テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ムカムカとした表情のままの五木をチラチラと機嫌を伺うように見ながらそう言った。
「でも、あのときのキス…どういう意味だったのか聞きたいの」
「は……?」
「だって、五木、それだけで、まともに告白もしてくれてないじゃん!」
「太陽くんは五木が私のこと好きなの知ってたみたいなこと言うし!もうワケわからなくて…」
「わ、わかったから落ち着け…ちゃんと説明すっから」
「ただでさえ五木ってなに思ってるかわかりづらいんだからね?」
「……」
五木はバツが悪そうに暫く黙ったあと、小さく呟いた。
「……好き…でしかねぇだろーが。キスする意味なんて」
「えーなんか薄いな~、太陽くんみたいに堂々と言って欲しいんだけど?じゃないと私太陽くんの方に行っちゃうかもな~」
「おいあんま調子乗んなよ?行ったら殺すぞ」
「だったら言ってよ?ね?」
もうこんな横暴な言い合い慣れている。
すると彼は続けた。
「はあ、言えばいんだろ……言ったるわそんぐらい…」
五木は一息ついてから、真剣な顔で再び口を開いた。
「お前を独り占めしてぇの、他の男なんか見んじゃねえ、お前のこといっちゃん理解してんのも好きなんも俺なんだよ。……全部本音だわクソが。…これならいいんか?」
私は思わず目を見開いてしまった。
だって、あの五木が、顔を赤くしながらそこまで私に想いをぶつけてきたから。
「え……うっ、うん…てか、言い過ぎ…もうお腹いっぱいだから」
「んだよわがままな女だな」
その瞬間、こちらまで顔に熱が篭もるのを感じた。
それを見られるのは恥ずかしくて顔を覆ってしまう。
「おい、雫。顔見せろ」
そんな私を見て五木が私の腕を掴んで顔から引き剥がそうとしてくるが、必死に抵抗する。
「はあ?絶対見せない!」
「あ?なんでだよ」
「…今、確実に見せらんない顔してるから」
すると突然腕を掴んでいた手が離れたかと思うと、今度は身体ごと引き寄せられて
私は彼の胸の中にすっぽりと収まってしまった。
「ちょ、ちょっと……!」
顔なんて覆ってる場合じゃなくて、私が慌てて離れようと手で押してみるが、五木はさらに強く抱きしめてきた。
「そんな顔のまま行かせるかよ、わーったら予鈴なるまでこのままでいさせろや」
それから数日後の土曜日…
「10時に駅前集合な。遅れんなよ」
電話越しにそう告げられたのは、昨夜のこと。
付き合って1週間、初デートのお誘いだった。
にしても誘い方が雑すぎる。
少しはこっちの予定も考えなさいよとか、五木こそ寝坊しないでよ?
と文句を言いたいところだったが、結局普通に一言返事で了承してしまった。
「……なんでこんなに緊張してるんだろ」
前なら普通に話せたのに、なぜだか「付き合ってる」ということを意識してからは、どうも調子が狂ってしまう。
通話を終了して、まあ服ぐらいパパっと決めれるでしょと思い、そのまま寝床に潜った。
その翌朝
鏡の前でああでもないこうでもないと服装をチェックしている自分に、思わず呟く。
「いや、全然迷ってるじゃん私…っ!!」
まさかあいつとのデートで、服装やメイクにこんなに悩むなんて。
でも、気合い入れてるって思われるのも癪だし
できるだけナチュラルメイクで、上半身は肩開きの白いレースブラウスと、ショート丈のコートを羽織って
下半身には黒のチェック柄・コルセット風ジャンパースカート
足先には黒いニーハイソックスを組み合わせた甘辛ミックスのコーデで固めた。
そうこうして家を出て、待ち合わせ場所の駅前には約束10分前に到着した。
さすがにまだ来てないだろうと思ったら、五木はすでにそこにいた。
壁に腰かけて立ち
しかも予想外にきっちりした服装で。
なにあれ、本当に五木…?
ブラウンの無地チェスターコートに黒いトップスを合わせ、シックで柔らかな印象を感じさせる。
コート丈感と色合いがスタイリッシュで、五木ってこんなにかっこよかったっけ?って更に緊張感が増す。
「っ、おはよう五木」
「ん、はよ。早かったな」
「そ、それはこっちのセリフ」
「お前それ…」
五木は私の服装を見るなり、目を見開いて口をあんぐりと開けている。
「っ、もしかして、変…?」
「いや、そういうわけじゃねえけど…」
「けど?」
「か……」
「か?」
五木はなんだか言いづらそうに、視線を逸らして頬を赤らめている。
「かわええから、そーいう格好…俺以外の前ですんじゃねぇぞ」
「っ!?」
五木の口から出てきた言葉は、まさかの可愛いの一言。
「まあそれだけ、ほんじゃ行くか」
「えっ、あっ、もう決めてるんだ、どこいくの?」
「映画館。チケットもう取ってあるからよ」
「…五木にしては気が利く…」
「別に普通だろが、つーか一言余計なんだわおめー」
そんなやり取りをしつつ、五木と近くの映画館に向かった。
「これ、前にお前が見たいって言ってたやつだよな」
「え、よく覚えてたね?でもホントそう、公開終わっちゃうから、今日見に来れてよかったかも…!」
「俺も気になってたやつだし、ちょうどよかったわ」
「五木が映画とか珍しいよね、普段どんなの見るの?」