「ふ〜……」
ふっかが湯船の縁に腕をかけて、のぼせたように息を吐く。
肩まで湯に浸かったまま、目を細める姿は、まるで湯けむりに溶けてしまいそうだった。
「ふっか、ほんとお風呂好きだよな」
隣で腕を組んで湯に浸かり、くすっと笑う。
その声に反応して、ふっかがゆっくりとこちらを見た。
「照も、俺と一緒だといつも長風呂じゃん」
「まあな。……落ち着くし」
その言葉にふっかが笑う。
湯気の中でふっかと2人きり。
リラックスした空気が、ふわふわと漂う。
――そんな雰囲気に包まれていると、つい、悪戯したくなるのが俺の性分で。
「なぁ、」
「ん?」
ふっかの水の中にある太腿にそっと触れた。
ぬるく柔らかな湯に包まれた肌は、やわらかく、気持ちよかった。
指先でその感触を味わうように、じっくり撫でる。
「……ちょ、どこ触ってんの」
「太腿」
「それはわかってるのよ」
ふっかが眉を寄せて、ちらっと見てくる。
その顔は怒ってるというより、呆れてる感じ。
「お風呂ではしません」
「……ダメって言われるとしたくなるんだけど?」
「マジでダメ」
ふっかが湯船から足を引こうとするのを止める。
「……じゃあ、キスは?」
「それもアウト」
「はぁ〜、」
拗ねたように言う俺に、ふっかが少し笑う。
「愛を分け与えようとしてるのに」
「ガマンするのも愛でしょ?」
「そーだけど…じゃあ風呂上がったらしよ」
小声で囁く俺の声に、ふっかがちらっと目を向け、にやりと笑った。
「……それ俺に拒否権あったりする?」
「ないに決まってんじゃん」
ふっかはわざとらしくため息をつくが、その唇にはうっすら笑みが浮かんでいた。
「……先に上がって準備してくる」
「今夜は寝かせないから」
「おい、そういうの先に言うな!」
湯気の中、笑い声が跳ねていく。
ぬるま湯の距離感を、じれったく楽しみながら。
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