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魑魅魍魎
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魑魅魍魎
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6話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
《キヨ視点》
キヨはベッドに横たわり、ぼんやりと天井を見つめていた。
いつもなら動画を見たり、ゲームをしたりしている時間。
なのに今日は何もする気が起きなかった。
頭の中をぐるぐる回るのは、レトルトのことばかり。
『……レトさん』
小さく名前を呼んで キヨは目を閉じた。
(レトさん、俺のこと嫌いになったのかな。)
そう思った瞬間、胸がぎゅっと痛む。
(でも…. なんで急に…?)
理由が分からない。
問題に巻き込んで先生に怒られたから?
いや、 そんな事は今に始まったことじゃない。
むしろ毎回巻き込んでる。
それでもレトさんは笑ってた。
一緒に逃げて。
一緒に怒られて。
いつも隣で笑ってた。
(じゃあ何が悪かったんだ…?)
キヨは何度も考える。
そして、ふとある考えが浮かんだ。
(……もしかして)
心臓がドクドクと脈打ち始めた。
(俺がレトさん好きなの、バレた?)
その可能性に気付いた瞬間、心臓が嫌な音を立てた。
最近、自分でも分かるくらい隠せていなかった気がする。
レトさんを見る回数も。
名前を呼ぶ回数も。
ボディタッチの回数も。
全部、多すぎた。
(気持ち悪くなったのかな。)
(男にそんな目で見られてるって知ったら、 普通は嫌だよな。)
キヨは苦笑する。
好きになったのが間違いだったんだろうか。
最初はただ、一緒にいて楽しいだけだった。
笑ってる顔が好きで、 隣にいると落ち着いて
気付いたらレトルトの存在はキヨの中で特別になっていた。
いつからだろう一一一。
手を繋ぎたいと思うようになったのは。
一番近くにいたいと思うようになったのは。
他のやつと話しているだけで、モヤモヤするようになったのは。
帰り道が終わらなければいいと思うようになったのは。
“ もしも、付き合えたら”
そんなことを考えるようになったのは。
キヨは腕で目を覆う。
(この気持ちは全部、間違いだったのかな…)
胸の奥が痛い。
苦しい。
こんな気持ちになるくらいなら。
こんな風に避けられるくらいなら。
――ずっと友達のままでよかった。
隣で笑っていてくれるだけでよかった。
そう思うのに。
それでも、 明日またレトルトの顔を見たら
きっと期待してしまうのだろう。
笑いかけてくれたら、また胸が高鳴るのだろう。
(だいぶ….重症だな)
キヨはレトルトの事を想いながら静かに眠りに落ちた。
次の日の朝。
下駄箱は登校してきた生徒たちで賑わっていた。
キヨは靴を履き替えながら、人混みの中に見慣れた姿を見つける。
(――いた。 レトさん!)
それだけで少し安心する。
昨日はほとんど話せなかったから、 今日こそはちゃんと話そう。
そう思いながら駆け寄った。
『レトさん!おは――』
だが、
「キヨさーん!おはよーございまーす!」
元気な声が割って入る。
次の瞬間、 マネージャーが勢いよくキヨの腕に抱きついた。
『うわっ!』
「キヨさん、今日もかっこいいですね! 大好きです!」
満面の笑顔と 隠しもしない好意。
周囲の生徒たちが笑う。
キヨはレトルトを方を見ると レトルトもキヨを見ていた。
一瞬目が合う、 そして….
レトルトは、ふっと笑った。
優しく。ただ、優しく。
でも、 どこか寂しそうに何かを諦めたような
笑顔だった。
「……」
レトルトはそのまま何も言わず、教室へ向かって歩き出す。
『レト――』
キヨは呼び止めようとしたが 声にならなかった。
遠ざかっていく背中。
いつもなら、
「キヨくん、おはよう」と言ってくれる。
「今日もうるさいなぁ」と笑ってくれる。
そんな当たり前の言葉をくれる。
それなのに、今日はただ寂しそうに笑って
キヨの前を通り過ぎていく。
キヨはその背中を見つめ 胸の奥が苦しくなった。
――レトさん。
――行かないでよ。
――いつもみたいに、おはようって言ってよ。
そんな言葉は喉まで出かかったのに、 結局一つも口にはできなかった。
キヨはただ、 離れていくレトルトの背中を何も言えず見送ることしかできなかった。
その日の教室は、妙に静かだった。
いつもなら、 授業が始まる前から2人で騒いで 先生に注意されて、その様子を クラスメイトと一緒に笑い合う。
しかし、そんな二人が 今日はほとんど会話をしていない。
さすがに異変だった。
授業の合間、 担任の教師が教壇にもたれながら、不思議そうに二人を見る。
「おーい、全身組どーしたー?解散でもしたかー?」
その冗談にクラスがざわつき笑い始めた。
いつもなら、そんな冗談にキヨが真っ先に乗っかるのだが 今日は レトルトが先に口を開いた。
「先生〜!」
わざと明るい声で、
「俺ら全身組、解散の危機ですよ〜!」
教室に笑いが起きる。
「マジかよ!」
「おいおい!仲間割れか〜!」
「明日雪降るんじゃね?」
みんなが囃し立て、 レトルトも笑っていた。
でも、 その言葉を聞いた瞬間 キヨの胸はぎゅっと締め付けられた。
(解散って….)
たった一言なのに。
冗談だと分かっているのに…. 笑えなかった。
(解散なんて嫌だ。)
(隣にいられなくなるなんて嫌だ。)
(毎日一緒に帰れなくなるのも嫌だ。)
(一緒に購買に行けなくなるのも嫌だ。)
(全部嫌だ!!)
でも、その原因を作ったのが自分かもしれないと思うと苦しかった。
「キヨ?」
先生が黙って下を向くキヨに不思議そうに声をかける。
「お前もなんか言えよ」
教室中の視線が集まる。
キヨは俯いたまま 震える声で呟いた。
『そんなわけねーだろ!』
キヨは無理やり笑顔を作り声を上げた。
『全身組は不滅なんで〜!』
そう言って、いつもの調子でふざけてみせた。
教室から笑い声が上がる。
「出た出た」
「解散詐欺だろどうせ」
「お前らどうせ明日には元通りだろ」
みんな面白がって笑い、 先生も呆れたように笑った。
「まぁ、お前らが離れる方が想像つかんな」
その言葉に、また教室が笑いに包まれる。
キヨも笑った。
いつもみたいに。
何事もないみたいに。
でも、 レトルトは笑っていなかった。
ただ静かに下を向いて、 机の上に置いた手を見つめていた。
昼休み。
キヨは今日も重たい足取りで一人屋上へ向かっていた。
扉を開けると、そこにはいつものようにガッチマンと牛沢がいた。
「おー、キヨ!」
ガッチマンが軽く手を上げる。
だが、その笑顔はすぐに消えた。
明らかに落ち込んでいるキヨの顔は 昨日と同じ。
いや、昨日より酷いかもしれない。
ガッチマンは深いため息をついた。
そして、
「なぁ、キヨ」
いつになく真面目な声。
「お前らしくないじゃん」
キヨが顔を上げる。
ガッチマンはまっすぐキヨを見た。
「何にそんなビビってんだよ!!」
突然の大声にキヨは目を丸くする。
「レトさんのこと好きなんだろ!?」
『……っ』
ガッチマンはさらに続ける。
「どんなことがあってもさ、 レトさんはお前の隣にいただろ?」
「先生に追いかけられても、 問題起こしても」 馬鹿やっても….」
「ずっと隣にいただろ!」
屋上に風が吹く。
キヨは黙ったまま俯いていた。
「ウジウジしてんじゃねーよ!」
ガッチマンの言葉がキヨの胸に刺さる。
すると今度は牛沢が口を開いた。
「レトルトはさ、 どんなお前でも受け止めてくれる奴だろ?」
淡々とした口調。
でも、その声は優しかった。
「じゃなきゃ全身組なんて成立しねぇよ」
キヨは唇を噛んだ。
レトルトが優しいことは誰よりも知っている。
だからこそ怖かった。
もし違ったら…. もし嫌われたら….。
キヨは小さな声で呟いた。
『でも……男から好かれるのとか、キモいかな……とか思って』
声が震える。
その言葉を聞いた瞬間、 ガッチマンと牛沢は数秒固まった。
そして、
「はぁぁぁぁ!?お前マジで言ってんの!?」
ガッチマンが盛大に叫んだ。
『だ、だって!』
キヨは慌てる。
すると牛沢が額を押さえた。
「お前さ……」
呆れたような声。
「レトルトがお前をキモいって思うなら、 とっくに全身組解散してるだろ」
その一言に キヨは言葉を失った。
(確かに…. もし本当に嫌なら、レトさん はこんなに長く俺の隣にいてくれないよな)
ガッチマンは大きなため息を吐く。
「お前らほんとめんどくせぇな…」
キヨは何も言えなかった。
牛沢も珍しく優しい声で言った。
「お前さ、 レトルトが最近なんで元気ないか分かるか?」
『……俺のこと嫌いになったから?』
「逆だアホ」
即答だった。
牛沢は呆れたように続ける。
「お前のことが好きだからだろ。 好きなやつが毎日毎日、別の子の話してたら誰だってしんどいわ」
その言葉に キヨはハッとした。
(レトさん、ずっと我慢してたんだ。なのに、俺はそんな事も気付かずに….最低だ)
キヨは先ほどとは違う、何かを決めた様な
顔で2人を見た。
「行けよ!キヨ!」
ガッチマンが叫ぶ。
「今行かなきゃ絶対後悔するぞ!」
牛沢も珍しく大きな声を出した。
「さっさと行け!レトルトを捕まえてこい!」
その言葉に キヨは大きく頷いた。
胸の奥で何かが弾ける。
ずっと怖かった。
嫌われるのが。
関係が壊れるのが。
でも、
このまま何も言わずに終わる方が、もっと嫌だった。
キヨは勢いよく立ち上がる。
『2人とも……ありがとな!』
そう言って 屋上の扉へ向かって走り出した。
バンッ!
勢いよく扉が閉まり、 足音は遠ざかっていった。
しばらくの沈黙のあと ガッチマンと牛沢は顔を見合わせ、 同時に吹き出す。
「ははっ! やっと行ったな」
ガッチマンはフェンスに寄りかかりながら空を見上げ呆れたように笑った。
「あの二人、どんだけ拗らしてんだよ」
好きなくせに言わない。
好きなくせに勘違いする。
好きなくせに相手のことばかり考える。
ここまでくると才能だった。
牛沢も肩をすくめる。
「見てるこっちの方が疲れるわ」
「ほんとそれ」
ガッチマンは笑う。
そして 牛沢はパンを一口かじりながら言った。
「これでなんもなかったら、 TOP4解散だな」
その言葉にガッチマンは盛大に笑った。
「確かにな!これ以上、 付き合わされるの限界だわ」
二人は声を上げて笑った。
キヨは勢いよく教室へ飛び込んだ。
ガラッ!
突然開いた扉にクラス中の視線が集まる。
『レトさんは!?』
息を切らしながら教室を見回すがレトルトの姿が見当たらなかった。
『なぁ!レトさん知らない!?』
すると男子生徒が思い出したように答えた。
「あー、そういえばさっき隣のクラスのやつに呼ばれてたぞ。あれは たぶん告白だな!」
男子生徒はニヤニヤ笑って周りのクラスメイトとはしゃぎ始めた。
「とうとうレトルトにも春が来たか〜!」
「全身組、大ピンチ〜」
「相手結構可愛い子だったぞ!」
教室が笑いに包まれる。
(告白….可愛い子が? レトさんに?)
胸の奥がどす黒く染まる。
(絶対嫌だ! 絶対にダメだ!)
(レトさんは―― 俺のだ!)
心の中で叫ぶ。
付き合っているわけでもない。
告白だってまだしていない。
でも、 誰かに取られるなんて嫌だった。
想像しただけで苦しくなる。
もし今頃、 レトさんが頬を赤くして
「よろしくお願いします」
なんて言っていたら 終わりだ。
完全に終わりだ。
『っ……!』
キヨは拳を握る。
(今すぐレトさんを探さなきゃ!でも、どこにいるんだ….?)
校舎裏。
中庭。
体育館裏。
どこにいるか分からない。 時間がない。
その時だった。
頭の中にあるアイディアが浮かんだ。
ニヤリと笑い、ある場所へとキヨは走り出した。
続く
コメント
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ああ、もう…キヨくんの心情が痛いほど伝わってきました。 「ずっと友達のままでよかった」って言葉、心にグサッときましたよ。好きだからこそ怖くなる気持ち、すごくわかります。 ガッチマンと牛沢の「逆だアホ」のツッコミ、最高でした!ああいう親友がいてくれて良かったですね。 最後の「レトさんは俺のだ!」…思わず声が出ました。続き、気になりすぎます!