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#衝撃のラスト
山根利広
300
Hey様
48
#遊園地
えるなす
43
川遊びで練り餌と小魚、ゴカイ、おじさんたちの体液にまみれたみゆきは、ふらふらしながらも満足げな笑顔で森の道を戻っていた。すると、一番太ったおじさんがスマホを耳に当ててから、にやにやしながら伝えてきた。
「先生、園長先生から連絡。バスが近くに停められなくて、町外れの大きな駐車場まで来てほしいって。先生に園児たちを引率して連れてきてほしいんだってさ」
「ええっ、そうなんだ……。わかった! 先生がみんなをちゃんと連れて行くね♪」
みゆきは全裸のまま、薬でふわふわした頭で頷いた。おじさんたちは「忘れちゃいけないよ」と言いながら、持っていた太いマーカーでみゆきの身体に大きく文字を書き始めた。胸の大きな谷間に【佐藤 みゆき】
お腹の上部に【23歳】
背中に【住所:東京都○○区△△町□□-□□】
尻の片方に【TEL:090-XXXX-XXXX】
太もも前面にも電話番号と「星の家保育園 研修中」と大きく書かれた。
「これが先生のネームプレートだよ。道に迷わないように、みんなに見えるように書いておくね」
「へえ~、親切なんだね。ありがとう! 先生、ちゃんと名前が見えるように歩くね」
おじさんたちは自分たちは普通のTシャツとズボンに着替え、普通のおじさんグループの姿になった。
一方、みゆきは文字だらけの全裸のまま、首にだけ名札を付けられた状態で町中を歩かされることになった。夕暮れの住宅街と商店街を抜ける道のり。みゆきは笑顔で園児たち(おじさんたち)の手を引いて先頭を歩く。通行人たちの視線が一斉に突き刺さる。
「うわ……全裸の女が……体中に文字が……」
「佐藤みゆき、23歳……住所と電話番号まで書いてある……」
スマホで撮影する人、呆然と立ち止まる人、怒鳴る人。みゆきはそれらをすべて「遠足の様子を見に来てくれた優しい人たち」だと思い、にこにこ手を振った。
「こんにちは~! 星の家保育園です! 今日は遠足から帰るところなんです♪ 園児のみんな、とってもいい子にしてくれました!」
約40分かけて町外れの駐車場へと到着した。駐車場に停まっているマイクロバスを見つけると、運転手のおじさんが笑顔で言った。
「先生、お疲れ様。バス、外側が結構汚れちゃったから掃除しておいてくれる? みんなで中で待ってるよ」
「うん、わかった! 先生がきれいきれいにするね♪」
おじさんたちが全員バスの中に乗り込み、ドアを閉めた。みゆきはバスの外に一人残され、スポンジとバケツを手渡された。彼女は文字だらけの全裸のまま、バス外壁にこびりついた泥や白い染みを洗い始めた。すると、運転席の窓から園長の麗子が用意させたペットボトルが差し出された。これにはみゆきが飲まされている薬の解毒剤と、悪意が込められていた。
「園長先生からの差し入れ。疲れたでしょ、飲んで」
「ありがとうございます!」
みゆきはごくごく飲み干した。掃除を続けながら、薬の影響が弱まり、徐々に頭がすっきりし始める。視界がはっきりしてくる。自分の手、スポンジ、バス……そして自分の身体にでかでかと書かれた文字。胸の【佐藤 みゆき】、腹の【23歳】、太ももの電話番号……。
「……え?」
みゆきは自分の裸体を見下ろし、凍りついた。全裸。
体中に個人情報。
夕暮れの駐車場。
周囲に数人の野次馬がスマホを向けている。
「う、うそ……何これ……? 私……何してたの……?」
記憶が一気に蘇る。
運動場での公開行為、バスの中、森での虫たち、川での練り餌と魚の群れ……すべてが現実だった。その瞬間——バスがエンジンをかけ、ゆっくりと動き始めた。
「ちょ、ちょっと! 待って! 開けて! 乗せてよ!!」
みゆきは慌ててバスに駆け寄り、ドアを叩いたが、ドアは固く閉ざされたままだった。窓からおじさんたちがにやにやと笑いながら手を振っている。
「先生、今日も最高だったよ! また保育園で待ってるからね~」
「いやぁぁっ! やめて! 服返して! お願い!!
」バスは容赦なく加速し、駐車場から出て行った。文字だらけの全裸のまま、個人情報と「星の家保育園 研修中」と書かれたみゆきは、夕暮れの駐車場に一人取り残された。遠くからサイレンの音が近づいてくる。みゆきは両手で胸と股間を必死に隠しながら、地面に崩れ落ち、震える声で呟いた。
「……夢じゃ、なかった……」
身体に残る感触と、肌に刻まれた自分の情報は、冷たい現実として彼女を嘲笑っていた。――こうして、佐藤みゆきの“夢のような保育士体験”は、絶望の中で幕を閉じた。
(星の家保育園編・終り)
コメント
1件
うわあ……第6話、たどり着いた結末がこんなに苦しいなんて。薬が切れて正気に戻った瞬間の「え?」からの凍りつく感覚、読んでるこっちの心臓まで止まりそうでした。体中に自分の名前や住所が書かれて、バスに置き去りにされる……「夢じゃ、なかった」の一言が重すぎる。みゆきが“幸せそうに笑ってた時間”があるからこそ、その落差が心に刺さります。この絶望の描き方が本当に巧みで、ゾッとしました。