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続き
桃時「あの後何度か遊んで……」
橙「もうすぐ一週間……」
瑠璃人「つまりあと少しで……」
「「あの子とお別れになる……はぁぁぁぁ……」」
雨花「いやどんだけ落ち込んでんの……」
兎白「ここ一週間ほぼあの子と過ごしたからな。情が湧いたんだろ」
雨花「離れていくって決まってるものに情なんて湧かさない方が良いのになぁ」
兎白「お前はあの子についてどう想ってるんだ?」
雨花「…………幸せになって欲しいとは想うけど、それは情なんてものよりもっと不透明でもっと軽い。無責任な想いだよ」
兎白「それでも相手のことを大切に想ってることに変わりないだろ?」
雨花「……兎白くんはどうなの?」
兎白「俺は……」
「離れていったら寂しいな」
雨花「……そうなんだ」
桃時「二人とも!最後に橙と瑠璃人があの子に会いに行くって!あんたも行く?」
兎白「あぁもちろんだ」
橙「…………」
雨花「大丈夫って言えたら良いのにね。」
橙「どういうことです?」
雨花「橙ちゃん、気になってるんでしょ?あの子の母親が無事にあの子を育ててくれるかって。」
橙「!、えぇまぁ」
雨花「そればっかりは分からないね。でも、あの子が持ってる母親への「好き」という気持ちだけは信じるべきものだよね。だからさ。わたしたちにできることは、もしその気持ちに亀裂が入ったり、壊れてしまったら、その時あの子の「居たいと想える居場所」になることだと想う。綺麗事でも、偽善でも、どんな風に言われても良いから、あの子の支えになる。あの子の想い描く幸せを願う。もちろんこれが余計なお世話で済めば良いんだけどね」
橙「……そうですね」
橙はどうか穏やかな時間があの少女に繋ぎ続きますように願っている。
雨花、桃時、兎白、瑠璃人も少女の幸せを祈りながら最後の遊びに向かうのであった。
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別れの日の前日
桃時の家
雨花「じゃあ最後は……」
「「プレゼント交換しよう!」」
「うん!しよう!」
桃時「こうやって形になるものを渡せば、想い出として残るものね」
橙「皆さんは何を用意したのですか?」
兎白「俺は……」
瑠璃人「まぁそれはサプライズってことで!」
「私はお金ないから大したもの用意できなかったんだけど……」
雨花「気にしないで大丈夫だよ!プレゼント交換しようって言ったのわたしだし、わたしは大したものじゃないから、それに用意してくれたって事実だけで充分だよ!」
橙「そうですよ。お気持ちだけで充分です」
桃時「あんたは気にしなくて良いのよ」
兎白「みんな充分お前がいるだけで安心できる。それで充分だ」
瑠璃人「オレもオレも!お前といた一週間楽しかったし!」
「!、うん!」
雨花「じゃあ早速、交換しよう!橙ちゃんたちからどうぞ〜」
瑠璃人「じゃあ最初はオレだな。オレは……これ!」
瑠璃人が渡したのは、マフラーだった。
桃時「季節外れじゃない?」
瑠璃人「でも、寒い時とか心が苦しい時に巻いておくと安心できたりするんだよ。だからこれで良いんだよ」
「嬉しい!マフラー持ってないからありがとう!」
橙・桃時・瑠璃人「マフラー持ってない!?!?」
兎白「買って貰えなかったのか?」
「ずっとお父さんと暮らしてて、お母さんは全然家に帰ってこなかったから、あんまり物とか買って貰えなくて……」
雨花「…………話してくれてありがとう」
ちゃんとあの母親に
言っておかないと
子育てを全部あの父親に任せるのは
懸命じゃないって
兎白「じゃあ次は俺だ」
兎白が渡したのは、紅色喫茶店の無料食事券百枚セットだった。
橙「す、すごい……!よくこんなに集めましたね」
兎白「紅蓮先生が、「俺を気遣ってくれるのは雨花とお前くらいだよ〜」って言って、よく渡してくれるんだ。ご飯に困ったら訪ねてみると良い」
「うん!」
雨花「まぁご飯に困ることがないのが一番良いことだけど、この券があればしばらくご飯に困ることはないね!兎白くんナイス!」
兎白「ははっありがとう」
桃時「じゃあ次はアタシ!はいどうぞ」
桃時が渡したのは、写真アルバムだった。
瑠璃人「おぉ!なんだこれ!いつの間に撮ったんだ?」
桃時「アタシはよく自撮りや他撮りを撮ってアップしたりしてるから、いつでもどこでも撮影には慣れてんのよ。そのアルバムがあればいつでも味方がいるって分かるんでしょ?だから渡したの」
「うん!絶対大切にする!ありがとう!」
橙「では、次は私ですね」
橙が渡したのは、本だった。
「これって私が読み聞かせしてもらった童話の本……!」
橙「あんなに物語を楽しそうに聴いて下さっていたので、お渡しします。帰った後も読んでみて下さい」
「はぁーい!」
女の子はとても嬉しそうに喜んでいる。
雨花「じゃあ最後はわたしだね、どうぞ!」
雨花が渡したのは……
「ペンダント?」
雨花「そう!わたしが手作りしました!」
「可愛い……ん?何か入ってる……」
ペンダントの中には、雨花、橙、桃時、兎白、瑠璃人、女の子の写真と雨花たちの住所と連絡先と十円玉が入っていた。
「これって……!」
雨花「お節介かもしれないけど、何か少しでも困ったことがあったら連絡してね。もし、スマホとか使えなかったらその十円玉で公衆電話にかけてくれれば繋がるから!」
「こんなことまでしてもらって……本当に良いの?」
女の子は、不思議そうに雨花たちをみつめる。
雨花「うん!良いんだよ。沢山色んなことを我慢した分以上にこれからは自分の欲やわがままをちゃんと伝える日々や自分の心を守れる日々を送って欲しいな!」
「……!、ありがとう。お姉ちゃんたち!」
「じゃあ」
「私からはこれ」
女の子が渡したのは……
兎白「おぉ……」
瑠璃人「これは……」
橙「なんて可愛い……」
桃公「上手ねぇ……」
雨花「うわぁ!」
渡したのは雨花、橙、桃時、兎白、瑠璃人、そして女の子の似顔絵だった。
「私ばっかりお世話になってたから雨花お姉ちゃんたちが寂しい時に力になれたらなって……」
雨花「うんうんうん!!力になるよー!!」
橙「素敵なプレゼントですね!」
桃時「センスあるじゃない」
兎白「しかもとても可愛いタッチだ」
瑠璃人「嬉しいぜ!」
「「ありがとう!!」」
「!、うん!」
こうして、雨花たちは女の子との最後の時間を過ごしたのであった。
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「本当に、本当に、ありがとうございました」
雨花「いえ、今日はどこに宿泊なさるんですか?まさかあの家に……」
「あぁ、そのことなら、近くにホテルを取ってあるので大丈夫です!あの家にこの子を近寄らせる訳にはいきません!」
雨花「あの父親だけに子育てを任せないで下さい」
「はい……!」
桃時「ちゃんとして下さいね。もし何か困ったことがあったら絶対に連絡して下さい。」
「はい!分k……」
桃時「絶対ですよ?」
「は、はい」
橙「本当にこの方大丈夫なんですか?」
瑠璃人「なんか不安なんだが……」
兎白「あの子の「好き」はどこから来るものなのだろうか」
雨花「…………」
この人
何となくだけど
周りの言葉や状況に流されてしまう人のような気がする
それがこの子の害にならないと良いけど
でも
あとは祈るしかない
この子が幸せになれますように、と
「お姉ちゃんたち!絶対また会おうね!」
「本当にありがとうございました。必ず何らかの形で恩返しさせて頂きます」
雨花「そんなものいりません。もっとこれからは娘さんをしっかり「みて」あげて下さい。ちゃんと目で」
「はい……!必ず!」
雨花「じゃあね」
「うん!じゃあね!」
女の子は車に乗って離れていった。
桃時「あんたあの人のことどう想った?」
雨花「頼りなさそうだね。とりあえず場を収めとけば良いって思って状況に流されるタイプだと想う。」
橙「本当に大丈夫なんでしょうか……」
瑠璃人「不安だわな」
兎白「心配だ」
雨花「あの子があの人を好いているという事実が洗脳じゃないことをとりあえず祈ってみるしかないね。所詮他人が介入できるのには限りがあるからね。特に親子という他人同士の輪には」
橙「…………私たちも帰りましょうか」
桃時「そうね。帰りましょ」
兎白「あぁ」
瑠璃人「へいへい」
雨花「…………うん」
親子といえど所詮は他人
違う心を持った人間同士
そしてその間に
乗り越えることも壊すこともできない
大きな溝が生まれた場合
当事者たちだけでは回復できない
だから他人がみるべきなんだ
みなくちゃいけないんだ
その溝が生まれた親子が
お互いを傷つけ合わないように
他人がみなくちゃいけない
行動を取らなくちゃいけない
そうじゃないと
子供はもう二度と親を愛せなくなる
わたしのように
雨花は「何も映っていない目」で帰路に着き、家に帰っていった。