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ガニメデがタイムトラベルを行って間もなく、関係者全員のデバイスに緊急通知が送られた。
その頃、博士は自宅の展望室で次世代型望遠鏡を覗いていた。
『情報エネルギーコア一時消費エネルギー大。復帰処理実行中……しばらくお待ちください』
「何かね、不具合か……こんな時間に……なっ!?」
アラート音が鳴り響き、博士は星の観測を中断する。宙に展開された情報ウィンドウを確認すると、使用されるはずのない情報エネルギーコアが稼働した痕跡が表示されていた。
しかも、その消費エネルギー量は常識を逸している。
博士は一瞬で結論に辿り着いた。
「最高権限発動。使用者の解析を実行」
――解析開始
――適用コード確認
――照合データ参照中
――コード:ガニメデ
――光遡行空間移動装置とリンク済み
………………………etc
「はあ、彼か。私も立ち会う予定だったのだがな。ハウメア君も黙認していたのか?……連絡してみるか」
博士は額を押さえ、軽く息をついた。そのとき、来訪者を知らせるホログラム通知が届く。映し出されたのはラウアの姿だった。
「大変です、博士!情報エネルギーコアが不正利用された可能性があります。早急に確認を――」
彼女は明らかに焦っている。普段は冷静な彼女だが、博士と二人きりという状況もあり、素の感情が表に出ていた。
「ああ、落ち着こう、ラウア君。それは既に確認済みだ。……それより、なぜ私の家を知っている? 個人情報は秘匿してあるはずだが」
「え、えっと……博士のことが好きすぎて、尾行して……えへ」
ラウアは舌を出して戯ける。
博士は深くため息をついた。
「その話はまた別の機会にしよう。今は有事だ。部隊を研究所ホールへ招集しろ」
ラウアは一瞬ビクリと体を震わせ、即座に表情を切り替える。
「は、はい! 了解しました、博士!」
◇
夜半、緊急招集されたのは警備および特殊部隊の面々だった。眠気を残す者もいるが、空気はどこか張り詰めている。
「んー……なんで私たちまで呼ばれたんですかね」
トリトンが小声でつぶやく。
「私も理由までは聞いていない。ただ緊急招集とだけだ」
ハウメアは苦い表情で答えた。
エウロパは黙したまま立っている。
「そういや、あのゲスがいないな」
イオが吐き捨てるように言った。ガニメデの不在に気づいたのだ。
そこへ博士が姿を現す。
「諸君。召集の理由を説明しよう。光遡行α-A部隊コード:ガニメデが、単独で中生代へ向かった。明確な規律違反だ。」
場がざわめく。
「彼は独断で行動した。目的は不明だが、研究チームを軽視した行為である。よって、彼を拘束し帰還させる。手付金の権利は剥奪済みだ。そのことも伝えよ。あわせて、以前命じたアレの回収も頼む」
「チッ、隊の恥さらしが」
イオが苛立ちを隠さない。
「想定外だな……」
ハウメアは情報ウィンドウを閉じ、静かに呟いた。
博士は続ける。
「実に不愉快極まりない。まったく、N数を増やせないのは残念だが仕方あるまい。光遡行α-A部隊は、明日から順次、一人ずつタイムトラベルを行う。時間間隔はできる限り空けるな」
そして一拍置く。
「ガニメデが帰還に反抗した場合――最悪、殺しても構わない。四名で任務を達成せよ。よいな?」
「ハッ!」
四人は一斉に敬礼した。
◇
翌日。
トーナメント途中の敗退順でガニメデと同立だったエウロパが、光遡行空間移動装置とリンクし、タイムスリップを開始する。
だが、わずかな時空間の歪みによって、彼女は崩れた時系列へと飲み込まれてしまう。
――これは、また別の物語。