──────僕は、誰かに望まれたかった。
僕は、真っ暗な施設の中で誰かの顔を見ていた。
その人は、とても悲しそうな顔をしていたんだ。
僕はその悲しげな顔が、『嘘』のように思ってしまったんだ。
どうして、そういう顔をするの?
どうして、君からは『優しいオーラ』がするの?
僕は手に持っているナイフを持って、その人の方へ突撃したんだ。
だけどその人は──────。
僕を、『優しく受け止めた』んだ。
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僕は、ある施設の中で目が覚めた。
此処は真っ暗だった。
此処はどこだろうか。
僕は、起き上がって辺りを見渡してみる。
すると声が聞こえてきた。足音も聞こえる。
「目が覚めたい?フォルトゥナ。」
潤しい金髪に赤い目の女の人だった。
女の人は、まだ幼い僕の前に来ると、じーっと見つめる。
彼女は小さく笑うと、僕の方を見て言う。
「大丈夫だね。フォルトゥナ。」
ふぉるとぅな……それは一体、なんなのだろうか?
「……?」
僕は小さな首を傾げる。
目覚めるまで、僕は『何をしていたか記憶にない』のだ。
名前も家族も、何にも覚えていなかった。
女の人は、また小さく笑う。
「やっぱり覚えてないみたいだね。良かった良かった。」
なんの事か、僕には分からなかったが、女の人は話を続ける。
「これから君の名前は『フォルトゥナ』だよ。」
そして、また知らない事を言った。
「君は『仮人間(かりにんげん)』なんだ。そしてその『運命の女神』なんだ。」
フォルトゥナは、運命の女神の名前だそうだ。
仮人間とは、なんだろうか。
話を聞くと、仮人間は、ただの人間に人外の血を複数含んだ人間の事だそうだ。
混血とは違っていて、人間と違う所と言えば、能力が使える事らしい。
僕は、そんな種族なのか。
その後、女の人から説明を聞いた。
この施設は『Lize(ライズ)』と言うらしい。
この組織は『人類を滅ぼす為に造られた組織』らしい。
そして、この女の人は『ロスト』というらしい。
僕はロストに案内されて、小さな個室まで来た。
これから此処が僕の部屋になるらしい。
数時間くらい此処の空気に慣れてほしいそうだ。
僕は部屋の中で一人になると、壁の方によって座る。
何故か知らないが、この感覚に『身に覚えがある』ような気がする。
記憶にはないが、何故かそんな気がした。
知らぬ間に僕は、その場に座りながら眠りについてしまった。
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目が覚めると、扉をノックするような音がした。
僕は小さく返事すると、中に研究員が入ってきた。
Lizeでは、幹部では研究員が育成して、本部で働ける仮人間にするらしい。
でも、本部にいける人は少なくて、大体の人達は、研究員に処分されているか、その子達自身が自殺をしているらしい。
僕はどうなのだろうか。
僕は研究員の言葉を待つ。
「フォルトゥナ。これから能力テストをする。」
そう言われて、僕達は移動した。
着いた所は、目立たないような小さな個室だった。
そこで、最初はお人形さんに向かって、自身の能力を浴びさせる所からだった。
僕は『風を操る』程度の力を持っていた。
元々動くのが苦手だった為、少し緩い風になってしまったが、お人形さんを倒した。
研究員は、それをメモしながら僕を見ていた。
そして、こう言った。
「フォルトゥナ。君はまだ出せるだろう?君の力はこの程度では無いはずだ。」
そう言われても、と思った。
研究員は続けて僕にこう言った。
「だが君は『下級の下級クラスの仮人間』だ。弱いからこそ、これから色々特訓していくからな。」
仮人間には、階級が分かれていて、その中にも、クラスというものが存在していた。
三つの階級に、それぞれ三つのクラスがある。
合わせて九つの階級がある。
僕はその中で『一番弱い仮人間』だった。
研究員は、説明として、最後にこう言った。
「君には君にしかない『特殊な力』を持っているんだ。」
特殊な力とはなんだろうか?
僕はそう思っていたが、多分これから知っていくのだろう。
「……さぁ、話は以上だ。特訓を続けるぞ、フォルトゥナ。」
「……わかりました。」
この後も特訓を続けていた僕であった。
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その日の夜。
僕は、部屋に戻って、ベッドの上で横になった。
僕は今日の振り返りを頭の中でまとめた。
此処は、人類を滅ぼす為に造られた組織であること。僕は仮人間のフォルトゥナとして此処に存在する事。僕は風を操れる事。僕は何かの特別な力を持っている事。
最初から知らない事ばかりで頭が回らなかった。
僕は疲れを感じたのだろうか、そのまま静かに眠ってしまった。
だが、これから『苦しい想い』をするなんて、この時の僕は何も知らなかった。
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