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高校一年生・女子(仮名:Mさん)
仲の良さそうなグループはあるけど、私はどこにも入れません。
話に入ろうとすると空気が止まる感じがして、
何か言っても、みんなすぐ別の話を始めてしまいます。
たぶん、私がいるとつまらないんだと思います。
でも、独りでいるのも、もうしんどいです。
蓮司
「“つまらないんだと思います”って……ずいぶん自分に厳しいね」
「でも、それ、ほんとに“君がつまらないから”なのかな?
……それ、周りの空気が薄いだけってことも、けっこうあるよ?」
遥
「……それ、言い方キツいだろ」
「この子、ちゃんと自分なりに話に入ろうとしてるって書いてあるじゃんか。……それ、すごいことだろ」
蓮司
「そうは言ってないよ。
ただ、“入れなかった”って事実に、自分の存在価値を全部乗せるの、ちょっと危ないなと思っただけ」
日下部
「……“輪”って、入ろうとした人が感じるもので、
中にいる人たちは、たいてい輪を意識してないんだと思う」
蓮司
「名言っぽい。けど、ほんとそれ。
“輪”の正体ってさ、“共通言語に守られた排他”なんだよね。
ルールがあるように見せて、実は“知らないやつは沈黙してろ”って言ってるだけの場所、多いから」
遥
「……それでもさ、
そこに入りたいって思っちゃうのは、
“誰かといたい”って思ってるから、じゃんか」
(間)
日下部
「……うん。オレ、遥の言う通りだと思う」
「“いたい”って願うことを、
自分がダメだからって潰す必要は、ないと思う」
蓮司
(ちら、と日下部を横目に)
「ふーん……なるほど。やっぱり遥くんには甘いね」
「……日下部くん、まさかとは思うけど、
“入りたい輪”って、ここじゃないよね?」
日下部
「……なっ……なに言ってんだ、急に」
(目をそらし、声が少しだけ上ずる)
遥
「は? 何、勝手なこと言ってんだよ」
(耳の後ろをかくようにして目線を泳がせる)
蓮司
「いやいや、だってわかりやすいんだもん。
日下部くん、“遥が何か言ったときだけ”やけに反応速いし」
(にやり)「で、遥くんは“気づかないふり”をしてるわけだ。これはお似合いだなぁ」
日下部
「……うるさい。話、戻して」
蓮司
「はいはい、戻すよ」
「で、相談者の子。
“入れない”って、それ、“相手が受け入れる準備をしてない”だけの場合がある。
君が悪いんじゃなくて、“その場が閉じてる”だけの話だったりする」
日下部
「無理に合わせなくていいと思う」
「でも、ひとりが限界になったら、どこかに“開いてる誰か”は、いる。
それが、すぐじゃないのがつらいけど……」
遥
「……ひとりって、マジできつい。
オレも、いつもそうだった。どこにも入れなかった」
「でも、オレを見てくれたやつが、ひとりだけいた。
……それで、ちょっとだけ変わった。ほんとに、ちょっとだけ」
蓮司
「なにそれ、青春?」
(からかうように言いながら、微かに目を細める)
日下部
「……いいじゃん。そういうの、
オレは、聞けてよかったって思うけど」
🗝三人からのことば
蓮司:
「“つまらない自分”じゃなくて、“閉じた空気”を疑ってみなよ。
輪の外から見る世界は、案外、広いよ」
日下部:
「声を出すことより、
“誰かが聴ける場所にいる”ってことが、大事なときもあるから」
遥:
「すぐじゃなくていい。
でも、君のこと、ちゃんと見てくれるやつ……いるから。
信じてほしい。……オレも、信じてる」