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阿炎快空
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阿炎快空
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阿炎快空
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「いやあ、にしてもビックリですよ!通り雨だと思って空を見上げたら、人が降ってきてるんですもの!しかも気になって見に行ったら、それがまさか修さんのご友人とは!世間ってのは狭いもんですねえ!」
由宇の前を歩くオーマが、陽気な声で話し続ける。
「……ねえ、オーマさん」
「オーマで良いですよ、由宇さん」
「えっと——じゃあ私も、由宇でいいよ」
「いえいえ!修さんのご友人に、呼び捨てだなんてとてもとても!」
「そ、そう……」
完全にペースに流されてしまっている。
由宇は何とか気を取り直して、
「それでね、オーマ」
と続けた。
「何ですか、由宇さん?」
「私達は一体、どこに向かってるの?」
「この街一番の、物知りのところです」
「物知り?」
はい、と答えて、オーマが由宇を振り返った。
由宇の不安を打ち消すように、自信に満ちた口調で続ける。
「彼ならばきっと、あなたを救う知恵を授けてくれるはずです!」
オーマの名は、事前に修から聞いていた。
オーマにその事を伝えると、彼女は大いに驚き、そして喜んだ。
その後で由宇の経緯を知ると、今度は悲しみ、怒り、挙句の果てに、
「こうして会ったのも何かの縁!私についてきてください!」
と、返事も待たずに歩き出したのだった。
「何を隠そう、由宇さんの住む世界への行き方を教えてくれたのも彼なんです。まあ、大船に乗ったつもりでいてくださいよ!」
「うん……ありがとうね、オーマ」
「お礼なんてよしてください!なにせあなたは、命の恩人のご友人ですから!」
どうやらオーマの中で、修はかなり神格化されているらしかった。
「あの人がいなければ、私は今頃、鴉の餌にでもなっていたでしょう。それをわざわざ、見ず知らずの私なんかの為に、異界にまで足を踏み入れて——まったく、素晴らしいお方です」
オーマの話によれば、埋葬されてから生まれ変わるには、(由宇の世界の時間で)数ヶ月から半年かかるのが普通らしい。
しかし今回はなんと、たったの十日での復活となった。
どうやらオーマは、それすらも修が原因だと思っているようだった。
「間違いありません!修さんが心を込めて弔ってくれたおかげですよ、きっと!」
「そういうのって、関係あるもの?」
「いや、まあ、わかりませんけどね。ただ、猫同士での埋葬は何とというか——もっとこう、打算的な感じですからね。助け合いと言えば聞こえはいいですが、『お前のことを埋めてやるから、お前も何かあったら、俺のことをちゃんと埋めろよ』、みたいな」
オーマ曰く、本来ならばすぐにでも修にお礼をしに行きたかったそうだ。
しかし、復活後はしばらく体が思うように動かないらしい。
ようやく調子が戻ってきたし、そろそろ——と思っていたちょうどその時、由宇が空から降ってきた、とのことだった。
「いやあ、凄い偶然ですよねえ。こんなこともあるんですねえ」
「偶然、なのかな……」
にしては、あれもこれもタイミングが良すぎる。
まるで、全てが何者かに仕組まれているような——……
由宇がそう言うと、オーマは、
「日頃の行いがいいから、神様だかご先祖様だかが手助けしてくれてるんじゃありませんか?」
と、これまた楽観的なことを言って笑った。
「ご先祖様、か……」
修に聞いた話では、同級生の中村蒼梧には、その手の存在の加護が全くないらしい。
一応毎年、墓参りは欠かしていないが——私のことはキチンと見守ってくれているのだろうか?
由宇はふと、先ほど助言をくれた謎の声の事を思い出した。
あれはひょっとして、守護霊的な何かの声だったのか?
考えても、わからないことばかりだ。
路地裏を抜け、通りに出る。
人通りは全くない。
並ぶ建物もあちこちが崩れており、まるで戦争か大地震でもあったかのような有様だ。
「この辺りは我々、野良猫達の居住区ですね。ああ、そうだ。注意してください。噂では最近、血の味をおぼえた有刺鉄線がこの辺を徘徊しているらしくて——おっと、由宇さんは今、襲われる肉体が無かったですね。とは言え、脅かすわけではありませんが、魂に触れられる類の化物もいますんで。何かと物騒な街ですし、用心するにこしたことはないですよ」
「わかった、気を付けるね」
言いながら、辺りを見渡す。
と——由宇は建物の陰に、一匹の三毛猫を見つけた。
刺すような鋭い目つきで、こちらを睨みつけている。
軽く会釈する由宇だったが、三毛猫はさっと身を翻し、どこかへ走り去ってしまった。
「気にしないでください。みんな、よそ者への警戒心が強いんで」
「う、うん……」
頷きつつも、あそこまで露骨に警戒されると、正直ショックではある。
そんな由宇の内心を察したのか、
「猫、お好きなんですか?」
とオーマが尋ねる。
「うん。でも、お母さんがアレルギーだったから、飼うことは——あっ」
「どうしました?」
「ごめん、失礼だったかな?オーマの前で、『飼う』とか言うの」
由宇の言葉に、オーマは可笑しそうに笑った。
「気にしないでください。一口に猫とは言っても、〝こちら〟と〝そちら〟では別の生き物も同然ですからね。聞いた話では、〝そちら〟の猫はアレでしょう?全く喋らないんでしょう?」
「うん、そうだね」
「たしか〝そちら〟の人々は、『犬派』と『猫派』に分かれて憎しみあっているとか」
「いや、別に憎しみあっては……」
「あと、『きのこ派』か『たけのこ派』かで凄惨な戦争が起きていると聞きましたが?」
「……えーっとね」
どうやら、随分と偏った知識を仕入れているようだ。
何と説明したものか、由宇が迷っていると、
「それにこちらの世界にも、いわゆる『飼い猫』はいますしね」
そう言って、オーマは遠くに浮かんだ立方体にチラリと目をやった。
「ああ——あの黒猫」
ナハトという名の、魔女の飼い猫。
オーマの知り合いなのだろうか?
由宇が尋ねると、オーマは、
「別にそういう訳ではありませんが、いつも魔女と一緒にいますからね。ちょっとした有名猫ですよ、アレは」
そう答えた後で、
「とは言っても——アレこそ、我々とは全く別種の生き物ですがね」
と呟いた。
コメント
1件
オーマ、めっちゃ元気で話しやすいキャラだね〜!😊 修さんを「命の恩人」って崇めてるところ、ちょっと面白くて可愛い(笑)あと「きのこ派vsたけのこ派戦争」とか、こっちの世界の情報が偏ってるのツボった😂 三毛猫に睨まれる由宇、ちょっと切ないけど…物知りの人に会う展開、すごく気になる!次どうなるんだろ⋆♡