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最後?の面会


紬希が舞を舞った翌日、午後から柱が順番に見舞いに来た。


煉獄と宇髄、伊黒と不死川、冨岡、悲鳴嶼、甘露寺の順に。

一度の面会は20分程としのぶから決められていたが、 できるだけ握手などして力を分けてあげてください、と言われていたので、皆それに従った。


煉獄はがっしりと力強く手を握ってくれた。そして、炎のように鮮やかな髪を揺らしながら、ちょっと痛いくらいの力で紬希を抱き締めた。

宇髄は気分が明るくなるからと、自分と同じように爪を派手な色に塗ってやろうかと提案してくれたが丁重に断った。

爪を染める代わりに、彼は楽器を弾いてくれた。


『皆さんの生命力を吸い取ってしまうみたいですみません』と言う紬希に、 有り余ってっから思う存分好きなだけ吸い取れェ、と小さく鼻をすすりながら手を握る不死川。

伊黒は黙って握手していたが、耳元でこそっと『蜜璃ちゃんと仲良くね』と紬希に言われ、顔を赤らめて頷いていた。


冨岡は紬希が食べやすいように、と水羊羹を差し入れてくれて、一緒に食べた。

冷たくつるりと食べられる甘味に、紬希はとても喜んだ。


悲鳴嶼は口数こそ少ないが、大きく分厚い手で紬希の細い手を包み込み、力を注入するようにぎゅっと強く握った。


甘露寺とは占い関係なく恋愛の話に花を咲かせていたが、もうすぐそこまで近付いてきている永遠の別れに甘露寺が堪らず泣き出し、最後の数分間は抱きついてきた甘露寺の身体に腕をまわして暫く抱擁していた。





そして、その次の日。

その日は久し振りに紬希の体調がよかったので、一度につき2人まで、10分程の時間という約束で他の隊士たちが見舞いにやって来た。

かわるがわる多くの隊士が部屋に入り、紬希と色々な話をする。

紬希の病や寿命のことは伏せてあったが、柱と話せる機会も貴重な上に、紬希の能力に助けられた者も多いので、短い時間でもいいからと、皆紬希に会いたがっていた。

紬希の身体を休める為、面会時間1時間ごとに、面会禁止時間も1時間と、しのぶによって定められた。



夕方になると隊士たちは宿舎に帰っていき、やっと静かな時間が戻ってきた。






その晩、蝶屋敷に無一郎がやって来た。


「しのぶさん、お願いします!つむぎさんに会わせて……!」


任務の帰りで結構な傷を負っていたので、とりあえず手当を受けるよう促した。


傷を消毒し、包帯を巻きながら、しのぶが口を開く。


「時透くん…紬希さんは今日、大勢の隊士の面会で疲れていると思うんです。……任務終わりに急いで来てくれたんだとは思いますが…明日ではダメですか?」


「……僕もたくさんの面会があったの知ってます……。自分勝手だって分かってるけど、どうしても…っ…今…つむぎさんに会いたい……!」


隊士たちの中でも特に紬希を慕っていた無一郎。

彼が生死の境をさまよっていた時から傍についてやっていた紬希。


どうしたものか。


紬希の身体のことを考えると、ここは心を鬼にして、また明日改めて来るよう無一郎に言うべきだが、その“明日”が紬希に訪れる保証はどこにもない。


「お願いです!つむぎさんに会わせて!!」


今にも零れそうな程、目に涙を溜めて懇願する無一郎。


ここで断って、もし紬希の明日が来なかったら……。

きっと自分も後悔し、無一郎も一生立ち直ることができなくなってしまうだろう。


「………分かりました。特別に許可します。ただし、紬希さんの体調が最優先です。少しでもつらそうな様子が見られたら、すぐに私を呼んでくださいね 」

「…っ!はい!」




「紬希さん。時透くんがどうしても会いたいと言って来ています。……大丈夫ですか?」

『うん、大丈夫よ。無一郎くん、いらっしゃい』


襖を開けて、無一郎が入ってくる。


「……つむぎさん…無理言ってごめんなさい……。身体、きつい?」


かき消えそうな小さな声で無一郎が話し掛ける。


『ううん、平気よ。今日はね、1日体調がよかったの。モルヒネも少ない量で済んだのよ。それに、無一郎くん任務終わりに来てくれたんでしょ?ありがとう』


紬希が笑った。

それを見て、無一郎の胸がじわりと熱くなる。


「一昨日の…つむぎさんの舞、すごく綺麗だったよ」

『ああ、見ててくれたのね。ありがとう』


紬希は、うっすらとおしろいをはたいているようだった。

普段のよりも淡く優しいピンク色の口紅と頬紅もつけてるようにも見える。


「…お化粧…してるの?」

『うん。お風呂入った後だけど、つけたまま寝られるのがあるのよ。顔色もよく見えるでしょ?』

「うん…きれい……」

『ふふ。ありがとう』


また紬希が笑った。

よく知っている、温かくて穏やかな、優しい笑顔。


それを見て、無一郎の視界がぼやけていく。

泣かないと決めていたのに、駄目だった。

堪える間もなく瞼の淵に涙が溜まって、ぼろぼろと溢れて止まらなくなる。


「つむ…ぎ、さん……つむぎさん……っ」


泣き出した無一郎を、紬希が黙って引き寄せて抱き締めた。


「つむぎさん……おねがい…っ…死なないで……!」

『…無一郎くん……。言ったでしょ?人はいつか必ず命を終えるって』

「やだ…!いやだっ!!置いていかないでよおぉ…!つむぎさんいなくなっちゃうなんて嫌だ……!」


ぎゅっと紬希にしがみつく無一郎。

そして、傷の痛みが消えたことにはっとして顔を上げる。


「…!?……だめっ!なんで力使ったの!!つむぎさんの体力がなくなっちゃう!!…寿命がもっと短くなっちゃう……っ!」

『無一郎くん?』

「それ以上使わないで!!お願い…っ!」


大粒の涙を流しながら声を荒らげる無一郎に、紬希が困った顔を見せる。


『無一郎くん。私の力は、使っても体力や寿命が削られることないのよ?』

「それでもだめっ…僕は怪我なんてへっちゃらだから……!もう力使わないで!お願い!紬希さん死んじゃうなんていやだ…うぅっ…うわああああぁぁ……!!」


とうとう声を上げて泣き出してしまった。


そんな無一郎を、紬希はぎゅっと抱き締めて背中をトントンと軽く叩く。

泣きじゃくる小さな子どもをあやすように。


無一郎の呼吸が乱れると背中をさする。

彼の長い髪を指で梳きながら撫でる。



少し経って落ち着いてきた無一郎に、紬希が静かに声を掛ける。


『無一郎くん、顔を上げて?』

「…ふ…うぅっ……」


まだ涙の止まらない瞳で紬希の顔を見る。


『これを、あなたに』

「…?」


一旦身体を離し、紬希が何かを首から外して無一郎の首にかける。

手に取り見てみると、深い海のような青色の、勾玉のペンダントだった。

群青色の中にところどころ、金色の模様も見える。


「これは…?」

『これはね、私の家族に受け継がれてきたものなの。この石の和名は“瑠璃”、外国では“ラピスラズリ”っていうの』

「らぴすらずり……」


教えられた単語を反復する。


「綺麗……」

『紐は新しいものに替えてあるからね。これをあなたに持っていてほしいの』

「でも、これ…つむぎさんの家族に受け継がれてきたんでしょ?そんな大事なもの、どうして僕に……?」


紬希が勾玉を持った無一郎の手をそっと握る。


『私の家族は、私が修行に出ている間に一族を鬼に皆殺しされたからもう誰もいないの。私ももうじき命を終えるから…私の代わりにこれを持っていて』


決定した紬希の死を問答無用で再確認させられた無一郎の目から、また涙が溢れ出す。


「う…っ…つむぎさ……やだ……!」

『無一郎くん、よく聞いて。ラピスラズリにはね、魔除けの力や幸運を引き寄せる力があるの。私の代わりにあなたを守ってくれるように、これから先、あなたが幸せであるように、祈りを込めたから。……記憶もちゃんと戻るし、必ず本来の自分も取り戻せるから、大丈夫。きっと 大丈夫よ』


静かに穏やかに話す紬希の声を、無一郎は涙を流しながら聞いている。


『あなたは記憶を失う程のつらい経験をした。それは人間の防衛本能で、心が壊れてしまわないように自分で自分を守ったということなのよ。でも、そのうちちゃんと思い出せるから。大丈夫よ』


紬希がそっと無一郎の頬に手をやり、指で涙を拭う。

拭ったそばからまた涙が流れてくるので収集がつかない。

苦笑しながら、紬希は今度はハンカチで無一郎の濡れた睫毛や頬を拭く。


『あと…これも無一郎くんに』


それは、8人の柱にも作っていたお守り袋だった。


『無一郎くんは特別よ?柱以外の人にはこれ作ってないんだからね』

「…!」


自分だけ特別、と言われ、無一郎の鼓動が少し速くなる。


『みんなで力を合わせて、きっと鬼を倒してね。上弦の鬼も、鬼舞辻無惨も』

「…っ……うん…!」


お願いね、と言いながら、紬希がもう一度、無一郎を抱き締めた。

無一郎も涙を流しながら、紬希の身体に腕をまわして彼女の肩に顔をうずめる。




どのくらい時間が経っただろうか。


『?……無一郎くん?』

「………………」


急に無一郎の身体が重くなったと思ったら、泣き疲れたのか紬希に抱きついたまま、すやすやと寝息を立てていた。


『あらら。寝ちゃった』


紬希は無一郎を起こさないよう、慎重に畳に彼を横たえ、押し入れから布団をもう一組出してきて、無一郎を寝かせる。


そして、自分も布団に入り、目を閉じてゆっくりと意識を手放した。





つづく

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