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オレンジタイフーン
オレンジタイフーン
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肌が…ざわざわと粟立つような、異様な焦燥感に捕われつつも…楓は、今だに不安げな表情の光透波へ向けてゆっくりと話しだした。
「これから、起きることは全て手品やトリックなんかじゃなくて…本当の事だから驚かないで見ていてね…」
そう言うと…キリリとした真剣な表情になり、楓は小さな向日葵の入れ墨に生命エネルギーであるオーラを集中させて念神体を呼び出したのであった。
「咲き誇れ…私の魂よ!!」
光透波の視界で繰り広げられていたもの…それは現実感に乏しく、信じられないような光景だった。
常識はずれな光景ではあるのだが…ライトアップされたムード満点な公園の噴水みたいに、光の粒子がこんこんと入れ墨から溢れだしてきさたかと思うと……
クラッカーのような小さな炸裂音と共に…奇妙で珍妙な動物がフヨフヨと楓の目の前に浮かんでいるではないか!?
『ん~…ヒヤッホ~ィッ!!
へへ…ひっさしぶりだなぁ~ッ…
グルルル~ッ…元気にしてたか、楓ぇ~ッ!!』
光の中から現われた…それは、ファンシーなぬいぐるみチックで小型犬くらいの大きさであった。
そのぬいぐるみには…百獣の王者の気高さを感じさせる立派なライオンのたてがみにも見える向日葵の花弁が付いていたのであった。
たてがみの向日葵は…目にも鮮やかな清々しい黄色をしていた。
きっと夏の青空に映えるであろうと思える色合いの向日葵である。
植物の蔓や蘿や茎を丁寧に三つ編みにしている繊細な尻尾は花飾りを連想させる。
そして、その先端にはタンポポみたいに…フワフワとした黄色の花が楽しそうに咲いているのである。
何かを思い出すかのように…じ~~~~~っと視線を向ける楓が………
「ええ…そうね…
とっても…ひさしぶりね…
うふふ…」
楓は懐かしそうに声を掛ける…
楓は…正直、内心…こんなのだったかしらと、ちょっとショックだったらしい。
記憶の中の乙女心には…もっとキュンキュンした可愛らしいイメージだったが、ちょっぴり夏休みに作られた自由研究のような不細工な現実補正があったようなのだ。
鳩が豆鉄砲でも食らったかの様子で…
……………………………………………………………⁉︎
パチクリと瞳をしぱたたせながら、姉と未知なる謎の生命体との会話にポッカ~ンと釘付けにされる光透波は…と言うと………
………………………ッ!!!?
「え〜〜〜…………………………………はわわわわわッ…!!!?
あううぅぅ~……………
しゃ…しゃ、しゃべってるよぅッ!?
な…な、な、な、何よ!
何なの…これぇェ~…………………ッ!?」
…それもそうだ、やはり、驚くなと言われるほうが不自然であり無理であろう。
逆に驚かない人間は失神しているのだろうといったような光景なのである。
その奇怪なぬいぐるみは碁石ようなピカピカしている綺麗で真ん丸な黒目で…こちらを豆柴みたいなキュートでツヤツヤな眼差しで見つめているのであった…
困った事に…いやに愛らしいのが、しゃくに触るのではあるが…
キュ~ッと抱きしめたいくらいにブサ可愛いのは紛れもない事実であり…そのことが光透波を、より一層…悩ませる事になる。
なぜなら…普段は男勝りなくらいに快活で、ボーイッシュかつクールなイメージのカッコイイ彼女にも秘密にしている趣味があった。
絶対にバレたくない趣味…そのひとつが可愛いらしいキュートでファンシーでラブリーな多種多様…様々なキャラクターグッズとぬいぐるみを集める事だからなのであった。
プライズ限定やプレミア当選品にまで及ぶ、ご自慢のコレクションだった。
『へぇ~~ッ…ほ~ぅッ!!
物凄いリアクションで…ビックリしているって事は、オレっちの事がみえているって事だよな!?
この…このぅッ………』
少しばかり日焼けした小麦色な光透波の頬をペチペチッと…ぷにぷにで…ぽよんぽよんな柔らかい肉球の前足で叩きながら、ぬいぐるみらしき生命体は声を掛けてくるのだった。
そんな彼に…釘を刺すように、楓は言うのであった。
「ガゥ!!…あまり光透波を驚かさないであげてね。」
『ガゥゥゥ~ッ!
ごめん…ごめんな、そんなつもりは…これっぽっちも無かったんだが驚かしちまったみたいだな…』
ポリポリと…頭をばつが悪そうに掻きながら反省するガゥであった。
「あ…あのね、光透波………
詳しく…紹介も説明もしていられる暇も時間も無いの…
…でも、でもね、安心してお姉ちゃんは今まで通りに…あなたのお姉ちゃんのままなんだから…」
少しでも不安を取り除けるようにと優しくも力強い口調で語り掛ける楓であった。
ようやく…念神体としての勘を取り戻したガゥは、何かしらの一大事を察知したようで慌てて話し掛けてくるのだった。
「な…オイオイ、楓ぇッ!
てかさ、てかさ、…………………………………
何だか、ヤベェ~事になってるみたいだぜぇ………
これってばさ、カゲゾ~じいちゃんのオーラが弱くなっているぞ…
このままじゃ…泣き虫の蝶のヤツもマジで消えちゃうぜ…」
その一言で…今まで感じていた不安が確証へと変わり矢も楯もたまらずに、楓はおっとりがたなで外へと駆け出して行くのであった。
玄関には先程まで身につけていたキュートなエプロンが粗雑に投げ捨てられていた。
普段の楓ならば…洗濯前の汚れ物でさえ、折り畳むというのにである。
「ちょっと、待ってよ~!
お姉ちゃ~ん~~ッ!」
訳も解らずに…もたつきながらスニーカーを履くと楓の後を追う光透波であった。
今は…ただ、彼女達が闇に魅入られつつある影人を救い出す光となる事を祈るばかりである。