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第2話:「なんで毎日美術室くるの?!」
あれから3日。
まさかの展開が起きている。
「またおるやん、あの金髪……」
放課後の美術室。私が絵の具と格闘してると、またガラガラっとドアが開いて——
「いっちゃん!今日も筆さばきがプロフェッショナルやな!!!」
「帰れ!部活行け!あと“いっちゃん”って勝手につけないで下さい!!」
金髪七三分け男、こと宮侑(通称ツム)が、ニヤニヤしながら毎日やってくるのだ。
しかもタイミング、絶妙に他の部員がいない時間。
これはあれか? 幽霊部員の先輩たちが空気読んでるのか?
「今日のテーマ、なに? 怒りの海とか?それとも空腹のカラス?」
「怒れる海って私の顔見て言いました?あと空腹のカラスはなに、宮さんのこと?」
「ちょっとおもろいやろ?」
「どんな感情でそれ言ってんの?」
そしてなにより、こいつは部活前の時間を完全に美術室につぎ込んでる。
バレー部、強豪やないの?準備しなくていいんか?
「てかさ、治くんに怒られへんの?」
「怒られた。『お前、美術部か?』って」
「そらな!!」
とか言いつつ、あの宮治くんは
毎回「ツム、まじで失礼せんようにしろよ」って念押しして帰っていく。
一方、角名くんはちょっと静か目で、
「おれ、侑が真面目に恋しとるとこ初めて見た」って冷静に分析してて怖い。
まあ、そんな感じで。
あいつはなぜか毎日美術室に来る。
私が絵に集中してると、少し離れたとこに座って、じーっと見てくる。
「じっと見すぎです。魂吸われる」
「えっ、吸ってええ? いちかちゃんの魂、たぶんラベンダーの香りしそう」
「お前は吸血鬼か」
なんやろ。
最初はうるさ〜って思ってたけど、最近ちょっと——いや、かなり気になってる自分がいる。
たまに変なこと言うけど、
見てないようでちゃんと絵も見てくれてて、
私が集中してるときは、ちゃんと黙っててくれる。
不思議なやつ。
……と、その日のことだった。
その日も例によって美術室に来た侑が、帰り際にちょっとモジモジしながら言った。
「なあ……今日、部活終わるまで待つから、いっしょに帰らへん?」
——えっ?
この男、ついに放課後の戦場に攻め込んできたぞ。
さて、私。この申し出、どうする!?