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今日もいつも通りの出勤日だ。「今日は特に急がないとな……」
花鈴は気持ちを慌てさせ、出勤準備をする。
会社に着くと、いつもは空いているはずの席が埋まっていた。
「ここの席、誰かいたっけ?」
「あ、今日から新入社員が来るらしいよ」
花鈴が瀬夏と話していると、笹木部長の声が聞こえた。
「本日付でこの部署に所属することになった、麻藤透也君だ。皆、よろしく頼む」
「はい」
麻藤君が席に着くと、周りが騒がしくなった。
「可愛い!本当に男なの?」
「麻藤君、赤ちゃんみたい」
褒め言葉だろうが、花鈴にはただの悪口にしか聞こえなかった。
「西辺ー」
「笹木部長、何でしょうか」
「麻藤の新人研修の担当者にお前を推薦した事と、あと社長が呼んでたから、今すぐ来いって」
「分かりました」
そして私は社長室に向かった。
社長室は相変わらず厳かで、静かだった。
花鈴は服装を正して、社長室のドアノブに手をかけた。
「失礼します」
社長室に入ると、社長は足を組んで座っていた。
「そこに座りな」
社長に促され、花鈴は社長の向かいの席に座った。
「今月の業績の事だが、先月より著しく下がっている。これはどういう事だ」
「え……」
全く心当たりもない業績報告書を見せつけられて、花鈴は何も言えなかった。
「おい、早く答えんか」
その時、近くから部長の声がした。
「ちょっとすみません」
「何だ」
何を言うのだろうと、花鈴は耳を傾ける。
すると部長は、とんでもないことを言った。
「その業績報告書、偽物ですよね!?」
「え?」
部長は厳しい口調で言う。
「この損益計算書の数値が明らかにおかしいです。特に、ここの売上高の欄。他の項目を合計しても、こんな低い数値にはならないはずです」
確かに。花鈴は思った。
そもそも今月の給料日はもう過ぎたというのに、まだ振り込まれていない時点で変な話だ。そのうえ、嘘にも近い数値の売上高なんて、全部を合計しても100万にすら届かない。
「正直に答えてください、社長!」
すると社長は無言で立ち上がった。社長の大きな図体に、花鈴は気圧されていたが、部長には何のダメージも無いようだった。
「これ、明らかに改ざんですよね?いい加減に認めてください!」
「お前、部長ごときが社長に……!」
その時、噂の新入社員、麻藤透也が来た。
「社長、そろそろ自分の罪を認めた方がいいですよ?」
いきなり現れた透也に、花鈴は一瞬驚いた。
「あ、麻藤君……」
透也はとてつもないレベルの解説力で、透也は言葉を続けた。
「その損益計算書、そもそも税抜で記載していますよね?それって正しいのですか?」
「な……!」
麻藤君、本当に新入社員?
そう思えるくらい、透也の知識量は半端なかった。
殆ど透也のお陰で、部長は社長を説得させることができた。