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🌸第14話 胸のざわつき
昼休みの食堂は、いつもより少し混んでいた。
ざわざわとした声、食器の触れ合う音、
揚げ物の匂い、スープの湯気。
ひよりはトレイを持って、
人の少ない隅の席を探した。
(……あ、空いてる)
そっと腰を下ろし、
小さく息をついて箸を手に取る。
一人で食べるのは慣れている。
でも、今日は胸の奥が少しざわついていた。
(陽くん、今日はゼミ長引くって言ってたな……)
そのときだった。
「ここ空いてる?」「おー、座ろうぜ」
数人の男子が、
すぐ近くの席に笑いながらやってきた。
気にしないようにしていた。
でも──
その中の一人がふっと笑った瞬間、
胸の奥が ずきっ と痛んだ。
(……え?)
箸を持つ手が止まる。
ひよりは思わず顔を上げそうになったが、
ぎゅっと視線をテーブルに戻した。
知らない顔。
でも、どこかで見たような笑い方。
胸の奥がざわざわして、
息が少しだけ浅くなる。
(……苦しい)
(なんで……?
誰……?)
思い出そうとすると、
胸の奥がきゅっと締めつけられる。。
指先がわずかに震えている。
(なんで……こんな……)
そのとき。
「ひよりー、ここ座っていい?」
明るい声が、
ひよりの胸のざわつきを一瞬で溶かした。
顔を上げると、陽がトレイを持って立っていた。
「あ……うん」
陽が向かいに座ると、
さっきまでの痛みが嘘みたいに静まっていく。
「今日の授業、マジで眠かったんだけど」
陽はいつも通りの調子で話し始める。
ひよりも自然と笑ってしまう。
(……なんでだろう)
(陽くんといると、落ち着く)
さっきの胸の痛みは、
もう遠くに霞んでいった。