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グリルタ
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二人が6年生の1月、晶子は都内の中高一貫私立の中等部を受験した。口下手な晶子は面接の比重が高い入試を避け、ペーパーテスト重視の学校を選んだ。
直前の正月の2日、晶子とカンナは近くの神社へ初詣に行った。正月ぐらい息抜きも必要だと言ってカンナが家から引っ張り出したのだった。
近くと言ってもバスで20分ほどかかる。晶子は厚手のスカートにタイツ、子ども用のフード付きのコートといういで立ち。カンナはセーターと近所の年上のおねえさんからお下がりでもらったというジーンズと革のジャンパーを着ていた。
後部座席に二人で並んで座ると、晶子は肩から下げたショルダーバッグから問題集を取り出し、じっと読み始めた。内心では試験に合格できるかどうか、不安でしかたなかったから、持って来てしまった。
それに気づいたカンナがさっと問題集を上から取り上げた。晶子の抗議に耳を貸さず、カンナは自分の顔の上に問題集を掲げ中身を読んでみる。
「ずいぶん難しそうな事書いてあんな。小学生にこんなの分かるのかよ。晶子って頭いいんだな」
「ちょっと、カンナ、返してよ。試験の日まで1週間しかないんだよ」
「だから今さら詰め込んだって焼石に水だって。気分転換しに来てんだから、今は勉強は禁止」
「ええ! でも」
「それに何だ、この問題。この新幹線はどちらの方向へ走り出そうとしているか、理由をあげて答えなさい……晶子は新幹線乗った事あんのか?」
「あ、うん。おじいちゃんとおばあちゃんの家に行く時、年に何回か乗るよ」
「だったら、オレみたいに新幹線に乗った事ない貧乏人にゃ解けない問題だな。こっちはテレビのニュース番組見てないと答分かんねえやつだ。うちはニュースの時間になると父ちゃんがチャンネル変えちまうから、オレんちみたいな家の子は分かるわけねえ」
カンナは問題集を晶子のバッグの中に押し込んで、バスの天井を見上げながらため息をついた。
「なんか、嫌な感じのテストだな。オレみたいな貧乏人と晶子みたいなお嬢様じゃ、受ける前から勝負ついてるじゃん」
「だから前から言ってるじゃない。あたしはお嬢様なんかじゃないよ。うちは普通の家なんだって。だから塾で教わらないと、あたしだってこんな問題解けないよ」
「イメージの問題だよ。別に大金持ちの家でなくても、晶子はいかにもお嬢様って感じだしな。おっと、次のバス停だ」
バス停から賛同を通って神社の鳥居へ向かう。それほど有名な神社ではないので、参道は比較的空いていた。
鳥居をくぐり、拝殿でお参りをし、脇のお守りを売っている場所へ行く。晶子は学業成就のお守りを一つ買った。
参道をバス停の方向に向かいながら、カンナは両腕を頭の後ろで組んで歩きながら言った。
「これで安心だな。晶子はあんだけ勉強したんだから、きっと合格できるって」
「カンナは地元の公立中学に行くの?」
「ああ、ていうか、それ以外の選択肢ないしな。踏切の南側の家の子はほとんどがそうだよ」
「じゃあ、もう今までみたいに会えなくなるのかな?」
「そりゃ学校が別になるからな。けど、家は近いんだから、一緒に遊ぶ事ぐらいできるさ」
「そうだね。中学生になったら塾は週2回でよくなるし」
「はあ? 合格した後も塾に行くのか?」
「うん。あたしが受ける中学、入学した後もそうしないと授業についていけなくなるって」
「そうか、晶子は大学行くんだろうしな」
「あ、うん。お父さんもお母さんも大学出てるし、あたしもそうするのが当然って思ってきたし」
「うらやましいな。オレは大学なんて考えた事もねえや。あ、バス来るぞ、晶子、急げ」
カンナは晶子の手を握って走り出した。手を引かれて一緒に走りながら、晶子はカンナの掌が自分のよりずっと厚みがある事に気づいた。
すぐに息切れする晶子と違って、カンナは白い息を吐きながらも元気いっぱいの様子で微笑みながら余裕で駆けている。晶子は心の中で、カンナのような女の子に生まれたかった、と思った。
コメント
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うわぁ…第8話、めっちゃ切ない…😢💔 晶子の受験前の不安、分かるなあ。でもカンナが問題集取り上げて「気分転換しに来たんだから」って言うシーン、優しさがにじんでて胸キュンしたよ…! でも「貧乏人とお嬢様じゃ勝負ついてる」ってカンナの言葉、重い。晶子が「カンナみたいな女の子に生まれたかった」って思うラスト、もうグッと来た…二人の間に見えない壁がある感じが切なすぎる😭🌸