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コンコン。

「どうぞ」

木の軋む少し耳障り音を響かせながら開かれたドアからは可憐な見た目でニヤニヤした顔つきの少女が立っていた。

「大きい仕事が入りましたよヒーターさん」

「はぁ…そんな嬉しそうな言い方をするな、この街で大きな仕事がある方が良くないことなんだぞ。」

「分かってますけど私たちもうコーヒーを薄めて飲まなきゃいけないくらいカツカツなんですよ」

「君があまーいお菓子を無駄に買わなければいいんだろう」

「あれは必要経費です」

「…で、ポット、仕事の内容は?」

「あ、はい。殺人です」

「は?」

「殺人です。」

「待て待て待て、この平和な街で殺人ですか?」

「そうです。」

「ちなみに誰が?」

「中央区の花屋さんのおじいさんですね」

「あの人気な花屋さんの」

「そうですね。もはや花屋さんというより植物園のような形でしたがインフタで流行ってますからね」

「ポットも行くのかい?」

「私が行くと花が霞んでしまいます」

「なんやこいつ」

「被害者の花おじは自宅でなくなった事が判明していますが」

「ますが?」

「花おじの自宅には引き摺られた跡があり遺体は首を吊った形なのに他殺と断定されてます」

「なるほど。」

「それで犯人はまだ分かっていないのか?」

「はい、候補となる人物が数人いるのでその中から頑張って当ててください」

「クイズみたいな言い方するやん」

「ヒーターさんからしたら確実に金が貰えるクイズみたいなもんですよね」

「いーうーなー」

「すみません。では準備して現場に向かいましょう」

そう言うと彼女は自室に入って行ったので私も探偵らしくコートを着てハットを被り久方ぶりに髭を整えてネクタイをキチッと締める。気合を入れるために普段の薄いコーヒーではなくしっかりとしたコーヒーで一服しあまり吸わないがポケットのタバコとライターを揃えておく。香りを楽しみつつコーヒーを飲み終えた頃には彼女の準備も終わっていた。

「では行きましょう」

上下逆さまの世界で。

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