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その夜、私は自分がプレイしていたゲーム原作のアニメを見ていた。
アニメ版はオリジナルストーリーで、剣と魔法の世界で少年たちが冒険する典型的な作品になったらしい。
騎士の家系に生まれるが、親が裏切りにあって没落してしまい、神殿に引き取られたウォーリアのフランツ。
魔術師の家系に生まれるが、両親から虐待を受けて、神殿に引き取られたエルフでメイジのレイ。
孤児だったが、冒険者の義理の親に育てられて、自らも冒険者になることを決意した狼族でシーフのリカード。
漂泊の民で、回復役としてパーティーに加わった、猫又族でアコライトのダイ。
冴えないおじさんには眩しい少年たちの冒険活劇。
二次元とはいえ、そんな少年たちを愛でるのがショタコンな私の日々の疲れを癒やす清涼剤になっていた。
四人は田舎村近くの洞窟に巣くっているというゴブリンの討伐に向かうが、洞窟に向かう途中の荒野でゴブリン以上の強力な魔物に遭遇してしまう。
「シャーッ!」
奇声とともに突然岩陰から襲いかかってきたその魔物は、前を歩いていたリカードに襲いかかる。
「うわっ!」
リカードは驚きの声とともに回避を試みるが、奇襲に反応が遅れ、まともにその攻撃を受けてしまう。無残に切り裂かれたその胸からは鮮血が溢れ出し、そのまま仰向けに倒れてしまった。
「な、何!?」
慌てて武器を取る三人だったが、続けざまにフランツへと魔物が迫る。強力な爪がフランツへ迫るものの、なんとかシールドを使って致命傷は免れる。だが、ダイはフランツと魔物が乱戦に入った隙にその場を逃げ出す。
「おい、どこに行くのさ!」
気づいたレイが大声を上げるが「この状況で戦うなんてバカのすることだぜ!」と捨て台詞を吐いてダイは逃げていった。
そんな中でもフランツと魔物の戦いは続いており、レイは気持ちを切り替えて魔物に風の魔法を叩きつける。だが次の瞬間、魔物は自分を切り裂いたレイにターゲットを切り替えて鋭い爪を振るう。メイジであるレイにそれを避ける技術はなく、リカードと同じように一撃で倒れてしまった。
後に残ったのは傷だらけになりながら何とか立っているフランツと傷は受けているものの、まだ余裕のある魔物。もはや、勝敗は目に見えて明らかであった。
「うーん。ゲームなら負けイベントって感じだけど、ここからどういう展開に?」
私は思わず独り言を呟いていた。ありきたりなパターンなら、強力な助っ人が現れるといったところか。初回だからかオープニング無しで始まったので、まだ登場していない主要キャラが居るのかも知れない。
「僕は……こんなところで死ぬ訳にはいかない……」
モニターの中ではフランツは苦痛に顔を歪めながらも、まだ諦めずに武器を構えている。いわゆる金髪碧眼の美少年で、没落しているとはいえ騎士の家系である。そんな美少年の苦しむ表情はそれはそれで良いものではあるものの、このままでは全滅しそうだ。
不意打ちでリカードがやられたのは痛かったが、オルソンが逃げ出したのがもっと痛かった。バリアを張ったり回復ができるアコライトがいれば勝てていた可能性もあっただろうに。
そんな事を考えていると唐突に画面に文字が現れた。
『誰も彼らを助ける者はいないのか』
「こんなかわいい子たち、私なら絶対助けるけどね」
思わず画面の文字に対して返事をしてしまう。少年たちがメインの作品だという情報を入手してチェックしたのだ。このまま彼らが全滅して違うパーティーに変わってしまうのは残念だ。
しかし、私が独り言を画面に対して呟いた時、何故か急激な睡魔が襲ってきてしまい、続きを見たい意思と反して意識は深いところへ落ちていくのであった。