〜注意事項〜
・一話サンショウオ
*
「shp…やん!!!!!」
「ciッ、!!!!!!!」
ガバッ!と抱き倒れる二人を見て、皆は呆然としていた。
shpやん、って、そりゃshpだ。
ci、って、そりゃciだ。
自己紹介もしたじゃないか。
皆は飲み込めないまま二人を見た。
「お前同い年やったん!?」
「ciこそ!!!!!」
切り傷もそのままに二人は喜び合っている。
「なんでここにおんねんお前!!!shpのことやから、普通の高校に行ってるかと!」
「まー、ciおらんくなるって知ったらやる気失せてもうて。楽って聞いたからここに来てん。」
「そうやったんや!なんか怖がって損してたわ。」
「名前すら忘れてるとは思わんかったわ。」
「せやね!昔もよく俺の怪我治してくれたよなぁ!」
「ci怪我しすぎやねんて!!」
きゃっきゃと騒ぐ二人を、皆は遂に引いたような目で見た。
ノラネコ、と呼ばれるshpがこんなにも騒ぐとは。
「shpがciを連れてきたんは、直感的に何かを感じ取ってたんやね。」
utが納得したように頷いた。
「そうっすね、いやでもまさかあのciだとは!」
「どのciやねん。」
tnは理解が間に合わず混乱したまま呟く。
「shp、オカン元気しとる??俺のオカンは、他県にいるままやけどさ!」
「まあまあにな。そうや、泊まり来る??オカン喜ぶやろうし。」
「ええの!?…ッ、ぃ"」
思わず立ち上がったciは足を押えて倒れ込んだ。
湿布やらなんやらで手当はされているようだが、痛みはまだ残っている。
「…あ、aは倍返ししといたから!!安心してな!!」
shoがにぱ!と笑う。
それに続けてknも、グッジョブ!と親指を立てた。
「ciすまん、俺の意識不足や。」
tnが頭を下げるので、慌てて手を伸ばす。
「気にしないでください。ほんま、俺の方こそ迷惑かけてるんで!」
「かけろっつってんねん。」
「怒んないでよshp…。」
それを見ていたsnが、耐えきれず口を開いた。
「…なあ。shpくんにだけタメずるいねんけど。」
意気投合したように、皆がワイワイ騒ぎ始める。
「おれも外して欲しいなぁ〜?」
「賛成めう〜。」
「じ、じゃあ…」
ciは痛みも忘れ、皆と日が落ちるまで話していた。
*
「俺も強くなりたくなってもうたやんけ!」
普通に生きると決めていたciだが、過去の友人shpがこうなっていることを知ると、憧れを持ってしまった。
shpの家に泊まりに来たciは、唸っていた。
「お前が強くなるんは無理やろ〜。」
「やってみせるわ!!」
「…それでまた怪我したら許さんから。」
shpはギロ、と怒り、低音で呟く。
ciはへらへらと笑う。
「えー、でも言うて耐えられるで?shpがおんねんもん。」
怖かったのは本当だ。でも、shpが来てくれると考えたらそうでもない気がしてきた。
shpはムッ、と更に怒りそっぽを向いた。
「また怪我したら縁切るぞ。」
「えっ、それはやだ…!」
ciはごめんごめんと慌ててshpの肩を掴む。
shpは頬を膨らませながら振り返った。
「…俺は更に過保護になってまいそう。」
「んふふ、shp変わらんね。優しい。」
「黙れ。ほら、寝るぞ。」
来客用布団を敷き、ciはそこに寝転がった。
隣のベッドから、shpがこちらを見下ろす。
それから、ふにゃと微笑んで静かに言った。
「おやすみ。」
昔のshpと、やっぱり変わらないな。
「おやすみ!」
そのまま、ciも返すのだった。
*
「…shp、??」
それから数日が過ぎ、ようやく休日がやってきた。
何日か程度に泊まりに来ていたのだが、昨日はem、zmも連れて泊まっていた。
shpの母親は穏やかな人なので軽くOKしてくれたのだった。
客間が生憎にもないので、shpの部屋でぎゅうぎゅうになりながら寝たのだが、shpは堂々と自身のベッドで寝ていた。
ここはワイだけ、とzmを押し出していた。
…のだが。
「…shp??お前落ちてるやんけ。」
「…んん。」
ciの布団を奪い、寝始めてしまった。
無理にshpのベッドで寝る訳にもいかない。
ciはため息を着きながら、痛む足同士を擦り合わせた。
「強くなりたいなぁ。」
「させたろっか!」
突然の声に驚き、慌てて振り向く。
寝起きで寝癖を跳ねさせたまま、zmがにししと笑っていた。
いつから見ていたのかと、ciは少し恥ずかしさを覚えながら、zmの方に寄る。
「外行こ!教えてやるから!」
ぐいぐい、と手を引かれるがままに外へと連れ出される。
近くの空き地へと行き、zmはぐぐ、と身体を伸ばした。
「あの…いくらなんでも、zmさんには適わないから、け、喧嘩だけは!…その、」
「喧嘩せんよ〜。コツを教えたるだけ!…、おれそんなに怖いかなあ?」
恥ずかしそうに頬を掻くと、zmはその場に座り込んだ。
「俺も最初はよわっちかったんやで!」
「え、zmさんが!?」
流れるように吊られて、ciも座り込んだ。
「うん!おれはな、emに教えて貰ってん。あ、おれとemは家が元々隣でな!」
「え、あのemさんが…??喧嘩するようには、見えへんけど、?」
「せやんなぁ。んひひ、あいつ弱そうに見えるもんなあ。ま、あいつの強さは俺だけが知ってたらええねん。」
想像してみるが、なんとも言えない。
grら辺なら知ってるだろうか。
教えてもくれるだろうか。
そう考えていると、zmがこちらに寄りかかってにやにや笑いながら言った。
「grも見たことないで。その話はしたことあるけどな。」
そんなことを話していると、emが走ってきた。
zm同様、寝癖を跳ねさせながら。
「zmさーん!!ciくーん!!どこ行ったのかと思ったやん!!」
「em、ciが動き方教えて欲しいってよ。」
「…えッ、なんで俺なの、!?」
「zmさんが、emさんに教えてもらったって…。」
emは少し耳を赤く染めて、震えながら咳き込んだ。
それから、パン!と頬を両手で叩きこちらを見る。
「いい?ciくん。まず、君は姿勢が悪い。」
「え、猫背ではないと思うねんけど。」
「走る時のフォーム。逃げ足早いのも、喧嘩で大切な1つやからね。」
つん、とemは指先でciの頭の頂点を押した。
「頭から足が一直線になるイメージ。君、走る時少し歪んどるからね。」
「…分かったけど、逃げ足必要なん、?」
「逃げ足以外にも、仲間を助けるために駆け付けたりとかできるやろ?だから、走力はある程度ないとね。」
遠回しに、今は遅いということか。
ciは少しムッとしながらも、雰囲気の変わったemには逆らえずにいた。
イキっているのとは違う。
所謂、”ガチ”の雰囲気を感じたのだ。
*
「ci、昼飯食いに行こーぜ。」
「ええよ!!どこ行く?」
某ハンバーグ店にutらがいるらしい、とshpはだるそうに言った。
それから、shpのチャリの後ろに乗って、集合場所へと走っていく。
店の前には、ut、kn、tn、rbが立っていた。
ヤンキーの軍団に、客も少し怯えていた。
同情しながら近寄る。
「お待たせしました。」
「うい!急にすまんな!行こか!!」
「近くの公園の裏で食うらしいけど、2人はそれでもええか?」
「はい!!/っす。」
tnは唯一の常識人で、店の中で食べるのは辞めろと提案したらしい。
それに安心しつつ、注文を済ませる。
rbが炭酸を何個も注文しようとしていて、knがゲンコツをかましていた。
どうやらknの奢りだそうだ。
shpはミニホットケーキを注文、ciはナゲットを注文した。
公園の裏のベンチに腰をかけて、食べ物を各々食べていく。
tnはgrと食べるらしく、公園には来なかった。
「いやあ!ci怪我はもう良さそうやなあ!」
「アザは残っとるけど、だいぶ楽!emさんのおかげで!」
「em??なんかやったん?昨日?」
shpがホットケーキをフォークで刺しながら首を傾げる。
「あー…なんかストレッチとか!教えてくれたみたいな!!」
shpは特に何も気にせずにホットケーキを頬張った。
rbはじーとこちらを見ているようだ。
「emとzmはどうしとるん?shpんちおるんやろ??」
utはハンバーグを半分食べ、満足そうににこにこしている。
「ああ…どっかいきました。ま、多分zmさんの家ちゃいますか。2人のことやし。」
「あの2人ほんま仲ええよなあ。真逆なのに。」
「あれやろ、守ってやるよ!的な!!」
utとknが盛り上がっているが、ciは苦笑するしかない。
なぜかって、逆だからだ。
emが強いのだ。zmは教えられている。
…だなんて、言ったらどうなることか。
「ciはほんまに喧嘩できないん?お前背ぇ高いからできそうやのに。」
rbが炭酸をズゴゴ、と吸う。
これもまた苦笑するしかなかった。
「それな!お前喧嘩できるようなったら絶対強いよなあ、憧れる。」
「その背くれよ。」
「rb羨ましがってんなあ。お前ちっちゃいもんなあ。」
ケラケラと笑い合う。
「できないんよ、これが。…僕トイレ行ってくるわ。」
皆の無意識な軽蔑の視線を感じ、立ち上がる。
shpが立ち上がる音が聞こえたが、無視してそのまま公園のトイレへと向かった。
*
「…shp??お前もトイレ?」
個室から出るとshpが立っていた。
「うん。ワイはこっちやったけどね。」
指を差したあと、すぐにトイレを出ていった。
手を洗って出れば、shpはそこで待っていた。
「…皆と話してなよ。俺、少し用事思い出してん。」
「用事ってなに?ワイも着いて行ってええやつ?」
「分かんやろ、俺が足手まといになってんのも。ほんとは、うんざり思ってるんやろ。」
「…急に疑うんや。アイツらの発言に動かされて。」
shpは無機質な目線をずっと向けている。
昔とは違う。1人でも生きられる男の目だ。
そう、俺とは違う。
ciは深く俯いた。
その瞬間、デコピンをされた。
「ワイの発言には動かされへんのに、あいつらの発言には動かされるんかよ。」
「…えっ、?」
「…ワイの方が長く一緒に遊んだのに。なんであいつらなん。」
shpは少し耳を赤く染めている。
「……んふふ、拗ねてんのお前?」
「見りゃ分かるやろ。相棒の心をあいつらに掴まれてたまるか。」
「んふふ、なんや。お前変わってへんなあ。」
「ふん。そっちは弱くなっとる。この意気地無し。」
なぜだか、彼の言葉は安心する。
ciは軽く、鈴を転がすように笑った。
それも、昔のように。
そのまま、昔のような話をしながら皆の元へと戻る。
彼となら、昔の強い自分で居られるような気がして。
そんな、気がした。
一瞬だけ。
*
「それなァ!!ほんっっっまにいらん!本人に言えるわけないやろこの発言!!!」
「あ"ッはっは!!そいつはいらんなぁ!だって、足手まといやん!!ゴミやん!!ほんま俺はいらん!絶対2人きりとか無理!」
「くふふ、僕は大歓迎やけどな〜?可愛いし。可愛いから。可愛いだけの取り柄。周りからの視線だけの取り柄。あー、僕モテちゃう。」
3人は手をバンバン叩きながら笑っていた。
いつの間にか戻ってきたtnと、tnに連れてこられたgrも。
楽しそうに。それは楽しそうに笑っていた。
傍から見たら、それは明らかに。
「…ci、行こう?」
shpがくい、と手を引っ張る。
それを振りほどいた。
振りほどくことができたのには、自分でも驚いた。
「…。」
「ci!!」
そのまま走り出す。
emが教えてくれた通りに走り出す。
…。
なにが。
shpだけに心を動かされる、だよ。
これは動かされてるんじゃない。
動こうとする前に押し潰されてるだけ。
これはお前と俺がどれほど仲が良くても関係ない。
お前が拗ねようと関係ない。
最初から間違ってたんだ。
そう、俺には早すぎた。
ようやく、起承転結の転くらいかなと思ってもらえれば🙆🏻♀️🙆🏻♀️
一話1000回視聴ありがとうございます!!
ラストスパートかましますぜ💪🏻
コメント
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emサンがzmより強いってことに驚いた…笑 えてか最後のciのに言ってたのかな、、続きが楽しみすぎる
1話サンショウオを見た時の驚きが凄すぎてびっくりしたw みんなの最後の言葉誰に言ってたんだろ、、