テラーノベル
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#ヒトコワ
#仕事
#裏切り
法廷内に、裁判長の厳粛な声が響き渡る
「主文。被告人、直樹、高木、ならびに九条──」
下されたのは、彼らが築いてきた虚飾の城を根こそぎ奪い去る、実刑判決と巨額の賠償命令だった。
直樹は力なく項垂れ、高木は醜く喚き散らし、九条だけは虚空を見つめていた。
(……終わった。本当に、終わったのね)
アクリル板の向こう側で連行されていく直樹と、一瞬だけ目が合った。
かつては私を恐怖で支配したその瞳には、今や何の光も宿っていない。
私はただ、無言で彼を見送った。
同情も、一秒の未練も残さずに。
法廷を出て、私は九条さんの隠し子であった青年に深く頭を下げた。
「ありがとうございました。…これで、私の帳簿から彼らの名前を消せます」
「いいえ。あなたは自分の力で戦った。……これ、九条が最後の執念で隠し持っていた、あなたへの『返済品』だそうです」
手渡されたのは、小さな黒いベルベットの箱。
中を開けると、そこには10年前
実家が破滅した際に直樹が「借金のカタ」として持ち去った、父の形見である万年筆が入っていた。
父が倒産の間際まで、家族への愛を書き綴っていた、あの万年筆。
「……おかえりなさい、お父さん」
私は、その万年筆を胸に抱きしめた。奪われたものは金だけじゃなかった。
誇りも、思い出も、すべてを彼らは踏みにじった。
けれど今、私の手元にすべてが戻ってきたのだ。
◆◇◆◇
その日の夕方
私は陽太を連れて、かつて実家があった更地を訪れた。
そこには今、私の会社が買い戻した土地に、新しい
「シングルマザーと子供たちのための自立支援施設」の建設が始まろうとしている。
「ママ、ここにお家ができるの?」
「ええ。悲しい思いをした人たちが、もう一度笑えるためのお家よ」
私は、新しい家計簿の50ページ目に、太い文字でこう書き込んだ。
【10年越しの全精算:完了】
負債:ゼロ
未収金:ゼロ
純資産:陽太の笑顔、そして自分自身の誇り
空を見上げると、燃えるような夕焼けが広がっていた。
私は地獄を這い上がり、敵を全員叩き落とした。
「行こう、陽太。……今日の献立、一緒に考えよっか。何か食べたいものある?」
「うん! お肉たっぷりのハンバーグがいいな!」
1円を惜しんで震えていた私は、もういない。
私は、私の人生の、完璧な執行役員になったのだ。
【残り50日】
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