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上野文
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#悲しい
シジミン
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kirisu
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畝澄ヒナ
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恵は確かに好き嫌いがハッキリしているけれど、人間関係においては余計な軋轢を生まないように、「どうでもいい」と思う人には中庸な態度をとる。
だから彼女がそう言ったなら、「ナシ寄りのナシ」なのだ。
「……でも、凄く良さそうな人だったよ?」
「うーん……」
歩きながら恵は微妙な顔をし、しばらく考え込む。
「恵のセンサーが働いてるの?」
数分経っても何も言わないので、そう尋ねてみると、彼女はようやく口を開いた。
「そうだね。センサーというか、感覚というか、第一印象というか……、天のお告げ?」
「なんじゃそりゃ」
恵の冗談に、私はケラケラ笑う。
「……それは冗談として、んー……、『何となく』の感覚だから、朱里はあまり気にしなくていいよ。ホラ、私、人の好き嫌いがハッキリしてるじゃん。田村にもずっと塩対応だったし。……まぁ、私は朱里の事が好きだったから、ずっとあいつを恋敵として見ていて、嫌いだったっていうのもあるんだけど。その前にあいつの人間性が、やっぱり何となく嫌だったんだよね。初対面の時から『なんかやだ』って思ってた」
「……うん。恵の勘って当たるよね。気をつけてみるね。……一旦受け入れてしまった以上、明確な理由もなく、いきなり拒否するのは良くないから、自分でもちゃんと見極めてみる」
「うっす」
恵は私の背中をポンと叩く。
彼女にそう言われたあと、何となく引っ掛かった事を口にした。
「最後のワンピースのくだり、褒めてくれるのは嬉しいけど、自分と比較して、自分を卑下しなくていいのにな……、とは思った」
「……うん、私もそういう所が引っ掛かった。あと、最初の『沢山食べて可愛いですね』って、『沢山食べて』って余計じゃね? って思った。朱里が沢山食べるのを知っていて、なおかつそれをネタにしていいのって、相当仲が良くないと駄目なんだよ。……いや、もしも朱里が大食いいじりを嫌がってるなら、私も反省すべきだけど」
「ううん、全然。だって事実だし、いじられるほど『よーし、食べるぞー!』ってなる」
私がケロリと返事をすると、恵は横を向いて「ぶふっ」と噴き出す。
そして咳払いをして誤魔化すと、続きを口にした。
「なら良かったけど……。……あと、沢山食べるとかって人の勝手だし、指摘する事じゃないでしょ。むしろ、他人が何を食べているかの感想を言うって、品のない行為だと私は思う。よっぽど仲が良くて、健康を心配して言うなら別だけどね。それ以外は、口を出すべき事じゃないんだよ。自分のお金で好きな物食べて、ご機嫌になって何が悪い? って思うし。……だから、褒めるにしても、わざわざ言う事じゃないなぁ……って」
確かに、言われてみればそうなのかもしれない。
すんなりと受け止めてしまった私は、ちょっとおバカなのかも。
そういえば、昭人と付き合っていた頃は、大盛りを頼んだら『恥ずかしいからやめろ』って言われて、人前では隠すようにしていた。
別に普通盛りだからと言って、お腹空いてつらいなんて事にはならないけど、素の自分を抑えていて、何だか息苦しかった。
尊さんと付き合うようになってからは凄く楽になって、他の人間関係にも恵まれたから、最近は素の自分でいるのが当たり前になっていた。
それって、気づきにくいけれど、とても幸せな事なんだと思う。
でも一般的に見れば、女性が大盛りを食べているのは、恥ずかしい事なのかもしれない。
勿論、「誰が何をしても自由。人に迷惑をかけなければOK」というのは分かっている。
けれど何でもパクパク食べる私の中にも、若干の羞恥心は残っているのだ。
周りの人が優しいから「恥ずかしがらなくていいんだ」と思えているけれど、全員が私を受け入れてくれる訳じゃない。
だから余計に、『可愛いですね』って褒めてくれたのはどういう意図だったんだろう、と思ってしまう。
恵の言う隠されたチクチク言葉なのか、それとも文字通りシンプルに褒めてくれたのか。
けど、彼女に直接聞く勇気はない。
「あれってどういう意味だったの?」なんて言えば、もしも友好的に接してくれていた場合、小鳥遊さんを傷つけかねない。
だからハッキリと自分が「嫌だ」と思う事が起こるまで、様子を見るべきなのかもしれない。
恵はポンポンと私の背中を叩いて言った。
「小さい違和感って大事だから、ちゃんと心に留め置いたほうがいいよ。あとになってから『あの時感じた違和感を、信じておけば良かった』ってなるパターンが多いから」
「うん、分かった。ありがとう」
そのあと、エレベーターに乗って、それぞれのフロアに戻り、また午後の仕事に戻った。
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コメント
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第943話読みましたよ…🤍 恵の「小さい違和感」って言葉、すごく分かるなぁ…初対面で感じる「なんかやだ」ってやつ。後から「あの時信じればよかった」ってなるパターンあるあるすぎる🥀 朱里が大盛りの話で昭人との関係振り返って「素の自分でいられるって幸せ」って気づくの、なんか温かい気持ちになったよ…でも同時に「あの人の褒め言葉ってなんだったんだろ」って考えちゃうのもリアルで切なかった 女性が大盛り食べてるだけでチクチク言われる空気、私もモヤモヤするので、朱里が素でいられる場所があってほんと良かったなって思いました🌙