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#一次創作
ruruha
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「本当にもう、それしか……ないの?私がしてあげられること……」
「ないわ!」
嘲笑って、切り捨てるように即答した。
「…………」
私は目を閉じた。
お母さん、アーウィン、マシュー。
心の中で大切な人たちのことをそっと思う。
ごめんなさい。
「……いいよ」
「えっ?」
面食らった顔をした。
足りない言葉を補って、もう一度答える。
「いいよ。私の血をあげる」
「は……な、何を言って……」
こんな時なのに、少しおかしくなった。
変なの。どうしてリズが狼狽えるの?
「だって約束したじゃない、助けるって。血を上げることでしか助けられないなら、私そうする」
「あ……あんた、分かってるの!?血を吸われたらあんたもこうなるのよ?化け物になるのよ!?」
「うん」
「うんって……バカじゃないの!?バカじゃないのッ!?何を考えているのよ!!もう嫌!!付き合い切れない!!あんたってほんと……バカじゃないの!?」
他に言葉が見つからないのか、何度もバカじゃないのを繰り返した。
バカを連呼されて、少し微妙な気持ちになる。
精一杯考えたつもりなのに……。
「バカかもしれないけど……私はたくさんもらったから。せめてものお返し」
「もらったって……そんな、私は別に……そんなすごいものあげた覚えなんて……」
迷うように口ごもった。
何をもらったことにそんな感謝をしているのか、一生懸命探っているみたいだ。
思わず微笑む。
ああ、やっぱり気づいてなかったんだ。
でもね、リズは確かにたくさんくれたんだよ。
「私がベッドに出られない日が続くと、リズはしょっちゅう遊びに来て色んなこと話してくれたじゃない」
「それがなんだって言うのよ……そんなの……大したことじゃ……」
「私には大したことだったの」
脳裏に自分の部屋が浮かんだ。
ふかふかのベッド。
枕元の熊のぬいぐるみ。
柔らかな光を投げる、レースのカーテン。
居心地のいい私のお城。
安全でーー閉じられた小さなお城。
「私、ベッドから出られなくても寂しくなんかなかったよ。リズが色々なことを話してくれるとね、ちゃんとそれが見えたから」
ベッドの中、彼女を通して外の世界に触れていた。
リズを通して見る世界はいつだって鮮やかで力強くて、優しさに溢れていた。
そしてそのまま、私の世界を形作る一つのかけらになる。
それが消えてしまうということは、私の一部が欠けるということ。
美しい世界が消えてしまう。
「大好きなリズ。血を吸われるのは怖いけど……お化けになるのはもっと怖いけど。でもリズが一緒なら平気だって思えるの」
今この時になっても、思い出せば心を満たすのは幸福な気持ち。
「だから血くらいあげてもいい。そうしたらもう、リズを一人になんかしない。そんな風に泣かせたりしない。私たち、これからもずっと一緒にいられるよね?」
誕生日、蝋燭を囲んで約束した。
私たち友達だって。
これからもずっと。
一瞬の間を置いて、甲高い笑い声が上がる。
「アハハハハハ!!」
狂ったように笑い続けるリズは、泣いていた。
「ハハ、アハハハ!!」
コントロールを失ったのか、笑い続けながら立ち上がる。
やがて、ぴたりと笑いが止まった。
彼女の赤い目が私を捉える。
「ほんとレナって、バカなんだから」
次の瞬間、リズは自分の長い舌を掴んで思いっきり噛みちぎった。
びっくりするほど大量の血が吹き出して、絶叫する。
「リズ!!何するの!!」
転げ回った彼女は、床にガンガンと自分の頭を打ちつけ始めた。
痛みを痛みで誤魔化しているみたい。
「やめて。頭が割れちゃう!」
後ろから縋り付いたが、リズはやめてくれない。
前に回り込み、自分の太ももで頭を受け止めた。
血だらけの頭を抱えて抱きしめる。
ちぎれた舌がびくんびくんと跳ねていた。
「……!……!!」
私の膝で突っ伏した格好で、何かを言った。
ゴボゴボと血を吐き出したせいで、よく聞き取れない。
何度も繰り返されたその言葉は、ちゃんと届いていた。
「いいの、謝らないで。私、怒ってなんかない。私の方こそごめんね。いつも困らせてばっかりで、ごめんね。何もしてあげられなくて、ごめんね……」
もっと私がしっかりしていたら。
もっと頭が良かったら。
もっと強かったら。
全部ないものねだり。
でも、思わずにはいられない。
どうして今までこんなに無力なまま、のうのうと生きてこられたのだろう?
ああ、力が。もっと私に力があれば。
「泣かないで。リズは何も悪くないんだから」
リズの血と涙でぐちゃぐちゃになった頬を、手で拭う。
「私何もできないけど、一緒にいる。ずっと一緒にいる。だからもう泣かないで」
言いながら目を上げた私は、一瞬そこに鏡があるのかと思った。
そして自分が怪我をしているんだと思ってーーそんな幸福な勘違いは、光が閃くほどの間だけ。
もう一人の『私』がそこにいる。
「リズ、逃ッ……!!」
逃げてと叫ぶより、『私』がリズを薙ぎ払う方が早かった。
「キャアッ!!」
何かが折れる音と共に、跳ね飛ぶ。
「リズッ!!」
「レナ……」
「!!」
邪魔者を排除した『私』は、のっそりと這い寄ってくる。逃げ……ううん、それよりリズを……。
だが腰が抜けたのか、全然足に力が入らない。
尻もちをついたまま、後退った。
それを追って、さらに距離を詰める。
「あァ……」
匂いを確かめてその顔を寄せーー。
「!」
急に身を捩った。
見ると、リズが背後からお化けに掴みかかっている。
コメント
1件
うわあああもうこの回泣いた〜〜😭💦💦 レナが「血をあげる」って言ったとこ、まじで心臓ぎゅってなった…!「リズがくれた世界」とか「一緒にいたい」って言葉が純粋すぎて刺さる…。 なのにリズが自分の舌噛み切るとか衝撃的すぎて声出たよ!?自分を犠牲にしてでもレナを守ろうとするの、友情の重さがエグい…二人とも優しすぎるんだよ😭 最後の「もう一人の私」で終わるとか待って次回すぐ読みたい…!チェシャ猫さんの心理描写、毎回刺さりまくりです…✨