コメント
4件
(この前髪の毛束感、俺カッコイイー)
俺はモールの通路でスマートフォンのインカメに写る自分に惚れそうになった。
さらにワックスを指に馴染ませ、前髪をねじり上げる。
(よし、イケメンすぎてヤッベ)
通路を歩いていると、この俺に見てくれと言わんばかりに女たちが視界に入ってくる。
今年の春から大学生になり、ひとり暮らしも始めた。
高校時代は勉強ばかりだった。
髪も子どもの頃から行ってる近所の床屋で切っていた。
服は親がスーパーで買ってきたやつを着ていた。
でも晴れて志望する大学に入って俺は変わった。
雑誌や美容系配信者の動画を参考に垢抜けを決意した。
美容院で髪を切り、金髪に染めた。
服はモテてるやつのSNSを見て買った。
彼女は今まで一度もできたことはないが、それもあと数時間で終わる。
いや、数分かもな。
垢抜けた俺のお披露目と彼女作りを兼ねて、俺はこのモールに降り立った。
『えっ、カッコよくない?』
どこからか、女の声が聞こえた。
周囲を見る。
前から歩いてくる4人の女子高校生が笑いながらチラチラと俺を見ている。
垢抜けると歩いてて普通にカッコいいとか言われるのか。
まぁ大きい声出ちゃう程のイケメンなのはわかるけど、聞こえてますよ、その会話。
女子高校生もいいけど、あの子たちはちょっと子どもだ。
俺はもっと大人の女がいい。
例えば、ほらそこ。
サービスカウンターでにっこり微笑んでるうっすら茶色い髪の女だ。
制服越しに胸がデカいのがわかる。
おっ、前から歩いてくるミニスカートのやつもいいな。
太ももの盛り上がりがたまんね。
見てるだけでヤりたくなってくるぜ。
『あの人ヤバい、あっちの方もすごそうじゃない?』
(!?!?!?!?!?!?)
誰だ?
今どっかで、俺はイケメンだって、俺のあそこもすごそうだって、声が聞こえた。
俺は周りの女たちを見た。
前からお団子ヘアの女が歩いてくる。
歯が出ていて鼻も低い。
ダメだ、あいつとはヤれない。
『こっち向かないかなぁ?ほんとイケメンだよねー。そそるぅー』
また声が聞こえた。
後ろってことか?
振り向いた。
茶髪のスラッとした女と目があった。
だけど一重だ。
俺は二重のぱっちりがタイプ。
それに細すぎて、なんかソソらない。
ギリヤれるはヤれるが、彼女にしたいタイプじゃない。
女は俺を見ながら近づいてくる。
俺は女に話しかけた。
「これだけイケメンだと、見つめたくなる気持ちもわかるよ」
女は戸惑っていた。
意中の男に突然話しかけられたら、そんなリアクションになってしまうのも無理ない。
「仮に俺とお前が付き合ったとして、並んで歩いたら恥ずかしいだろ?」
女は口を半分開き、どうしていいかわからないといった顔で俺を見ている。
「俺がイケメンすぎるのが悪いんだ。君に罪はないさ」
「ちょっ…」
女は顔を真っ赤にして足早に俺から離れていった。
秒で恋され秒で女をフる俺。
(フードコートでヒマそうにしている俺好みの女を探すか)
俺はエスカレーターに乗って上の階に向かった。
フードコートにつくと家族連れや学生のグループで賑わっていた。
『イケてるくない?』
『みてみてみて!すごいカッコいい!』
(またか)
俺は髪をかきあげ、フードコートを見渡した。
(おっ)
少し離れたところに座っている女2人と目があった。
(あの女たちだな)
女っていうのは正直だ。
さっきの女子高生といい、思ったことを平気で口にする。
「誘ってるの?」
俺は2人に近寄り、テーブルに肘を置いて言った。
1人はベージュ系統でまとめたカフェでラテを飲んでそうなタイプだ。
もう1人は髪にカールがかかった、ややまつ毛まわりのメイクが濃い女だ。
「ラテが好きそうな君は、70点だ」
「え…?」
採点が厳しかったのか、一気に不安そうな顔に変わる。
「眼力のある君は、75点だな」
彼女は何も言わず、驚いた顔をしていた。
「思ったより高得点?だけど残念だ」
「俺とヤれる合格点は、80点以上だ」
俺はそういうとテーブルから離れた。
誘ってくる女とかたっぱしからヤるのも、悪くない。
でもさ、初体験は大切にしたい、それは女も男も同じ、だろ?
俺は納得のいく女とヤりたいんだ。
俺はアパートに戻ることにした。
いくら誘われても俺の初体験にふさわしい女は、なかなかみつからない。
かといってヤりたくないわけじゃない。
一流とは言えないものの、みんなそれなりに良かったじゃないか。
アパートの階段の手前で、背後から靴音が聞こえて振り返った。
(!?!?!?!?!?)
(80…いや90点だ)
ハイヒールを履いた長い脚を黒くうっすら光沢のあるストッキングが彩る。
フェイクレザーの黒いタイトスカートは膝上20センチほどだった。
(顔もモデル並じゃんか…)
女は俺の前をココナッツのような甘い香りを残し、通り過ぎていく。
コンッ
コンッ
コンッ
(うぉお…尻がエロい!)
階段をのぼるたび、尻の肉が左右に揺れる。
女は2階のフロアから、俺の部屋のある方に向かう。
ニコッ
女はドアの鍵を開けると、俺に微笑みかけて、部屋に入っていった。
俺の隣の部屋、あんな美人が住んでたのか。
部屋に入るが、興奮が収まらない。
あの脚、あの尻、胸だってGはあった。
ハァハァ
思い出すだけで、勃ってくるぜ。
『…したい…』
(あ…?)
『さっきの金髪の子と…エッチ…したい』
(あああああ!?)
壁の向こうから、声が聞こえた。