少し強めの風が吹いて砂埃が舞った。周りにそれを遮るものはなく、自由に飛び回る。その砂埃が通った道筋をぼんやりと眺めている僕はよっぽど暇なのだろう。
空はさっきまで荒れていたのが嘘のように青空が広がっていて、澄んでいるってこういうことを言うんだなぁ、と一人で感傷に浸った。その中を漂う薄い絹のような雲は、より一層空の青さを引き立てている。
不意に僕はこの青空を飲んでしまいたくなった。美しく、広大な深いコバルトブルーを全て僕の心の中にしまって置けたら、僕はどんなに美しくなれるのだろう、と思った。しかし、生憎僕はそんなことはできない。それに綺麗なものを自分のものにしたからって、僕は綺麗になれない。僕は純粋な色を持っていないから。僕はもう、手遅れだから。
「ようやく終わったんですね。」
突然後ろから声が聞こえて振り返ると、そこには僕の共犯者が微笑んで、約5メートル先に立っていた。
彼女は一見普通の綺麗な女性に見えるが、よく見てみると、薔薇のような赤い唇から鋭く光る牙がはみ出していて、頭には黒いツノのようなものが二本、黒髪に隠れている。そして、金色に輝く瞳は異様な不気味さを放っていた。「えぇ。貴女のおかげです。ありがとうございました。」
僕が無表情のまま言うと、彼女はそのまま嘘の笑みを浮かべたまま、「こちらこそありがとうございました。久々に面白いものを見ることができましたよ。」
そう言って、僕に近づいてきた。距離が1メートルくらいになった時、不意に彼女は止まり、僕を無言で見つめた。そして、数秒見つめた後、赤い口を開いた。
「約束は、守ってくださいね?」
妖艶な雰囲気を混ぜ、ニヤリと笑った。
「わかっていますよ。もう、僕には必要のないものですから。」
僕は半分投げやりになりながら、懐からナイフを取り出した。そして、僕はそのナイフを、振りかざした。
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