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#溺愛
桜咲かな
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#溺愛
桜咲かな
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#人間不信
「これは野暮ったい」
「これは安っぽい」
「これは女の子っぽすぎる」
「これは子供っぽい」
ジェニは2時間に渡ってウォークインクローゼットの服を一枚ずつベッドへ放り投げ、手持ちの全衣装をベッドに山積みにしていた
ああ・・・どうしよう・・・自分より12歳年上で、関西一を誇る商社の代表で、メビウスビルの最上階に住まいを設け、上流中の上流の人々の仲間入りで、米軍のように沢山のマシンを所有している、見た目整い過ぎている人と、初めてまともなデートをするという時、いったい何を着ればいいのだろう?
ジェニは下着姿で、姿鏡の前に立ち、何度も服を着替えていた、そしてフムと手を顎に添えて腕を組んで考える・・・原点に還って下着から再検討しはじめた
どんな下着をつけるかを決めれば、その上に着るものは、おのずと決まってくると思った、一年前に購入した3サイズアップするプッシュアップブラを装着する、脇肉がぐいぐい持ち上げて寄せられているので、見た目メロンが二つ重なっているように見える・・・しかしジェニは渋い顔でそれを外した
こんなに盛り上がっていても、竜馬さんに触られれば一目瞭然だ、無駄な見栄を張るのはよそう
「あたいの服貸そうか?」
「わぁ!!びっくりしたぁ~!」
思わず、ジェニがブラジャーを放り投げた山積みの服の中から、突然明美が現れ、頭に降って来たブラジャーをよける
「フェロモンとデートなんでしょ?いい服があるよ」
「本当?!」
明美が持って来たボストンバッグを開けると、カラフルな色の服が溢れていた
「全部キャバドレスじゃない!」
「キャバ嬢だったんだから、しょうがないでしょ」
ジェニは目を丸くした
「ほら!」
明美が見せたスマートフォンには、金パツ盛り毛でシャンパンを持って笑っているキャバ嬢の明美と、その隣に映っている豊がいた、明美は今よりずいぶんこの頃より風貌が変わっている、今は金髪盛毛ではなく、ブラックのおかっぱ髪に、不気味な雰囲気で、気づかなかったがよく見ると、目鼻立ちがハッキリした、ミステリアス美人だ、途端にジェニはムカッ腹が立って来た
―豊め!!会社が傾いている時にキャバ遊びしてたのねっ!―
「兄はどこにいるのよっ?」
「職探し、きっと見つからないけど」
ジェニは怒りに眉根を寄せた
「何の職を探しているっていうのよっ?兄は神崎広告代理店の社長なのよ?他のみんながどれほど苦労したか」
「知っているよ?でもメビウスはフェロモンの会社でしょ?あんたもわかってるんでしょ、役員のおかげで豊ちゃんが酷い目にあったことも、それをまだ引きずっていて、おかしくなってることも」
明美は真顔で答えた
「兄から何を聞いたのよ?」
「何もかもだよ、あたい達の間には隠し事は無いの」
ジェニは明美のキャバドレスの中から、一応シックな装いのドレスをマジマジと見つめた
「じゃぁ、あなたのクラブに兄が遊んで通いつめて、あなたを落としたっていうのね?まったく、その時は会社が大変だってのにバカなんじゃない?」
そしてそのドレスを放りだした、やっぱり自分の服から選ぼう
「違うよ、豊ちゃんが来たのは一回きり、常連は役員連中だよ、彼らに渋々連れられて来たって感じだったな」
明美はうっとりとその時を思い出しているようだった、ジェニは三か月前に合同会社プレゼンで着た、パールの襟の紺のワンピースを着て鏡に立った
「どう?これ」
ジェニが明美に聞く
「まるで授業参観の母親ね、そんなんじゃフェロモンを落とせそうにないわね」
「兄が来たのが一回きりって?それじゃ、あなた達一目惚れでもしたっていうの?」
「それに近いかな?でもその時の豊ちゃんったら、ブスッとしちゃって、女の子誰ともしゃべらなかったの」
明美は言った
「なんでそれで一目ぼれするのよ?兄は決して見た目よくないわ」
明美がクスクス笑っている、何が面白いのだろう
「そしたら豊ちゃんが倒れたんだ」
ジェニは目をパチクリさせた
「ええっ?倒れた?なんで?」
「豊ちゃんは間違えて、自分のグラスの横にある私のカルーアミルクを飲んだの、あれはお酒を牛乳で割ってるんだ」
明美が平然と答える
「そしたらアレルギー反応が激しく出過ぎて、顔が膨れ上がって息ができなくなって、それであたいが救急車を呼んで、病院に連れて行ってあげたの」
ジェニは明美の肩をつかんで揺さぶりたくなった
「あのバカっっ!兄さんは牛乳アレルギーなのよ!!自分でもわかってるくせに忘れたっていうの?」
明美は肩をすくめた
「飲んでから思い出したんじゃない?」
「兄さんは、10歳の時の死にかけた自分が夏休みの事件を忘れてたっていうの?」
ジェニにとっては一生忘れようもない出来事だった
・.。. .。.:・
あの夏の日・・・
我が家にはお手伝いさんが作ったホットケーキを食べに、豊のゲーム友達が大勢遊びに来ていた
豊は彼の友達と金魚のフンのようにくっついてくる妹ジェニと、一緒に嬉々としてそのケーキを食べた、そして喉を詰まらせた、豊が目の前にある1杯のコップに入った牛乳を一気に飲み干した
現場はまたたく間に惨状と化した、牛乳が床一面に散乱し、豊が息を詰まらせて床をのたうち回ったのだ
近所の豊の友人達は、悲鳴をあげてパニック状態になった、彼らは10歳児らしく、一目散に逃げ帰った、その時に・・・一人大きなお兄ちゃんがいた・・・その時の・・・彼は見事な落ち着きぶりで、豊を背負って近所の個人医院に駆けこんでくれたっけ・・・
ジェニはずっと泣きじゃくっていた・・・兄が死んだと思っていたからだ
―でも、ちょっと待って?彼って誰だっけ?―
ジェニは思った・・・所どころ記憶の断片に、落とし穴のような空洞がぽっかりある・・・誰が兄を病院に連れて行ってくれたんだっけ?父ではないはずだ・・・だって彼はとても背が高かった
その彼って誰?・・・短い夏の季節・・・ジェニの家に家族以外に誰かが暮らしていたような気がする・・・思い出そうとしたら明美の話でその記憶がパチンッと無くなった
「病院を退院して・・・行く所が無いって言う豊ちゃんを、あたいが連れて帰ったの、まだアレルギーでフラフラしてたから、これなんかどう?ベルサーチだよ?シャツを合わせたら素敵だよ」
明美が自分のブラックのシンプルなベルサーチのドレスを、ジェニに着るように言った
着てみると思ったよりスカート丈もそれほど短くなく、それなりにセクシーだった、しかし後ろのデザインはシンプルどころではなかった
「なに!これ!とんでもなく背中が開き過ぎているわ!! 」
「ベルサーチのドレスは勝負服だよ! 外にいる時はシャツを着ていて、二人っきりになったら彼に背中から脱がしてもらうんだよ」
ジェニが鼻にしわを寄せる
「こんなに背中が開いていたら、ブラジャーが出来ないじゃない !」
「愛しい男に会いに行くのに、ブラジャーを付けるなんて野暮な事しなさんな、このドレスはビスチェ型になっていて、シームレスブラジャーが内臓されているから、そもそもブラジャーを付けるより、胸が綺麗に見えるんだよ」
ハンッと明美がそっぽを向く、フム・・・と考え、ジェニは明美の前に正座する
「さすがキャバ嬢ね!勉強になるわ!」
「それからアンタの歩き方だね! そんな猫背じゃなく・・・・・ 違う!違う!そうじゃなく 一本の線の上を歩くように・・・ 猫のしなやかさを持って 」
明美がジェニの前でお手本のウォーキングする
「片方のお尻に重心をおいて・・・ ゆっくり左右に振りながら歩くの・・・ こうよ・・・ 」
「そんな歩き方をずっとしてたら、早く歩けないし、疲れちゃうわ 」
「バカだね!ずっとするわけないでしょう?彼の前を歩く時だけだよ!」
「なるほど!」
「あからさまにやりすぎてもダメ! 上も下も緩い女だと思わせるのもダメ! かといって女教師のようにガチガチに絞めてもダメ! 上品と下品の狭間を行くんだよ」
「フムフム・・・・ 」
「大事なのはフェロモンと一緒にいることが楽しいと思わせることだよ、スキンシップも多めにね、時々耳元で卑猥なことを囁いてもいい、あんたってカマトト?」
ジェニが初めて聞いた言葉を頭にインプットするように言った
「カマトトって何?」
明美が目をパチクリして言った
「おどろいた・・・・ もしかしてバージンなの?」
ぐっ・・・とジェニは怯んだ
「う・・・うん・・ だっ・・・だからといって私がモテないとか、肉体的欠陥があったとか、決してそういうわけじゃ―― 」
「そんなこと思った事ないわよ、バカだな、あんたはイケてるよ」
明美が腕を組んで大きくため息をついた
「それは・・・この間は悪い事をしたね、せっかくの機会だったのに・・・今あたいが言った事は全部忘れて・・・あれは男を落とす手練手管だから 」
じっとジェニを見つめる
「あんたはあんたのままでいいよ、きっとフェロモンもそれが好きなんだろうね」
明美はうんうんと悟ったように頷いた
コメント
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第112話、読み終えました!デート服選びに悩むジェニが可愛い反面、明美のキャバドレス軍団登場で一気に空気が変わって面白かったです。ベルサーチの勝負服に「背中が開き過ぎ!」って焦るジェニと、平然と「脱がせるんだよ」って言う明美の温度差が絶妙。でも最後に「あんたはあんたのままでいい」って優しく諭す明美にグッときました。そして夏の日の記憶の「大きなお兄ちゃん」…これは絶対後で繋がる伏線ですよね?次が気になります!