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範囲は広くなくて良い。死後の時間は全く経っていない。これなら、全く問題は無い。


「『昇らぬ内に降りてこい。終わるにはまだ早いぞ』」


全員、まだ間に合う。死体を目印にして、手遅れにならない間に魂を呼び寄せる。何だ? 結界が邪魔して魂が彷徨っているな。まぁ、好都合だ。


「『神の御業か、悪魔の所業か。些末なことだ』」


次に、肉体の修復だ。生命活動をいつでも再開できるように体を再生させる。血も増やし、尽きた生命力も回復させる。


「『万象の摂理、それを超えてこそ魔術なり』」


修復は終わった。魂と肉体の識別もそう難しくないな。魂まで消耗しているものはいない。


「『起きろ。まだ生きろ』」


全ての魂が己の肉体に入り込み、全ての準備は終わった。


「『死灰復然《リベリテレ・アダニマム》』」


ドクリ、心臓が一斉に鳴った。


「……ぁ、あれ、生きてる」


起き出したな。これで問題無いな……さて、次だ。死の気配はまだ残っている。







あれから二回の蘇生を実行し、別で動いていたらしい数人のフード達を気絶させて拘束した後、俺は明らかに力を使っている様子の濃い悪魔の気配がする場所に向かった。


「戦闘中だな」


音がする。気配がする。察してはいたが、誰かが悪魔と戦っている。急がなければ、死ぬかもしれない。悪魔に殺されたなら、その魂が無事のまま死ねるかも分からない。


「ここまで気配を辿れれば……行けるな」


俺は悪魔が居ると思わしきそこに転移した。









ダメだ。何も出来ない。臓器が締め付けられるような感覚と、皮膚が裂けて開く傷。異能は使えるが、魔力の流れが阻害されている。


「ぐ、ぅ……」


横目にカーラさんを見るが、苦悶の表情を浮かべている。石の力で常に回復はしてくれているが、次々に体に刻まれていく傷が命を奪う方が早いかもしれない。


「俺は、苦痛を……傷を、与える。つまり、だ」


ネビロスがグラシャラボラスの方を向く。


「ククク、私の出番という訳ですなぁ」


グリフォンの翼を生やした犬の悪魔が笑う。それと同時に、私の体の傷から一斉に血が噴き出した。


「……ぁ、これ、は……」


これは、ダメだ。視界が揺れる。意識が霞んでいく。


「……誰、か……」


限界だ。その場から一歩も動けない。最後の足掻きで、悪魔の目を睨みつける。その虚ろな目が私の目を見た、瞬間。


「ぎゃァ――――ッ」


「ぐべ――――ッ」


グラシャラボラスとイポス。二体の体が真っ二つに裂ける。


「……どういう、こと?」


誰の姿も見えない。しかし、確かに二柱の悪魔は一瞬で斬り殺された。


「……有り得ない。こんな未来は、見えていなかった筈だ」


呆然と呟くネビロス。その四肢と翼が同時に斬り落とされた。速いどころの騒ぎじゃない。見えていないとはいえ、明らかに木っ端の悪魔ではないネビロスが一瞬で……意味が分からない。



「――――答えろ」



達磨となって地面に転がったネビロス。その頭上辺りから声が響いた。


「アンタを召喚したのは誰だ」


男の声だ。老いてはいないが、低く気力の無い声だ。


「……姿を消して良い気になっているようだが」


ネビロスは地面から何も無い場所を睨みつける。


「俺には、見えているぞ?」


ネビロスがそう呟くと同時に、頭からその男の姿が露わになっていく。


「投射か。だが、見えているからどうするんだ?」


男の問いに答えるように、ネビロスの削がれた四肢と翼が一瞬で再生していく。


「不意を打っただけで、優位に立ったと錯覚したか……あぁ、憐れな」


起き上がったネビロスが両手を広げてそう言った瞬間、その四肢が再度斬り落とされた。


「そうか。それで、どうするんだ?」


「……有り得ない、だが……ッ!?」


再び地面に転がったネビロスはそう呟き、その目が妖しく光る。が、男には何の異常も起こらない。眉を顰めたネビロスの首筋に、男の剣が添えられた。


「こんな未来は、見えていない……いや、お前自体が……未来に、映りすらしない?」


「どうでもいい。答える気はないってことで良いんだな?」


未来に映りすらしない? どういう異能ならそんなことが出来るのか。いや、魔術かも知れない。何にしても、あの人は尋常じゃない。公安のデータベースにもあの男は居なかった筈だ。


「確かに、お前は異常だが……舐めるなよ」


ネビロスの体が一瞬にして膨れ上がる。白くぶよぶよと膨張した肉体は筋肉質な男の姿に成形され、それから直ぐに金属へと変質し、それを食い破るようにして内側から植物が生えてその体に絡み付いて行く。


「ここで、死ね」


見上げる程の巨体となったネビロスの体は全身が金属と化している。絡み付いた植物の表面には魔力の紋様が走っており、何かしらの効果があることが分かる。そして、満を持した銀色の拳が男に向かって振り下ろされた。


「あぁ」


一筋の剣閃。内側まで金属の分厚い腕は、男に到達する前に地面に落ちた。


「もういい」


また剣が閃いた。ネビロスの四肢がまた斬り落とされる。


「悪魔相手にやるのは面倒なんだが……」


ネビロスの胴体にずぶりと剣が刺し込まれた。


「――――読ませて貰おうか」


男が目を閉じると、剣を伝ってネビロスから男へと何かが流れ込んでいく。


「ぐッ、あァっ、馬鹿なッ!? や、やめろッ! それだけは、やめろッ!! 俺から奪うな……俺が、俺でなくなるッ!!」


初めて声を荒らげたネビロス。その顔にははっきりと焦燥の表情が浮かんでいた。

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