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あいつがモテるなんて、出会った初日から分かっていたことだし、学校の日常茶飯事。
なのに、なんでこんなに
見ているだけで胃の奥がキリキリとイラつくんだよ。
しかも直哉は、俺の姿が視界に入っているはずなのに、前みたいに強引に割り込んできて俺の手を引いたり
「迎えに来たよ」なんて2年の教室まで押しかけてくることもなくなった。
「……」
歩みを止め、胸元の紙パックをぎゅっと握りしめる。
いや、待て。
俺は一体、あいつに何を期待しているんだ?
数日前、直哉のあまりの執着と独占欲の強さに耐えかねて
大喧嘩の末に『お前の好意は重すぎるんだよ!』って突き放したのは、他の誰でもない、この俺だ。
直哉が俺の言葉を受け止めて、行動を改めてくれたのだとしたら
今のこの「一歩引いた距離感」こそが、俺が望んだはずの平穏な日常じゃないか。
なのに。
なんでこんなに、胸がえぐられるみたいに寂しいんだよ。
◆◇◆◇
放課後
終礼が終わり、カバンを肩にかけて教室を出た瞬間
後ろの階段のあたりから女子生徒のはしゃいだ声が響いた。
「田口くん!これから駅前のカフェ行かない? 一緒に帰ろうよ!」
心臓が跳ね、反射的に振り返ってしまった。
人混みの向こう、直哉はカバンを片手に持ち
少し困ったような、曖昧な笑みを浮かべて立っていた。
「あー…ごめん、今日は……」
そこまで直哉が言いかけたのを聞いて、俺の胸の奥が、冷たい風が吹き抜けたようにざわついた。
断れ。
お願いだから、いつものように冷たくあしらって、断ってくれ。
心の中で必死に念じる。
すると、直哉がふっと視線を動かし、廊下に立ち尽くしている俺を見た。
一瞬だけ、火花が散るように目が合う。
直哉の瞳が、微かに揺れたように見えた。
(あ……)
引き止めなきゃ、と思った。
けれど、ツンとした態度しか取ってこなかった俺のプライドが邪魔をして、声が出ない。
すると直哉は、俺の沈黙をどう受け取ったのか
ふっと寂しげに目を伏せると───そのまま、視線を逸らした。
「……うん、別にいいよ。行こうか」
「───は?」
声になり損ねた吐息が、口から漏れる。
なんだそれ。
なんで、そっちに行っちまうんだよ。なんで俺のところへ走ってこないんだよ。
「やったー! 嬉しい!」と飛び上がっている女子たちに囲まれながら
直哉はそのまま階段を降りていく。
遠ざかっていく、自分よりずっと大きくて広い背中。
それを見送った瞬間
胸の奥がぎゅっと、引きちぎられるように痛くなった。
我が家。
自分の部屋。
「……っあーーー、もう!!クソ!!」
ベッドになだれ込み、枕に思いきり顔を埋めて叫んだ。
なんなんだよ、これ!!
全然頭が働かないし、何をしていても落ち着かない。
心臓の奥がずっとイライラして、モヤモヤして
どうしようもないくらい、寂しい。