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※ ケーキバース
「はい、どうぞ。」
「わーいやった」
とあるマンションの一室、配信者であるなかむの部屋に同じく配信者のらっだぁは居た。雪がしんしんと降り積もる外から来たため、指先や頬を紅に染めたらっだぁを気遣い、なかむは久しく作っていなかったホットミルクを作りらっだぁに手渡した。相変わらず無臭のソレは赤く染まった指先を通って想い人の手の中に収まると、大切なものを持つように握られる。
なかむはフォークである。とある時に突然味覚を失い、その後は愛してやまなかった甘味さえ口には入れていない。生きるための最低限の食べ物しか飲み込んでこなかった。
「あったけ〜」
喉仏が上下するのを繰り返しながら砂糖を混ぜた白い液体は想い人の口へ消えていく。最後の一滴まで残さず消えたことを確認したなかむはソファに座ったらっだぁからカップを受け取ろうと手を伸ばした。
「なかむ、ありがとね」
「はい、ッてあっ!」
受け取ろうとした時だった。白いカップは無慈悲にも2人の手の間を滑り落ちていく。2人が空中でキャッチする間もなく、カップはフローリングに引っ張られるように床へ向かう。陶器を割った特徴的な音が響いた時には、2人の足元にはガラクタと化したカップが落ちていた。
「あ、ごめん!」
らっだぁがソファから降り、大きめの破片に手を伸ばした時だった。同じく破片を広い、盆に集めていたなかむを甘い匂いが包み込む。
久しく感じることのなかった甘い香りになかむは疑問符を浮かべる。普通ならば酷く甘ったるく感じるその香りは、なかむの脳に大好物の姿を作り始めた。
(これは……ケーキ?それも凄く甘いやつ…)
夢中で香りを探るなかむの頭の中に多々な種類の甘味が浮かび上がる。その度になかむの唾液腺を刺激し、溢れ出てきた唾液が嚥下するのを忘れた口から垂れ、形のいい顎に伝う。それに気づかずなかむの体はガラクタを手に持ったまま静止していて時折、目や鼻が小さく動くだけだ。
「いっった…」
「……っあ」
らっだぁの声で空想の中から戻されたなかむはガラクタに向けていた視線を青へと向けた。その時だった。なかむの体に強い電流が走り、理性が壊れていく音が聞こえてくる。
「らっ、だぁ…さん……それ……」
「ちょっと切っちゃったみたい」
なかむが目にしたものは赤い血が出ているらっだぁの白い指だった。白に赤というひどく映える組み合わせ以外に普通の人にとってなんの変哲もないソレはなかむの視線を釘付けにした。
なかむにとってその赤い血からは鉄の臭いは感じられず、ただ甘ったるい香りが鼻腔に入ってくる。目の前の想い人を文字どうり食べたいという逆らえがたい欲に従うようになかむはらっだぁをソファの上に押し倒した。
「ッえ……?」
「らっだぁさん…ごめんなさい」
赤が垂れる白い指を取り迷わず口の中に入れる。すぐさま広がった酔いそうな甘さを堪能しながららっだぁ首元のボタンとマフラーを外していく。この行為は全て本能によるものだった。
(これは、、、シロップ漬けのいちご、かな)
なかむに理性はもう残っていなかった。原動力となっている食欲とそれにつられて出てきたのか突如姿を現した性欲に身を任せ、生まれたままの姿になったらっだぁの肩に噛み付いた。
「ッッんぅ、い”ッッ!!!」
赤いシロップが垂れる白を夢中で舐め取るその姿はまるで血に飢えた吸血鬼のようにも見える。必死に嫌がるらっだぁの言葉は耳に入らないのか、頬を赤く染めて口内を甘味で満たした。
「あ、これもおいしい」
らっだぁの頬を伝う涙を視界にとらえたなかむはそれに引かれるように涙を舐めとった。恐怖から止まることの無い優しい甘さの涙を舐め取りながら次に向かったのは赤い舌が覗く口内だった。
「んフっ…んっ……」
酷く甘い味をした唾液は飽きるような味ではなく、複雑な甘さが絡み合ったようなものでいつまでも楽しめる味だった。そのため、時を忘れ口内にがっついていれば段々とらっだぁの抵抗は弱くなり次第に抵抗が無くなった。
苦労して抑えていた抵抗が無くなったことを不思議に思いながら口を離せば、気を失っているらっだぁが目に入った。
Σ
部屋に響く水音と肌がぶつかり合う音でらっだぁは目を開いたその刹那らっだぁの全身に抗えない快楽が降り掛かってくる。
「ッッひ”ぅ”ぁあ”あ”ァッッ♡♡♡!!」
悲鳴にも近い声をあげたらっだぁの薄い腰をがっしりと掴んだなかむはそのまま腰を振り腸壁が外に出て視認できるほどの激しいピストンを繰り返す。その都度溢れ出てくる涙や精、そして潮という体液はなかむによって舐め取られる。その事実がさらにらっだぁの羞恥を煽った。
「んぃ”い”い”ぃ♡♡!?なかっもう”ッ”や”め”っ”♡!?!い”た”っい”た”ぃ”ぃ”ぃ”♡♡!!」
らっだぁの静止の言葉を遮るようになかむはその白い太ももに思い切り噛み付いた。肉を引きちぎるようなその痛みは言葉をとめるには十分すぎるもので、らっだぁの声は準備に叫び声へと変貌を遂げた。
数え切れないほどの噛み跡や所有印が刻まれているらっだぁの体からは犯され始めてから今に至るまで多量な血液を流し、失った。そのため貧血によってらっだぁの意識は沈み、自身も抵抗をせずに意識を飛ばした。
そして次の日の朝。小さな窓の外には水色の空に雲が浮かんでおり、微かに昼の雰囲気を醸し出している。
「僕と、付き合ってください」
気絶とも言える睡眠から起きたらっだぁを介抱していたなかむは意を決したようにその言葉を発した。
その言葉を聞いたらっだぁの心境に浮かび上がったのは怒りでも悲しみでもなく動揺だった。既に決まっている次の言葉を音にすることに戸惑い、それが内側からの痛みを引き出してくるような錯覚に陥りながららっだぁは音を発する。
「……ごめんね」
いくら強姦まがいのことをされたとて大切な後輩であるなかむを傷つけたくないがために選んだその一言は、なかむの表情を大きく変えた訳では無かった。浮かべた笑顔が少し悲しそうに歪んだのみで、なかむにとっては簡単に予想可能な未来だった。
2人だけの部屋で静寂が走る。防音室に備え付けられた分厚いFIX窓の外では小柄な鳥が楽しげに鳴いている。