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午前10時、私は探偵事務所を出た。

事件が発見されたのが今朝の8時頃で被害者の名前は緑のおじさん、場所は彼の家らしい。

が、私は下町から出たので上に行く前におじさんの職場に出向こうと思う。

「緑のおじさんには家族が居ないので犯人の候補は職場に限られますかね」

「そうだね。彼のような老人を殺すにはそれなりの理由が必要だし無差別と考えるより100倍効率がいい」

「なるほど。ちなみに誇張する表現は早口オタクの鉄板ですよ」

「おだまり」

「ここの花屋さんが被害者の職場です」

「有名だから分かるよ」

「今どきのJKに人気なスポットでインフタグラムでよく投稿されてますね」

「私を流行りの分からないおじさんみたいに扱うのやめてくれ」

「ここの店員さんは被害者を除くと2人、クローバさんと雑草衛門さんです」

「レジで華やかな笑顔を振りまいてる女の子がクローバさんかな?」

「あんなの張り付いた笑顔ですよ」

「なるほど。じゃあ雑草衛門さんは…」

「俺だ。」

後ろから野太い声が聞こえた。振り返るとなぜ気づかなかったかと思うほどの巨体が肥料の入った袋をありえないくらい肩に担いでいる。

「なるほど。お2人とも事件についてはご存知ですよね?」

「当然さ。なんたってクローバさんは第一発見者だからね」

「ふむ…昨日は1日何してらしたんですか?」

「おぉ、アリバイってやつかね?俺は朝8時から16時までここで働いてから帰宅してすぐ寝たから16時以降のアリバイは成立しないな!」

「元気はいいですがこっちからしたら困ります」

「許せ!笑笑、俺は働いたあとすぐ寝ちまうんだ」

「なるほど笑笑、クローバさんと話せるくらい空く時間ってありますかね?」

「それは無いくらいいつも忙しいな、だが俺が会計を代わるからその間に話を聞いてやってくれないか?」

「ご協力感謝します」

「いいって、自殺なら仕方ないし他殺なら早く見つけてくれよな」

「それは任せてください」

彼はそれを聞いて軽く頷くと不器用そうな筋肉量とは裏腹にしっかりとレジの仕事をこなし始めた。

「どうも、クローバです」

「おはようございます、昨日は何をされていましたか」

「私は彼と同じように16時まで働いたあと貯めたお金でカメラを買いました。その後は私も流行りなので17時にここの写真を撮ってから家に帰りました」

「なるほど、緑のおじさんはいつ頃帰ったか分かりますか?」

「私が写真を撮る時にはいませんでした」

「では写真を見せていただけますか?」

「はい」


画像

「ふむ…確かにミドオジは居ないですね」

他にも遠めの写真やほかの角度のもあったがミドオジの居るものはひとつもなかった。

「他に気になることはありますか」

「いや、充分です。私は現場に向かうのでお仕事頑張ってください」

「わかりました、ありがとうございます」

2人とも落ち着いてはいたがあくまで仕事をしているから落ち込んでいる場合ではないだけできっと動揺していただろう。

「…ヒーターさん、こっちは現場じゃないですよ」

「その前にカメラを売った店を見てみようと思ってね」

「なるほど。アリバイの真偽を確かめるのですね」

このへんでカメラを売っているのは機械屋のここしかないので間違えようがない。

「ナット爺、昨日ここでカメラを買った女の子はいませんでしたか」

「んあ?ヒーターの坊主か、そう言えば花屋の店員さんが一つ買ってったな」

「なるほど」

「それだけか?なんか買ってけよ」

「そうですね、では同じカメラをひとつください」

「あいよ、お連れの助手ちゃんに使わせてやりな」

「そのつもりです」

「ヒーターさんも気配りができるんですね」

「うるさい」

ハッハッハと豪快な笑いが聞こえるが私は早足で現場に向かう。もう少し喜んだ様子を取ってくれてもいいと思った。


現場に向かうには天地エレベーターを使う必要がある。この世界は上町と下町に別れており、下町に職場、上町に自宅を設けている。現場が被害者の自宅ということで上町に向かう必要があったのだ。


エレベーターから見える景色を撮るポットはやけに早口だった。

「このレンズを通してみる世界は普段と違って見えますね」

「変わらないさ。変わっちゃいけないのさ」

「それはそうですが、このレンズの範囲だけでこの世界を見るって言うのは普段とはまた違った感覚です」

…助手の仕事のために買ったのだが。

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