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◆エルちゃん視点
僕は今、新たな壁に直面していた。お姉さん達に紙と書く物を渡されたのである。
「何かを教えてくれているんだろうとは思うのだけど、意味がわからぬ」
「――――――。」
「お姉さんの名前?」
僕はお姉さんの膝の上に座って謎の文字と向き合っています。お姉さんの横には、お姉さんの知り合いの美人な女性が座っており、2人から何かを教えて貰っています。
「しかし。紙なんて高級品じゃないか……僕の為にそんなに使うなんて勿体無い! この沢山の紙を売ればお肉や魚が沢山買えてしまうのでは……」
僕は紙を使う事に少し躊躇していた。だって、しょうがないじゃないですか! スラム出身の貧乏人がこんなに沢山の紙を使える筈無いのです!
「―――か―――え――――――で―――」
「んぅ? かって?」
「――――――!? ――――――!!」
お姉さんの名前なのかな? お姉さんは自分と紙を交互に指を差しています。ん~そして。この文字は一体……
「―――――――――♪」
「何じゃこりわ……」
机の上には複数枚の紙がありますが、そのうちの一枚の紙にこんな文字が書かれています。1、2、3、4、5、6、7、8、9……
「呪文かな? っ!? これわ!」
「――――――?」
「ふふっ……分かってしまったぞ。この文字を組み合わせると108、即ち高級パンだ! 甘いクリームの入ったパンの袋に書いてあったから間違いない!」
僕は紙に108と汚い文字で書いて、お姉さん達に見せました。お姉さん達は首を傾げて居たけど、すぐに2人とも笑顔になり僕の頭を撫で撫でしてくれました。
「この短時間でひとつ言葉を覚えてしまった僕……もしかして天才なのでは!? お姉さん達も褒めてくれたから、恐らく高級パンで合ってる筈」
「―――――――――♪」
「よし! この調子でどんどん言葉を覚えて行くぞ!」
◆|楓《かえで》視点
「108……楓、何かの暗号かしら」
「字は汚くて少し見づらいけど、これは間違い無く108だね。何だろう……」
私と明美はエルちゃんが書いた、108と言う数字が何なのか頭を悩まさせていました。しかし、エルちゃんは何やらやり切ったぞ! と言うような顔でこちらを見ております。
「ドヤ顔のエルちゃん可愛い♡ 108が何なのか分からないけど、とりあえずよしよし♪」
最早108と言うより、エルちゃんの可愛いらしいドヤ顔で明美はもう戦闘不能です。そして明美が、エルちゃんの頭を撫で撫でしていると目を細めて、気持ち良さそうにしています。
「エルちゃん? どうしたの? 涎垂らしちゃって、え? 108?」
「――――――!」
エルちゃんは紙に書いてある108と言う数字を指さして、涎を垂らしております。気の所為でしょうか……エルちゃんの目がキラキラと輝いて見えます。
108と言う食べ物は聞いた事はありませんけど、もしかしたらエルちゃんの故郷では108と言う食べ物があるのかもしれません。
「スマホで検索して見たけど、108と言う食べ物何て無いわよ」
「やっぱりそうよね……あ、そろそろお昼ね。ご飯の準備しなくちゃ。明美、エルちゃんの面倒見ててくれる?」
「任せてよ! エルちゃんと遊んで待っているわね。楓の手料理が食べられるなんて♪ ごちになります!」
私は膝の上に座っているエルちゃんを床に降ろしてから、ご飯の支度をしようと台所へ向かいました。
「エルちゃん? 明美お姉さんと遊んで少し待っててね~」
「――――――?」
「あらあらぁ~甘えん坊さんね♡」
エルちゃんが私の足にピトッと抱き着いて来て、私を上目遣いでじーっと見ています。思わず顔がニヤけてしまいそうです♪
「楓ずるい! エルちゃん~ほーら、美味しいお菓子が沢山あるわよ~♪」
「――――――!?」
明美が自分のカバンから、ゴソゴソとお菓子を取り出してエルちゃんを釣ろうとしています。まあ、そんなお菓子程度で私が負ける筈がありません……え? ちょっ……!? ちょっとエルちゃん!?
「――――――♪」
「金髪のロリっ子ちゃんが釣れたわ♡ エルちゃんったら、食いしん坊さんね~」
「なっ!? 私よりチョコチップクッキーを選ぶと言うの……エルちゃん」
エルちゃんは私から離れて、走って明美の所へと行ってしまいました。私よりチョコチップクッキーを選んだ事に、私はショックを隠せませんでした。
「ふふっ……これくらいで狼狽える私じゃない……気分を切り替えて、美味しいご飯でも作って上げようかな~エルちゃん喜ぶわね」
私は冷蔵庫を開けて何を作ろうか考えて居ました。幸い沢山買って置いてあるので、食材は豊富です。
「無難に野菜炒めと味噌汁にしましょうか。さて、作りますか!」
◆|明美《あけみ》視点
「エルちゃん、これはね。クッキーって言うお菓子だよ~美味しい?」
「――――――♪」
「ふふっ……そんなに慌てて食べなくても大丈夫だよ~」
エルちゃんは口いっぱいに、クッキーを頬張って幸せそうな顔で食べています。リスみたいで本当可愛いの!
「――――――!」
「ん? 私にもクッキーくれるの? ありがとね♪ よしよし」
「――――――♪」
エルちゃんの頭を優しく撫で撫でしてから、私は頭から手を離すと何とエルちゃんが私の手を掴んで来て、何やら切実な顔で何かを言っているみたいです。
「ん? 撫で撫でして欲しいのかな?」
「――――――!」
エルちゃんは私の手を自分の頭に乗せて、撫でろと言わんばかりに私を見つめています。もうこの子お持ち帰りしたい! 可愛いの暴力よ! 私はエルちゃんの要望通りに頭を優しく撫で撫でしてあげたら、目をトロンとしてうっとりとしています。
「エルちゃん、明美お姉さんの膝の上においで~もっと頭撫で撫でしてあげるから」
「――――――?」
エルちゃんは少し迷ってから、私の膝の上にやって来て私を背もたれにするような感じで、ぐてっとして座ります。
私の膝の上に小さな天使が舞い降りました!
「あいっ!」
「あら、じゃあお言葉に甘えて1つ貰っちゃおうかな~パクっ」
エルちゃんが小さなおててで、クッキーを掴み私の口元に持って来て食べさせてくれました! 私もお返しにエルちゃんの口元にクッキーを持って行ったら、もぐもぐと食べてくれて嬉しいです♪
「何だかセクハラ上司や嫌味課長のせいで、ストレス溜まってたけどエルちゃんのおかげで、全て吹き飛んだ気分よ♪ この現代社会に癒しは必要不可欠ね」
「――――――。」
「あら? エルちゃんお眠でちゅか? ご飯までまだ時間あるから、お姉さんが膝枕してあげるよ♪」
私はエルちゃんを横にしてから、頭を膝の上に乗せて撫で撫でしてあげてたら、いつの間にか小さな寝息がすぅすぅ……と聞こえて来ました。私はエルちゃんの寝顔を存分に堪能しました。こんなに穏やかな気持ちになれたのは久しぶりですね。
「エルちゃん、ありがとね♪ そして、今後とも宜しくね♪ ちょくちょく遊びに来るから」
「ムニャムニャ……すぅ……すぅ」
そして、約1時間が経過し楓が料理を運んで来て机の上に並べております。楓はエルちゃんが寝ている事に気付いてから、クスクスと笑っておりました。
「明美ずるいよ~そこ変わって欲しいなぁ」
「楓はこれからいつも一緒だから良いじゃない~ほら、見てこの寝顔。大きくなったら間違い無く美人さんになるわね~どうする? エルちゃんがもし彼氏でも連れて来たら」
「え……何処ぞの馬の骨か何かにエルちゃんは渡しませんよ? 変な人に引っ掛からないように私がしっかりと目を光らせるから」
「あっ……はい」
楓は恐らく、この先段々と過保護になって行くのだろうなと予感しています。でも私も楽しみがまた一つ増えました。エルちゃんがどういう風に成長して行くのか近くで見守って行きたいと思います。
楓や葵ちゃんも両親が亡くなってからかなり落ち込んでいたから、一時期は心配してたけどエルちゃんのおかげで今の楓はとても嬉しそう。
「楓、エルちゃんの事で困ったことがあれば遠慮無く言ってね! 私もちょくちょく顔を出すから」
「うん! いつもありがとね。明美」