テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
かつて私が家計簿の端に書き留めていた
「いつか、すべてを返してやる」という血の滲むような誓い。
それが今日、法廷という名の精算所で現実のものとなる。
「……詩織さん、準備はいいですか?」
九条さんの隠し子であり、今は私の強力な共闘者となった青年が、静かに声をかけてくる。
私は無言で頷き、法廷の扉を開けた。
そこには、異様な光景が広がっていた。
拘置所生活で骨と皮ばかりになった直樹
再逮捕を繰り返され、かつての威厳を失い、保身のために周囲を睨みつける高木
そして、車椅子に揺られながらも、まだその瞳に狡猾な光を宿している九条
10年前、父を追い込み
私を檻に入れ、私の人生をオークションにかけた三人の男たちが、今、被告席に並んでいる。
裁判が始まると、彼らは醜い責任のなすりつけ合いを始めた。
「私は九条に指示されただけだ!」と叫ぶ高木。
「詩織の実家を潰す計画を立てたのは直樹だ!」と喚く九条。
そして直樹は、うつむいたまま
「俺は……家族のためにやったんだ……」と、聞き飽きた嘘を吐き続けている。
私は、証言台に立った。
アクリル板越しに彼らを見据える。
かつては彼らの視線一つで心臓が止まりそうになっていたのに
今はもう、一円の価値もないゴミクズを見ているような、冷徹な心地だった。
「裁判長。…彼らが語っているのは、すべて『架空の帳簿』です。……私が今日ここに持ってきたのは、10年間、一分一秒も休まずに記録し続けた、彼らの罪の『実効レート』です」
私は、九条のペーパーカンパニーから
直樹の横領、高木の背任までを一つに繋ぎ合わせた「真実の連結決算書」を提出した。
それは、彼らがひた隠しにしてきた悪意の連鎖。
直樹が私を支配し、高木が直樹を使い、九条がそのすべてを飲み込む。
その構造を、私は数字という「嘘のつけない言語」で、完膚なきまでに証明していった。
「直樹。……あなたが私を『節約妻』としていた間に、私が本当に貯めていたのは、お金じゃない。…あなたたちを地獄へ送るための、揺るぎない証拠よ」
直樹が、絶望に顔を歪める。
高木が、震える手で顔を覆う。
九条だけが、不気味に口角を上げた。
「……詩織、お前は……最高だ。…俺の作った、最高の『負債』だ」
「いいえ。……私はもう、あなたの負債ですらない。……私は、あなたたちの人生を『完済』させる執行人よ」
裁判長が木槌を打つ音が、法廷に響き渡る。
三人の罪が、一つずつ、正確に計上されていく。
法廷を出ると、そこには青い空が広がっていた。
陽太が、私の元へ駆け寄ってくる。
「ママ! 終わった?」
「うん、大きな計算はこれですべて終わったわ」
私は陽太を抱きしめた。
でも、彼らを檻に送るだけでは足りない。
彼らが壊したすべてのものを、一円単位で修復し、私の「本当の再生」を完了させるまで。
【残り53日】
#ヒトコワ
#仕事
#裏切り
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!