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撮影はその後、驚くほどスムーズに進んだ。
メイクを変えた私の姿を見て、カメラマンやスタッフたちからも、「今日の白河さん、すごくいいですね!」「雰囲気が変わった」
と、次々に声が上がった。
今までの私なら「お世辞だ」と切り捨てていただろう。
けれど今は、目元に残る御子柴さんの筆の感触が、私の心を強く支えてくれていた。
無事に全ての工程が終わり、スタジオに片付けの音が響き始める。
「お疲れ様でした。御子柴さん、本当にありがとうございました」
私は、機材をまとめている彼の元へ歩み寄った。
これでもう、仕事としての接点は一区切りだ。
そう思うと、胸の奥が少しだけ、ちりりと疼いた。
もっと、この人と話をしていたい。
生まれて初めて、そんなわがままな感情が芽生えていた。
「白河さん。……一つ、お願いがあるんですが」
片付けの手を止めて、彼が私を振り返る。
逆光の中に立つ彼のシルエットは、息を呑むほど綺麗だった。