えっ!?どうして?だってここは鏡の中なんでしょう? 鏡の国の住人であるはずの赤の女王でさえ自分のことを「鏡」と言ったことに驚いたアリスだったが、「鏡の国なんて存在しないのよ」という赤の女王の言葉にますます混乱してしまい、また鏡の国の住人たちは皆白兎の言うことを聞いてばかりいるため、アリスは次第に退屈してくる。そんな時、家の中にあった時計が大きな音を立てて鳴り始め、アリスは驚いて家を飛び出し、時計の音が大きくなるにつれてウサギの穴に落ち込むような感覚に襲われる。やがてたどり着いた先はトランプの兵士に囲まれたハートの王の部屋だった。しかしそこには誰もおらず、部屋の奥の壁に大きな穴が開いているだけだった。その穴を通って行くとそこは雪に覆われた世界で、雪だるまのジャックが一人ぼっちで遊んでいた。しばらくすると今度は青い服を着た兵隊が現れてジャックを連れて行くと言い出す。そこで初めて自分がキングとクイーンの名を知らないことに気づいたアリスは、兵士に尋ねてみると彼らは青の兵士たちだということがわかる。そして自分は今からダイヤの城に行くのだということも教えられるが、なぜかそのことについてあまり心配していないことに気づく。さらに城の前まで来たところで兵士が「私はここまでです」と言うのに対し素直に従う自分にも驚く。城の門番たちに話しかけると彼らもまた普通の人間たちと同じように返事をしてきて、中には自分に向かって笑いかけてくる者までいたからだ。こうして不思議の国にやってきたばかりの頃のアリスはもうどこへ行ったのかと思うほどすっかり馴染んでしまい、ダイヤの城ではお茶会が開かれており、そこではハートの王も王妃も白の女王も皆普通だった。アリスはトランプ兵たちの遊びに誘われたが、トランプのルールがよくわからなかったため断ったところ、「それなら一緒にチェスでもしようじゃないか」と言われる。そこでチェスをするのだが、その時ばかりは誰も冗談を口にせず、またアリスもその雰囲気に押し流されて真剣勝負を行うことになる。ところがチェスの駒たちはどれもこれもアリスよりもずっと強く、とうとう最後の一手になってしまってもまだ決着がつかず、ついにアリスは自分の負けを認めた上でもう一局だけお願いしたいと言ってもう一度対局するが結局勝つことはできなかった。しかし、ここで不思議なことが起こり、今まで一度も負けたことがなかったという女王のクイーンがなぜか負けを認めてしまい、代わりに王であるキングが勝ったことにすると言い出したのだ。これでようやく決着がついたと思ったら今度は突然辺り一面が真っ暗になり、何も見えなくなってしまった。さらに次の瞬間、それまで聞こえていた楽しげな音楽も人々のざわめきも全てが消え失せてしまう。暗闇の中を歩き続けるうち、アリスは次第に自分が元いた場所に帰ろうとしていることに気づいて焦るが、どうすることもできない。やがて目の前に大きな扉が現れるが、それは自分の家のドアなどではなかった。その向こうにあるのは現実なのか夢なのか、あるいは別のどこかなのか、アリスには知る由もなかった。
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