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あわあわしているうちに、ソファに座らされる。優しいキスを落としながら、永井くんが私のパーカーのファスナーをゆっくり下ろしていく。
求めてもらえることが喜びにかわっている。快感だけじゃない何かが心の中で芽生えはじめている。
「全部丸見えだね」
耳元でいやらしくそう言われて、背筋がぞくぞくし、真昼間からの情事に深く溺れた。
4.復讐はじわじわと
「藤原さん、明日の会議13時から第二会議室でやります」
|風見さん《元カレ》にそう声をかけられる。わかりましたと返事をすると、資料を渡された。
例の企画は順調に進んでいて、だいたいのデザインや機能が定まってきた。
あすは燎子も参加してのひと月ぶりの会議。足しげく商品企画部に通って、|風見さん《元カレ》とあれこれと話している姿は当てつけなのか真剣なのかわからない。
一度は必ず私の方に視線を送ってきて、自信満々の顔をされるので、やっぱり当てつけなんだろうなと思う。
それでもそんなことを気にしている暇もない。商品開発部と営業部の連携が発動し、永井くんと話をすることが増えたからだ。
営業先に、商品開発部の人も行って説明するという新たな試み。私は永井くんに同行する役になぜか収まって、二件ほど一緒に営業先に行ってきた。
結果は上々で、女性目線の提案が思ったよりもウケている。大きな受注も入ってきそうで、社内でもこの取り組みは注目の的だ。
「藤原さん。急なんですけど明日の13時に営業の同行、行けますか?」
今度は永井くんが声をかけてきて、パッと振り返った。「ごめんね、明日のその時間は会議があって……」
「新しいキッチンのですか?」
そうそうと返事をすると、自分のところには話が来ていないと不思議がる永井くん。確かに永井くんは前回の会議の時には同席していた。
「営業部には話してないのかな」
「うーん……まあ、途中経過の会議には参加しないことも多いです」
「モニターさん含めた会議の時は、営業部にも声かけると思うから、その時はよろしくね」
はい、と永井くんは告げてデスクに戻っていく。向こうからきた燎子が歩いてくるのが見えて、永井くんとすれ違う。燎子に声をかけられているが、2人が何を話しているかは聞こえない。
あのキッチンのことかな。長めに話しているのが気になったたけれど、明日の会議の資料に目を通し始めた。
「藤原さん」
きれいな声で話しかけられて、パッと顔を上げる。すぐ隣に立っていた燎子の姿に思わずビクッとした。
「は、は、はい?」
「明日の会議、よろしくお願いします」
「あ、あぁ。はい」
「私もいろいろ考えてみたんですけど、やっぱり風見さんにお聞きしないとわからないこともあって」
「はぁ……」
何が言いたい? そう思いつつも、顔には出さず、精一杯の普通を装う。奥歯を噛み締めているのがわからないように、じわっと身体がこわばる。
「風見さんってほんと頼りになりますよね。私にはもったいないくらいです」
「……」
「じゃあ、また明日」
ニコニコ、自信満々。あれだけ堂々とできれば大したものだ。百戦錬磨の泥棒ねこの名にふさわしい。 燎子は会議の話を|伊吹《元カレ》とすませると、フロアを出ていった。
ここまでされると少し笑えてくる。私が悲しそうな顔をするのが、そんなに面白いのだろうか。ここまでの恨みを買った自分の行いを振り返るけど、思い当たることが見当たらない。
やれやれと息をついて仕事を続けた。
***
次の日。会議は無事に終わった。2人のいちゃつきぶりにイライラしっぱなしだったけど、計画としてはだいぶ進んだように思う。
次は1ヶ月後。いよいよモニター参加の会議だ。きっと辛辣な意見も出るだろう。それを受けてさらによい製品にしていくのが課題だ。
最近は2人が一緒にいる姿を見ても、ひどく悲しくなることはない。どうでもいいやという開き直りの気持ちすらある。それでも復讐の小さな灯火はまだ消えてはいなかった。
今日は金曜日。週末サブスクはもちろん続いていて、毎週とろけている。
木曜日くらいになると身体が疼くので、自分がとんでもなくえっちな身体になってしまったような気がする。