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#不思議の国のアリス
ぴのん
168
149
#ごほんにんさまとはかんけーありません
ぼたん
49
#ドズル社
警報が鳴り響く。
窓の外には、武装した騎士たちが近づいている。
魔法陣が幾重にも展開され、空には飛行魔導兵器まで浮かんでいる。
「討伐対象、偽英雄五名!!」
「偽英雄を討て!!」
怒号が屋敷を包む。
英雄だったころは、考えたこともなかった光景。
「行くしかない…よね。」
僕は扉を開ける。
その瞬間、無数の魔法が降り注いだ。
炎。
氷。
雷。
土。
色とりどりの魔法が夜空を埋め尽くす。
「遅い…!」
僕は剣を抜き、一歩踏み出した。
土埃が舞う。
赤い魔法陣が足元に広がる。
振るった剣圧だけで炎が裂け、雷が霧散する。
英雄だった頃に培った技は、今も衰えてはいない。
騎士たちが一斉に飛び込んでくる。
その横から。
「はぁ〜あ…舐めすぎだろ。」
ぼんさんがふらりと前へ出る。
足元に紫色の魔法陣がゆっくりと展開される。
地面が揺れた。
石畳がせり上がり、壁となって騎士たちの進路を塞ぐ。
「革命ってのはさ。」
ぼんさんは肩をすくめる。
「力任せじゃ続かねぇんだよ。」
指を鳴らす。
パチン。
壁が崩れ、砕けた石が兵士たちの足元だけを正確に流した。
倒れる者はいても、命は奪わない。
その戦い方は、今も優しさが滲んでいる。
「はい。俺の仕事は終〜わり。」
そう言って、手をひらりとして一歩下がった。
「よしっ! 次は俺!」
MENが満面の笑みで空に飛び上がる。
腕には見たこともない機械。
背中の装置が唸りを上げる。
「試作品ニ十七号!」
ガシャン、と音を立てる。
一瞬で腕部が変形し、巨大な魔導砲へ変わる。
「いっけぇぇぇ!」
放たれた光弾は騎士たちの目の前で炸裂し、強烈な衝撃だけを生み出した。
吹き飛ばされる騎士。
煙の中をMENが笑いながら駆け抜ける。
機械のワイヤーが飛び出し、相手の武器を絡め取る。
靴底から噴射した魔力で空中を跳び回る。
「発明はさあ!」
叫ぶ。
「無限大なんだよ」
「人を幸せにするためのものだから」
最後の一言だけ、少し寂しそうに。
後方では、おらふくんが静かに両手を合わせる。
淡い水色の魔法陣。
柔らかな光が仲間を包み込む。
「ドズルさん、左肩。」
「ぼんさんは…腕。」
「MEN、かすり傷が。」
小さく呟きながら祈る。
優しい光が力を支え、裂けた服の下の傷跡まで癒していく。
戦場とは思えないほど穏やかな笑顔。
おらふくんは誰かを倒すためではなく。
誰かを守るために立っている。
それはきっと昔からそうなんだろう。
そして。
「おんりー!」
僕が声を掛ける。
返事はない。
いや。
もう敵陣の真ん中にいた。
黒い手袋をはめた拳。
剣も持たない。
槍もいらない。
魔法だけを纏わせた拳が、一人の騎士の剣を横から弾き飛ばす。
ガンッ!
鈍い衝撃音。
その勢いのまま身体を半歩ずらし、別の騎士の懐へ滑り込む。
拳が放たれる。
吹き飛んでいく。
騎士はそのまま意識を失い、崩れ落ちた。
次の一人。
その次の一人と。
おんりーは流れるように戦場を歩く。
力任せの戦いではなく。
風に乗る葉のように。
ひらりと舞う蝶のように。
相手の力を避け、躱し、気づけば懐へ入り込んでいる。
焦りもない。
怒りもなく。
ただ静かに。
淡々と。
「危ないですよ。」
そう笑って。
迫る魔法を身体をひねるだけで避ける。
拳が騎士の胸元に触れる。
軽く押しただけに見えた。
それなのに兵士は数メートル後ろまで吹き飛ぶ。
誰一人、命は奪わない。
それでも誰も、おんりーを止められない。
彼は戦場の中でも、いつもの笑顔を浮かべたままだった。
その姿を見ていると、時々分からなくなる。
あの穏やかな青年と。
今、敵を次々と無力化している目の前の人は、本当に同一人物なのだろうか。
その笑顔の裏に何を隠しているのか。
きっと、本人にしか分からない。
けれど一つだけ確かなことがある。
五人が並んで戦う時。
かつて世界を救った力は、今なお健在だった。
だからこそ。
世界は僕らを、恐れていた。
戦場は静まり返っていた。
倒れている騎士たち。
砕けた石畳。
魔法の残滓だけが、夜風に揺れている。
「……終わったね。」
剣を下ろそうとした、その時だった。
「、だん、ちょう…、…?」
かすれた声が聞こえた。
胸が、嫌な音を立てる。
倒れていた一人の騎士が、ゆっくりと身体を起こしていた。
その鎧。
その紋章。
その剣。
見間違えるはずがない。
「…第二、騎士団……っ?。」
思わず声が漏れる。
僕が、かつて所属していた騎士団だった。
共に剣を振るい。
共に笑い。
命を預け合った仲間たち。
彼らも僕を見つめる。
目を見開き。
苦しそうに唇を震わせていた。
「本当に、っドズル、団長だったんですね…。」
団長。
その呼び方だけは、昔と変わらなかった。
「どうして…?」
僕の口から零れたのは、その一言だけだった。
「どうして、君たちが……。」
騎士は苦しそうに笑う。
「命令…でした。」
「王命、です。」
その瞬間。
頭の中で、何かが音を立てて崩れた。
「偽英雄……5人を討伐せよ、と。」
王命。
その二文字だけで十分だった。
今まで、どこかで信じていた。
きっと噂が独り歩きしただけなんだ、と。
民が恐怖に流されただけなんだ、と。
国は違う。
王は違う。
きっと誤解しているだけ。
いつか話せば分かる。
そんな希望が。
まだ、ほんの少しだけ残っていた。
でも。
違った。
騎士は震える声で続ける。
「王は……。」
「あなた方を…もう国には必要ない、と。」
必要ない。
その言葉が、胸に深く突き刺さる。
僕たちは。
世界を守った。
何度も。
何度も。
命を懸けて。
それぞれ違う方法だけど。
この国のために。
この人たちのために。
それなのに。
国は。
僕たちを。
“不要”だと判断した。
「…そう、なんだ」
それしか言えなかった。
怒りも。
悲しみも。
もう言葉にならない。
ただ、胸の奥が空っぽになっていく。
横を見る。
おんりーは静かに立っていた。
笑っている。
いつも通りの、穏やかな笑顔。
だけど。
その表情は少しも驚いていなかった。
まるで。
最初から知っていたかのように。
「……おんりー。」
彼は僕へ視線を向ける。
「はい?」
優しい声。
優しい笑顔。
僕はその顔を見て、ようやく気付いた。
もうずっと前に理解していたんだって。
世界だけじゃない。
民だけじゃない。
国も。
王も。
最初から僕たちを切り捨てるつもりだったことを。
だから、あの日。
あんなにも静かに、僕へ手を差し伸べられたんだ。
絶望を知っていたから。
同じ景色をもっと早くに見ていたから。
騎士は最後に、小さく頭を下げた。
「…申し訳、ありません。」
その謝罪は、僕ではなく。
かつて憧れた英雄へ向けたものだったのかもしれない。
僕は剣を鞘へ納める。
もう、この人たちを責める気にはなれなかった。
命令に従っただけ。
昔の僕だって、きっと同じことをしていた。
悪いのは彼らじゃない。
もっと上だ。
もっと、ずっと上にいる。
僕たちを英雄に祭り上げ。
役目を終えた瞬間に切り捨てた者たち。
静かな夜の中、おんりーが一歩前へ出る。
その笑顔は崩れない。
「ドズルさん、みんな」
穏やかに僕を呼ぶ。
「帰りましょう。」
前は、帰る場所なんてどこにもなかった。
それでも今の僕には、帰る場所が一つだけあった。
黒いスーツをまとった四人と過ごす場所。
世界から見捨てられた者たちの居場所。
ドズル社だけが、僕たちの「国」だった。
その日の夜、食卓を囲みながら、何気なく聞いた。
「そういえばさ。」
みんながこちらを見る。
「みんな、有名だったけど、何してたの?」
「僕、戦ってばっかりで知らなくて……ごめん。」
そう言うと。
ぼんさんが深く椅子へもたれかかった。
「俺は革命運動だなー。」
煙草の煙がふわりと漂うのを見ながら話し始める。
「国の重い税とか。」
ぼーっと考えながら。
「労働者が詰められて、潰される世の中だったから。」
「苦しんでる人が多くて、 救いたいって思った。」
少し遠くを見る。
「ある日、急に新聞に載って。 そこから一気に広まって…」
「革命家って呼ばれるようになった。」
とても、嬉しそうに呟く。
「そんな感じ。」
「へぇ……。」
僕が感心していると 今度はMENが笑った。
「俺は 子供の頃から発明ばっかりしてました。」
みんな尊敬の表情を浮かべる。
「でも 全然認めてもらえなくて。」
肩をすくめて飄々とした顔を作る。
「変な物ばっか作るやつって言われてました。」
みんなが小さく笑う。
「だけど知らない人が、 俺の技術を採用してくれたんです。」
きらきら輝いている目。
その時、とても喜んでいたのが伝わる表情
「そこからですね。 一気に広まったのは。」
次は、おらふくんだった。
「僕は。」
穏やかに笑う。
「教会で聖者をやってました。」
「珍しい光魔法持ちだったから、癒し手として働いてたんです。」
でも、その笑顔は少し寂しくなる。
「教会って… 癒すにも高いお金を取るんです。」
「それが嫌で、 僕は教会を辞めました。」
真っ直ぐ前を見つめる。
「孤児院兼教会を 自分で作ろうって思ったんです。」
「最初は募金も全然集まらなかったけど、 ある日 急に莫大なお金が入って。」
「そこから世間にも広まって。」
「完成した時には、国一番の大きさと呼ばれるくらいのものを作ることができました。」
「すごいなぁ。」
そう言い、僕は続ける
「僕は 騎士として頑張ってたんだ。」
思い出しながら話す。
「最初は下っ端だったけど 毎日鍛錬して。」
「団長になって…。」
騎士の訓練は厳しかった。
「そこからかな。 次期英雄候補って言われるようになったのは。」
少し笑う。
「けど なかなか英雄にはなれなかったんだけど…… ある日、急に推薦?みたいなのが来て。」
候補になってからが長かったけど。
「英雄になることができた。」
懐かしいな、と笑う。
最後に。
全員の視線がおんりーへ向いた。
「おんりーは?」
突然話を振られたおんりーは少し目見開いて少し驚く。
「俺は……。」
珍しく口ごもる。
沈黙が流れた。
それから。
少しだけ笑った。
「誰かに。 認められたかったんです。」
静かな声だった。
「誰にも知られないまま 死にたくなかった。」
その言葉に。
部屋が静まり返る。
きっと、みんな根本にある思いは一緒だ。
おんりーは柔らかく笑ったまま続ける。
「ただ。 人のためになりたかっただけなんです。」
その笑顔は。
いつも通りだけど今までよりも自然な笑顔。
MENが明るく口を開く。
「みんな。 子供の頃から、それが夢だったんすか?」
「んー?」
僕は首を傾げる。
「どうだったかな。」
少し考えてから笑う。
「最初は騎士もあったけど。」
「大魔導士!」
「超越者!」
「王様!」
「そんな子供みたいな夢ばっかりだったような……。」
みんなが吹き出した。
「ドズルさんらしい。」
ぼんさんが笑い。
おらふくんもくすくすと肩を揺らす。
「そういえば。」
おらふくんが首を傾げた。
「さっきドズルさんが言ってた。」
「超越者とか、大魔導士って……何です?」
「え……。」
思わず声が漏れる。
「知らないの……!?」
おらふくんはきょとんとしている。
MENも首を横に振った。
「初めて聞いた。」
ぼんさんも言う。
「俺も詳しくは知らないな。」
「そうなんだ…。」
僕は当たり前のように聞いた言葉だったから、少し驚いてしまう。
すると、おらふくんがもう一つ質問した。
「魔法使いと魔導士って、何が違うんですか?」
「あー、それは俺が説明しよう!」
ぼんさんが軽く手を挙げ胸を張る。
革命家として有名だったぼんさんだけど 魔法の腕前もかなり高く評価されていた。
「魔法使いっていうのは 魔法を扱う人全体の呼び方。」
みんな興味深そうに聞いている。
「剣士とか回復士でも魔法を使えば、広い意味じゃ魔法使いだ。」
「でも。 魔導士は違う。」
煙草を灰皿に置く。
「魔法を専門に極めたやつ。」
「研究・オリジナル 魔法作成とか 魔法そのものを突き詰める人。」
「だから 戦うだけじゃ魔導士とは言われねぇ。」
「なるほど…!」
おらふくんは感心したように頷いた。
「魔法が使えたら魔法使いなんだ…!」
「じゃあ。」
MENが興味深そうに聞く。
「超越者って?」
その言葉に。
三人の視線が僕へ集まる。
「それは。」
僕は少し考えてから話し始めた。
「超越者 の力は国の未来 を左右するほどだって言われてる。英雄の上…みたいな?」
MENが感嘆の声をもらす。
「すっご…」
僕は少し笑う。
「子供の頃にさ。」
「物語みたいな感じで聞かされなかった?」
「『超越者が世界を救いました』みたいな。」
そう聞くと。
おらふくんは首を横に振る。
「聞いたことないです。」
MENも同じだった。
「俺もないですね。」
ぼんさんも肩をすくめる。
「初耳。」
「そうなんだ……。」
僕が珍しいわけじゃないと思うんだけど…
「おんりーは?」
そう聞くとおんりーは小さく首を傾げた。
「えぇー…子供の頃、英雄ごっことかしてたとき、超越者役人気だったのに、…」
みんな知らないことに驚く。
「そんなのしてたの!?」
ぼんさんが笑う。
「気になるw」
MENが、詳しく聞こうと身を乗り出す。
その輪の中で。
おんりーも、小さく笑っていた。
その何気ない時間の中でも。
先ほどの襲撃を思い出す。
すると、胸の奥で何かが重く深く根付いているかのようだった。
第3話でしたー!!!
わかりにくいところが多いですよね
考察むずいと思う!
前回の話は捉えにくかったかなぁ…
考察勢すごいし、コメント嬉しいし描いてて楽しいけどむずい…!
ハートほしい!
時系列分かりづらいと思いますが!
楽しんでくれたら幸いです
よければ、ハートコメント
よろしくお願いします!
それでは、また
コメント
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最近このアプリから離れてたから見てなかったけど何この神作?!もっと早く見たかった(T^T) みんな有名になる前に他の人のきっかけがあってから有名になってるんだな〜その人おんりーちゃんだったら嬉しいけど、どうだろう…?
相変わらずさすがすぎる🫵🏻🫵🏻 私には読解力が無さすぎて、考察できないけど((
これからスクランブルが忙しいので終わり次第考察します! ちょっと待っててください!enjoy勢なので期待はしないでくださいな