」
と、ブラックとアートルムはくすくす笑いあった。それは、まるで、兄弟のように、双子のようにも見えた。