「あぁ、もうっ! いい加減泣き止まないと置いていきますわよ!!」
「アック様ぁぁぁ~あうぅぅ~」
「お元気で~などと気丈に振る舞っていたかと思えば、どれだけ小娘すぎるんだか……」
「だってお傍にいないんですよぉぉぉ~……スキュラさんだって、お傍にいて欲しいはずなのにぃぃ」
アックと別れ、別行動を取っているルティ、スキュラの二人。彼女たちは騎士国に顔が知られ、追っ手の心配もあった。だが、スキュラの機転を利かせたことで難を逃れていた。
「あたしはあの人から全て任されているって分かっているだけで納得していますわ。あなたのように泣くなど、あり得ないことですわ! 泣き止まないと進むに進めないっていうのに」
「はぁぁうぅぅ……」
アックに伝えたとおり、二人が向かう場所はルタットという小さな町だ。森に進んだアックよりもスキュラたちがかなり早く着くはずだったが――。
「全く……、魔石の力で仲間になったからといってそこまで好きになるものかしらね?」
「す、好きっっ!? だ、誰がアック様のことをですか~!?」
「だから、小娘……ルティシア、あなたのことですけれど?」
「あ、わたしのことはルティでいいですよ、スキュラさん」
どうにか上手くやって欲しい。
アックの思いは果たして――?
「呼び捨てで構いませんわ。そうじゃなく、ルティがお好きなのでしょう? あの人のことを」
「は、はい!? い、いやぁ~、わたしなんてまだまだでしてぇ~」
アグエスタの門から歩き始めて数時間ほど。その間、ルティが泣き止むまでに相当な時間を要してしまった。ルティが泣き止むと、機を窺うかのように後方からはしつこい追手が迫る。
「……まぁいいですわ。それにしても人間は面倒な生き物ですわね。ルティ、あなたのお好きな拳を存分にお使いなさい!」
「い、いいんですか~?」
「彼がいなくても、あたしに聞かなくても本能で動けばいいのではなくて?」
「分かりましたっっ!! 行きますよぉぉ!」
追手は馬に乗った数人の騎士。抜剣状態でルティに襲い掛かろうとしている。
だが、
「させませんよぉ~!!」
メイド服エプロンなルティが声を張り上げ、騎士たちの頭上から勢いよく拳を振り下ろす。
「――な、バカな……!? 剣が折れた!?」
「た、盾が!? たかがドワーフごとき女に何故だ!!」
複数の騎士の剣はルティの拳で見事に真っ二つに折れていた。ルティの攻撃時には、スキュラからの蝕《むしば》み魔法が発動。それにより、馬上から騎士たちは次々と振り落とされていく。
「駄目ですよ? いい加減、追いかけて来ても駄目なものは駄目なんです!! ですから、お馬さんを逃がしたくなければパッパッと帰っちゃってください~!」
ルティの説教を素直に聞き入れた騎士たちは、方向を見失いかけた馬に乗ってその場を離れた。
「……あんな程度で良かったのかしらね?」
「アック様ならもっと優しくされたかなあと思ったんですけど、わたしは厳しくしちゃいました!」
「十分手ぬるいと思いますわ……まぁ、いいですけれど」
何だかんだで協力して騎士を撃退する二人だった。
「そんなわけなので、スキュラさん! アック様が待つ町へ進みましょう~!!」
「フフ、あれだけ泣いていた小娘がどこに行ってしまったのかしらね」
「ではでは、行きますよ~!」
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