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「怖かったんですわたし……」とわたしは課長の目線を受け止めて答える。その目に――おだやかなひかりが宿るのを目の当たりにしながら。「本当は。実は、全部買って欲しかったんですけど、……そんなあさましい自分を知られるのも。買って頂く、その感覚が当たり前になることも……。
大切なものがいつしか大切でなくなり、感覚が麻痺するのが怖かった。
本当の自分を知られて嫌われるのが怖かった……。
だから、あなたにきつい言い方をした。八つ当たりでした。ごめんなさい……」
「おれのほうこそ悪かった……。ごめんな。いっぱい傷つけて……泣かせてしまって」
課長のほうこそなんだか泣きそうだ。眼鏡はベッドサイドに置かれているのか、裸眼の課長はいつもよりも無垢に見える。
「莉子。……おれの話も聞いてくれる?」
ええ、とわたしが答えると、課長は短くなったわたしの髪に触れ、
「――食費は、月五万円に抑えている。外食も込みでな。
季節の変わり目にばーっと服を買うことはあれど。以外は自制している。
それから。……そうだな。平日は余裕がないけれど、休日には自炊をしている。きみの作ってくれた具だくさんの味噌汁を真似て……余った野菜は冷凍して翌週に回している。
水光熱費は、二万五千円くらいかな。……ここはもうすこし頑張る余地があると思うけれど。
株はまあ。毎日チェックはするけど……あくまで余剰な金を運用する範囲に留めている。念のため言うけれど、破産とかないように、そこはコントロールしている。
待たせてごめんな……莉子。でもおれ、ちゃんと、自分が普通にやっていけているっていう、エビデンスを得てからきみに告白したかった。それから、きみに恋慕する相手がいるのは知っているから、考えさせる余地を……与えたかった」
「課長以上に好きになれる相手なんかいませんよ。それより、課長、……具合はどうなんですか?」わたしのほうこそ心配になり、彼に手を伸ばした。「会社休むくらい酷いのなら、もう……休みましょう……わたし、どこにも行きませんから……」
課長の話を聞くことも大切だけれど、いまは課長の体調が最優先だ。
「あー、なんか朝はまだしんどくってな。……でも、いまは、きみが来たから元気になった。
……莉子。ごめんな。……おれ、本当に酷いことを言った……。
弱っているから言っているんじゃなくてな。この三ヶ月……おれなりに頑張ってきたつもりだ。
やっぱりきみが好きだ……。莉子。愛している……。
別れるなんて自分から言いだしたことを、おれは後悔している。……なんて馬鹿だったんだって。おれは、自分が嘆かわしいよ……」
抱きついてわたしの髪に顔を埋める課長に、「わたしも、……ごめんなさい」と告げる。
「変に意地になっちゃって。ごめんなさい……。わたし、ずっとずっと課長が好きです。いくら広河さんにアプローチされても、全然気持ちが動かなくって……。
それに。前みたいに会社では感情を表に出さなくなった課長のことが心配で。心配で、たまりませんでした……。
髪を切って。ファッションも変えて……課長のことを忘れようとしたけれど、……無理でした。
課長が、世界で一番愛おしい……。この気持ちに、嘘がつけない。
わたし、どこにも行きませんから……。課長、一緒に休みましょう……?」
「莉子。おれ……」課長はわたしの髪の匂いを嗅いでいるようで、「ああ……幸せでたまらない。きみのことを何度夢見ただろう……。おれは、幸せだ。
莉子。おれたち……やり直せるかな」
「勿論です」とわたしは課長の髪を撫でた。「好きです。大好きです。だから課長……。わたしを、選んで?」
「――キスしたい。でも、……ハグで我慢する」
「肺炎って移るんでしたっけ」
「移る肺炎もあるらしいから……。ああでも、すごい……莉子。きみの香りを嗅いだだけで欲情してしまう……。やらしい男でごめんね。おれ、きみと別れてから、一度も、……自分を慰めていないんだ」
「えっじゃあ、してあげましょうか」
見れば、課長が目を見開いている。……そんなに驚く発言かな、これ。
「溜め込んでおくのはよくないですよ」とわたしは真顔を作って言った。「課長。動けないんでしたら、わたしがご奉仕して差し上げます。手がいいですか? それとも口? はたまた……」
「……は、はたまた」
わたしは膝立ちになると、自分の乳房を掴み、「こちらを使って往復して差し上げるとか……」
「うわあ!」
課長が、真っ赤になった。手で顔を覆い、悶えている。そういえば、噂で聞くこのプレイをしてあげたことがなかった。快気祝いに出血大サービスしてあげよう。わたしは服を脱ぎ捨て、バスタオルを取りに行く。部屋を出て行きながら、
「課長のして欲しいプレイ。全部して差し上げます。戻るまでの間、自分がなにをして欲しいのか、じっくり、考えておいてくださいね」
* * *
エジプト超長綿の高級シーツを汚すわけには行かず、念のためバスタオルを何枚も敷き詰めた。それから、掛布団は下におろした。……これで、やりたい放題出来る。なんでもアリだ。
わたしは、課長の下を脱がせると、課長のうえに座り、屹立するそれを舐めあげた。ぴんと立っていて……この匂い。子宮がきゅんとする。わたしを、狂いそうな波に、何度も追いやったこの男の象徴が。わたしを魅了してやまない……。
根元を持って、舌でれろれろと……刺激してやる。青臭いこの味が、たまらない……。早く、これでわたしのなかをかき回してよ。滅茶苦茶に。課長の激しいセックスが……恋しい。わたしの本能をめちゃくちゃに暴き出す。あのセックスが……恋しい。
「……莉子」より見えるように、課長の頭に下には枕を敷いている。「莉子。……大好きだ。ありがとう……」
どういたしまして。
と、わたしは、あーむ、とそれを頬張ってみる。口に入りきらない大きさだ。思い切ってわたしは、めいっぱい吸い上げてそれから、自分の口を、膣のように往復してみる。
「あ……やばい。それ。莉子……莉子ぉ……っ」
思えば、課長にこれをするのは初めてか。わたしにあらゆる快楽を提供した――性の味を教え込んでくれた課長に、もっと、返してあげたい。貰った愛情を。
課長は相当溜め込んでいたらしい。持続力自慢のはずの課長が、間もなく到達した。躊躇なくわたしはそれを飲み干してにっこり笑い、
「課長のミルク、……美味しい」
「はあ……あ、あ、ああ……っ……莉子ぉ……っ」
余裕をなくした課長がなんだかいじらしい。ミッションコンプリート。いや、勿論わたしのミッションがこれで終わるはずもなく。くたっとしたそれを撫でてやれば、たちまち、ぴん! と勢いを取り戻す。
そういえば課長は、何度も立て続けにわたしを導いてくれた……そのことを思い返す。
わたしは上体を倒すと、課長のペニスを乳房で挟み込む。スライドしようとするが、滑りが悪い。そうか。こういうときに、課長のあれがあればなあ。課長の先走り汁……それから自分のぬれぬれのあそこに触れ、おっぱいに塗りたくる。勿論このときに声をかけることも忘れない。
「ねえ課長……。課長のをはむはむしただけでわたし、……こんなになっちゃった」
きらきらとひかる指先を示せば、課長が躊躇なくわたしの指を飲み込んだ。「莉子の味……美味しい」
満足頂いて満足です。
「課長……ローションプレイか、このままか、どちらでして欲しいです……」
「ああ……おれ、もう、無理……。莉子のこの構図。莉子がおっきなおっぱいでおれのを挟み込んでいるってだけでもう……気絶しちまいそうだ……」
「わたしは酷い人間ですから」と、課長の言っていたことを再現する。「課長のこと、もう、出ない、っていうくらい……追い込んで差し上げますね」
そうして課長の熱い固いペニスを、自分の乳房で挟み込む。
最初はぎこちない動きだったのが、滑らかになっていく。都度、課長の精液を塗りたくり、課長の快楽を導き出す。
課長がどんどん反応する。余裕をなくし、きれぎれの声をあげる。そのことがわたしには嬉しかった。そうか。これが嬉しいから、課長はいつも頑張ってくれる……課長の気持ちが分かった。愛する者のために示す献身の正体が。
課長が、性欲を吐き出した。はだかのわたしはすべて受け止めた。荒い呼吸をする課長の前で、顔中に精液をしたたらせ、
「んもう。課長ったら激しいんだから……」
「ああ……莉子。莉子ぉ……」
「課長のおちんぽを舐めて、パイズリしただけで、わたし……濡れ濡れになっちゃった。ねえ――触って」
呼吸を荒くする課長は、膝立ちになったわたしのそこに濡れた。
「ああ……莉子ちゃんのおまんこ。……最高だ。……舐めたい。ねえ、舐めたいよ……莉子ちゃん」
「……無理はしないでくださいね」とわたしが課長を気遣うと、「こんなにされて我慢なんか出来ないよ」と課長は顔を歪める。
そして上半身だけ着ていたパジャマを脱ぎだす。精悍な肉体が現れ、どぎまぎしてしまう。
まだ呼吸を荒くした課長は、そっとわたしの肩に手をかけると、押し倒す。背中に手を添える配慮つきで。それから――互いの体温を確かめ合う。――取り戻せて、よかった……。このぬくもりを。大切なこのひとを……。
課長は――ちょっと余裕がないのか、わたしの感じやすいところから貪りだした。いっぱい、声が出ちゃう……。そんなわたしを課長は知りぬいているから、わたしは、安心して任せた。
課長が、わたしのなかに入ってくる。涙ながらのセックス。幸せな涙を流しながらのセックス。課長といると、初めての体験だらけだ。幸せな思い出が次々こころのなかに蓄積し、また新たな喜びが胸に舞い降りる。
生きていることへの尊さを感じながら、わたしは課長に抱かれた。自分を解放させた。課長は、行為が終わってもなかなかわたしから離れようとはしなかった。課長を抱き締めながら……ひとつになることの喜びを感じながら、わたしは安心して、訪れる安らぎに身を委ねた。
*