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上野文
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#悲しい
シジミン
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kirisu
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畝澄ヒナ
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「えー? それだけ? 可愛いじゃないですか」
「うん、可愛いけど……」
尊さんの反応が悪い。
私はどすんっと彼の隣に座り、尊さんに膝枕してもらう体勢になると、ジタバタし始める。
「いやいやいやいや!」
「どこの駄々っ子だよ……」
「あはは!」
私が笑ったのと同時に噴き出した尊さんは、ヒョイとチャームを取り上げる。
「……まぁ、普通に可愛いな」
「でしょー」
私は自慢げにニマニマする。
「最近仲よくなった、秘書課の小鳥遊さん?」
「そう。最初、ちょっと警戒していたんですが、でも普通にいい子だな~と思って」
「ふーん……」
尊さんは目の前にチャームをぶら下げ、それを見つめたあと、ムニムニとチャームを押しまくる。
「あんまり乱暴にしないでくださいよう。……それにその、気のない感じは何ですか? 尊さんも彼女を疑ってる系?」
「……いや、せっかく仲良くなってるのに腐すつもりはないんだが、……ちょっと違和感があってな」
恵と同じように違和感と言われ、胸の奥にモヤッと黒いものが広がる。
「……どういう?」
起き上がって尋ねると、彼はチャームをテーブルの上に置き、胡座をかいて言う。
「こう言ったら傷つけるかもしれないが、朱里の歓迎会は行われなかった訳だろ?」
「……はい」
気にしていないつもりでいたけど、事実を突きつけられると少ししょんぼりしてしまう。
「小鳥遊さんが最初から朱里に友好的だったとしよう。歓迎会については、〝上〟の怖い先輩に強く言えず、行えなかったのは仕方がない。……でも、仲良くなりたいと思っていたなら、その頃から個人的に声を掛けてもおかしくないんじゃないか? ……時期がなんだかずれてるんだよな」
「……まぁ、それは確かに。……でも、今回の歓迎会があったから、声を掛ける気持ちになったとかはありませんか? タイミングを失ったら、なかなかできない事ってありますし、秘書課の仕事も凄く忙しいと思いますし」
そう言うと、尊さんは私をジッと見つめて言う。
「……やけに小鳥遊さんに肩入れするな?」
「……わ、悪いですか? ……私だって友達増やしたいんですよ」
「気持ちは分かる。……ただ、もう少し慎重に接したほうがいい」
尊さんにまで言われ、可愛いチャームをもらってルンルンしていた気持ちが萎んでいく。
ソファの上で膝を抱えると、尊さんは私の肩を抱いてポンポンと叩いてくる。
「悪い。嫌な気持ちにさせたい訳じゃないんだ」
「……うん。尊さんが私に忠告する時は、心配してくれての事だって分かってます」
彼はもう一度ポンポンと私の肩を叩いたあと、ソファの背もたれに手を置く。
そのあとしばらく、沈黙が落ちた。
気まずく思っていると、尊さんが口を開いた。
「大前提として、友達を増やしたい気持ちを否定しない。俺も、いい人だったらどんどん交流してほしいと思ってる。……ただ、色々慎重になってほしいとも思ってる」
「……はい」
「自分で言うのもアホみたいだが、俺は副社長で他の奴らが言うには〝イケメンハイスペック〟らしい。こんな訳アリの俺でも、狙ってる女性は大勢いる。……それに朱里だって〝高嶺の花〟に見えて『お近づきになりたい』『美人と一緒にいたら得をしそう』と思う奴がいるのは事実だ。……あぁ、朱里が高値の花じゃないって訳じゃなくて……。もっとこう、お前のいい所は見た目じゃなくて、愉快な女な所なんだよ」
「うい」
「それでな。……俺らみたいな年齢になったら、無理して友達を増やそうとしなくてもいいと思ってる。あくまで俺は、だけど。凄く消極的な考え方かもしれんが、恋愛でもそうだけど、一から人と関係を構築していくってエネルギーが要るだろ。そして期待していた人と違ったら落胆して、また〝次〟を探す。そうしてまで新しい友達がほしいか? って思ってしまうんだ。恋愛の場合はその先に結婚があるから、また別だ。でも、今仲良くしてる人たちじゃ満足できないか? 中村さんも、エミリも三ノ宮さんも、朱里を凄く大切に想ってくれている。……俺が嫉妬するぐらいな。あれだけ想ってくれる人は、なかなかいねぇぞ」
「……そうですね」
尊さんの言いたい事は分かる。
分かるだけに、まだ小鳥遊さんのすべてを知っていないのに、全否定された気持ちになって、悲しくなってしまう。
――彼女が何も悪くなかったら?
そう言い返したい気持ちを、グッと抑えた。
コメント
1件
ああ、読み終えた……。小鳥遊さんへの違和感、めっちゃ分かるな。尊さんの言い分も分かりすぎるし、でも朱里ちゃんの「彼女が何も悪くなかったら?」って気持ちも刺さる。その板挟みになってグッと言い返しを抑えるシーン、リアルで苦しかった。これからどうなるんだろ、めっちゃ気になるわ。続き楽しみにしてる🔥