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正式異動の返事まで、あと三日。
照は答えを出せずにいた。
本社に残れば、やりたい仕事ができる。
支社へ戻れば、辰哉との約束を守れる。
どちらを選んでも、何かを手放すことになる気がしていた。
────────
支社。
辰哉は資料をまとめながら、大きく伸びをした。
🧡「深澤さん」
💜「ん?」
🧡「最近ぼーっとしとること増えたな」
💜「そんなことないよ」
🧡「あるある」
康二は椅子に座りながら笑う。
🧡「照にぃのこと考えとる?」
辰哉は苦笑した。
💜「隠す気なくなってきた?」
🧡「俺には最初からバレとる」
辰哉は肩をすくめる。
💜「ちょっとだけね」
🧡「正式異動の話やろ?」
辰哉は驚いて顔を上げた。
💜「なんで知ってるの?」
🧡「照にぃから聞いた」
💜「そっか」
康二は少し真面目な表情になる。
🧡「照にぃな」
🧡「めっちゃ悩んどるで」
💜「……うん」
🧡「でも」
🧡「深澤さんのせいちゃうからな」
その言葉に、辰哉は静かに頷いた。
────────
その日の夜。
照は一人、本社のオフィスに残っていた。
資料を閉じても、答えは出ない。
デスクの引き出しを開ける。
そこには、辰哉と撮った写真が一枚。
先日、公園で撮ったものを印刷して入れていた。
💛「……」
思わず笑みがこぼれる。
その時、ノックの音がした。
「失礼します」
入ってきたのは、本社の部長だった。
「まだいたのか」
💛「少し考え事を」
部長は照の向かいに座る。
「返事のことか?」
💛「はい」
部長は静かに頷いた。
「一つだけ聞く」
「君は何のために働いてる?」
照は少し考える。
昇進。
責任。
やりがい。
いろんな言葉が浮かぶ。
でも最後に残ったのは、たった一つだった。
💛「大切な人と」
💛「笑って過ごすためです」
部長は少しだけ目を細めた。
「それが答えなんじゃないか」
それだけ言うと、部屋を出ていった。
────────
帰宅後。
照はベランダで夜空を見上げる。
スマホが鳴る。
ビデオ通話。
画面には辰哉が映っていた。
💜「寝る前に顔見たくなった」
💛「俺も」
少し他愛ない話をする。
今日食べたご飯。
仕事であった出来事。
笑い合う時間。
ふと辰哉が言った。
💜「照」
💛「ん?」
💜「どっちを選んでも」
💜「俺は照を応援する」
💛「……」
💜「だから、一人で背負わないで」
照は小さく笑った。
💛「ありがとう」
その瞬間だった。
照の中で、少しずつ答えが形になり始める。
何を選びたいのか。
何を守りたいのか。
もう迷いは、以前ほど大きくなかった。
コメント
2件
ぶちょおぉぉぉぉ! 良いこと言うなぁ😭
第27話、読み終えました。 照が「大切な人と笑って過ごすため」と答えを出すシーン、すごく心に響きました。どちらを選んでも何かを手放すことになる…その不安を抱えながらも、最後に辰哉くんが「一人で背負わないで」って言ってくれるところ、優しさが溢れててじんわりしました。 引き出しの写真とか、他愛ないビデオ通話とか、日常の積み重ねがすごく温かくて。迷いながらも少しずつ答えを見つけていく照の姿に、私もそっと背中を押してもらえた気がします。次も楽しみにしてますね🌷