涼太「…ん……朝?」
時計を見れば朝の5時半。またも早く起きてしまった。今日は水曜日、翔太くんは今日も仕事があるのだろうか。そう思い横を見る。でも彼の姿はない。
涼太「?リビング…?」
ガチャッ
涼太「ヒョコッ」
ソファに座って何かをしている翔太くんの姿。カタカタと音がするのはパソコンのようだ。何かの仕事をしているようにも見えるが、画面は見えない。
涼太「……しょーたくん」
翔太「っ!涼太?どーしたのこんな時間に…まだ寝ててよかったんだよ?」 パタンッ…
涼太「起きちゃったの……何かしてるんですか?」
翔太「うん…“あっち”の会社の方でね?ちょっとトラブルあって笑」
涼太「…そっか」 テクテクッ…
チョコンッ
翔太「え……涼太…?」
涼太「ん……スリスリッ…」
俺は翔太くんを元気づけたくて、あぐらをかいている翔太の足の間にスポッと座った。それだけじゃない…何故か…翔太くんに触れていたくて、頭を彼の胸元ら辺で擦り付ける。
翔太「……どーしたの…甘えたさん…?」
涼太「…分かんない……でも翔太くんに触れてたい、元気になってほしい…」 キュッ
俺は翔太くんの服を少しだけ摘んで引っ張り、脚を抱え込んで体重をかける。これは端から見たら彼女が彼氏に甘えているような構図だろう。でもそんなのどうでもいい。
翔太「よしよし……可愛いね」
涼太「…これって“甘えん坊”…?」
翔太「ふふっ笑 “甘える”って行動だね笑」
涼太「翔太くんは嫌い…?」
翔太「ううん…涼太なら何でも愛すよ…」 チュッ
翔太くんは俺のおでこに口付けをした。急なことで驚きが隠せない。
涼太「っ!……プルプルッ…」
翔太「!ごめん…キスは早かったね…」
違う…ちがう……キスは怖い…だって俺は無理矢理にされていたから…でも翔太くんのキスは違う。俺の事を大事に、愛してくてれているキスだから。あの人とは違うあたたかいキスだから…
涼太「……嬉しい……」
翔太「…え?」
涼太「……あの人みたいな…キスじゃないんだもんっ…俺を本当に愛してくれてるキスなんだもん…!」
翔太「…あの人?」
涼太「?……っ!」 バッ!(口塞
そうだ、翔太くんにはまだ話していない。俺の過去を。俺が子供を産める身体だって知ったら絶対に引かれる…だから言うつもりはなかったのに…嬉しくて、嫌じゃなかったって否定したくて、口を滑らせてしまった。
涼太「……っ」
翔太「…涼太っ、ゆっくりでいいから…」
「教えてくれますか?」
あぁ…もうこれは言わなくてはならない。絶対引くだろうな。男で妊娠だなんて。世の中では一般的かもしれないが個々のメンタルの話は別だ。嫌だな…言いたくないな……
涼太「……っやだ……」
翔太「っ…どうして?」
俺は今出せる精一杯の声で拒絶した。翔太くんの理想の俺でいたいから、今の俺を愛してほしいから……
翔太「…大丈夫、言ったろ?俺はどんな涼太でも愛すよって…信じて」
涼太「っ……あの……ね…」
怖かった。でも全部聞いてくれた。話を聞いてくれている時、翔太くんは俺をずっと抱きしめてくれていた。翔太くんは引かなかった、けなさなかった。これだけでもオレの心は救われた。
涼太「……キュッ…」
翔太「大丈夫だよ〜怖くないよ〜…」
涼太「…グスッ……おれのこと…まだすき…?」
翔太「当たり前、大好きだよ」
涼太「……ありがと…」
受け止めてくれた翔太くんに、俺の忘れていた感情が少しだけ動いた。
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