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ググ…_:(´ཀ`」 ∠):
喧嘩のあと、一応は仲直りをした。
……したはずだった。
「兄さん、おはよ」
「あ、うん…おはよ」
春の陽気が少しずつ初夏の気配を帯びてきた朝。
玄関のドアを開けた瞬間、俺は言いようのない違和感に襲われていた。
やっぱり、なんかおかしい。
直哉の態度が、明らかに以前と違っているのだ。
これまでの直哉なら、朝一番に顔を合わせた瞬間
ちぎれんばかりに尻尾を振る幻覚が見えるほどの笑顔で「兄さん!」と抱きついてきたり
後ろからずるずると肩にあごを乗せてきたり
「今日も可愛いね」なんて恥ずかしい愛の囁きを平然と口にしてきていたはずだった。
なのに、今は────
普通。
ただただ、普通なのだ。
いや、不機嫌というわけではない。
俺の体調を気遣ってくれるし、ローファーを履くのを待ってくれるし、普通に優しい。
けど、決定的に「距離」があった。
触れ合わない。パーソナルスペースが
一般的な『普通の兄弟』のそれまで後退してしまっている。
「……」
それが、妙に落ち着かない。
昇降口に到着し、下駄箱の前で靴を履き替えている直哉の横顔を、俺は前髪の隙間から盗み見る。
当然のように、朝から女子生徒たちに囲まれて話しかけられているが
直哉はいつもの営業用の爽やかな笑みで適当に応対している。
いつも通りの光景だ。
なのに、あいつの視線は一度も俺の方へ向かないし
用件が終わっても俺の隣にすり寄ってこようとしない。
「じゃあ俺、先に行くね」
「…あ、うん」
それだけを淡々と言い残し、直哉はすっと1年のフロアへと去っていく。
(……え、終わり?本当にそれだけ?)
前なら、俺が「早く行け」と怒鳴るまで
しつこいくらいにその場に居座って手を振っていたはずだ。
引き止められなかった寂しさと
予想外の素っ気なさに、俺の下駄箱を閉める手が思わず強くパタンと音を立てた。
◆◇◆◇
「お前、今日なんか妙に静かじゃね? 体調でも悪いのか?」
「……そうか? 普通だけど」
昼休み
弁当を食べながら、机の向こうで箸を動かしていた友人に指摘されたが
自分ではうまく生返事をするのが精一杯だった。
ただ、胸の奥がずっと、泥水が澱んでいるみたいにモヤモヤとしていて、飯の味があまりしない。
理由なんて、本当は嫌というほど分かっていた。
購買へ紙パックのジュースを買いに行き、その帰り道
中庭へと続く渡り廊下を歩いていると
向こうから女子生徒たちのけたたましい黄色い声が聞こえてきた。
「キャー! 田口くん、今日もマジでかっこいい!」
「距離が近くても全然嫌な顔しないの、本当に神対応すぎ!」
人だかりの視線の先にいるのは、もちろん直哉だ。
何人もの女子たちに囲まれ、華やかな輪の中心で、彼は微笑んでいる。
……別に、いつものことだ。