眠り姫

医師の見解は『昏睡』。

いつ目覚めるかは個人差が大きく、数日で目覚める人もいれば数年かかる人もいるという。

それもあくまで様子として一番近いものということで付けられた診断で、確実ではないとの事だった。

🩷「アレだな、御伽噺の」

🤍「いばら姫？」

🧡「そんなんやったっけ」

❤️「眠り姫ね」

眠り姫という言葉がしっくりくるような、穏やかで綺麗な寝顔。

🤍「眠り姫だったらキスしたら起きるじゃん、めめやってみたら？」

🖤「はあぁ？」

ファンタジーな比喩に触発されたのかとんでもない事を言い出すラウールをしょっぴーが『バカ』と窘めた。

💙「みんないるとこでしたくないだろ」

🖤「あ、やるのはやる方向なんだ」

💙「ちょっとでも阿部ちゃんが起きるかも知れない事なら何でも試して欲しいだけ」

そんな言い方をされたらする以外にない。

みんなも妙に納得してしまい、見たかったのにぃと正直にごねるラウは引きずられ、病室は人払いされた。

🖤「阿部ちゃん」

ダメ元で名前を呼んでみる。髪を撫でてみる。手を握ってみる。

その全てに、阿部ちゃんからのレスポンスはない。まるでリアルな人形みたいだ。

前髪をさらりと指で梳いて、閉じられた長い睫毛に、それから頰に、最後に唇にそっと口付けた。

なんだか壊れてしまいそうで、触れるか触れないかくらいの中学生みたいなキス。

さすがに何も変化がなく、もう一度今度はさっきより深く唇を合わせてみたけど、やっぱり反応はなかった。

病室を出た俺の顔を見てみんな察したんだろう、『全員1回試す？』なんて話にもなったけど色々気まずいということで却下になった。