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一体どういう意味だろうか? 由宇が真意を測りかねていると、
「まあ、そんなことより——」
オーマはニヤニヤした笑顔を浮かべ、由宇の方を見た。
何とも表情が豊かな猫だ。
「——実際のところ、どうなんですか?」
「どうって……何が?」
「何って、修さんとの関係ですよ!」
ああ、と苦笑する由宇に、
「隠さなくってもいいじゃないですかあ。ガールズトークしましょうよお」
と、オーマが甘えた声をあげる。
「先ほどは〝友達〟と言っていましたが……果たしてただの友達の為に、命をかけて魔女との〝ゲーム〟に参加する人なんていますかねえ?」
「いないことはないんじゃない?」
由宇がそう答えると、
「まあ確かに、修さんならしそうですね」
と、オーマもあっさり自説を引っ込めた。
「では、本当にそういう仲ではなく?」
「うん。それに友達って言っても、ちゃんと喋ったのは今日が久しぶりだったし」
「あらら、そうなんですか?」
「昔は仲が良かったけど、中学に上がってからは全然」
「何かきっかけでも?」
どうだろうねえ、とはぐらかしつつも、由宇は頭の中で、そのきっかけとなった出来事を鮮明に思い出していた。
由宇は幼い頃から、運動神経が良かった。
同学年の女子の中では一、二を争うくらい足が速かったし、六歳から始めたミニバスケットボールでは、めきめきと頭角を現した。
激しく動く際に邪魔になるので、髪形はベリーショートにしていた。
性格はいわゆる「男勝り」というわけでもなかったが、その真面目さゆえに学級委員などを務める機会も多く、掃除の時間に遊んでいる男子に注意をすることもよくあった。
それ故に反感を買いやすかった、というのもあるのだろう。
「おとこおんな」などと呼び、由宇をからかう男子も少なからずいた。
とは言え、由宇自身はそこまで気にしていなかった。
同年代の男子が、ひどく子供に思えた。
唯一の例外が、修だ。
物腰が柔らかく、思慮深い彼と話すのは楽しかった。
修の気持ちはわからない。
しかし、由宇自身は——たぶん、好きだったのだと思う。
それは、小学五年生の時だった。
放課後、先生に頼まれ職員室にプリントを運んだ後、由宇は教室へと戻った。
教室ではちょうど、数人の男子が修を取り囲んでいるところだった。
「修さー、椎名とめっちゃ仲良いじゃん」
「そうそう、よく二人で話してるしさ」
「修って、あーいうおとこおんなが好きなわけ?」
「でもさ、お似合いじゃね?こいつ、運動とか全然ダメで、女みてえだし」
「あ、たしかに!」
「何?結婚すんの、結婚」
修は、顔を真っ赤にして叫んだ。
「やめろよ!全然好きじゃないよ、あんなやつ!」
その直後——由宇と修の目が合った。
修のハッとした表情に、他の男子も由宇の存在に気が付く。
「——だってよ、椎名」
気まずさを払拭するように、お調子者の男子がニヤニヤ笑いながら言った。
由宇は無言のまま荷物を取り、教室を後にした。
それ以降、修との関係はぎこちのないものとなった。
決して険悪なわけではない。
グループ活動などで一緒になれば、お互い自然に振る舞う。
しかし——それだけだ。
言葉を交わす機会は、極端に減っていった。
二人とも、放課後の件については触れなかった。
春休み。
修が交通事故にあったらしいと聞いた。
命に別状はないと知り、ほっと胸をなでおろした。
六年生では、修とは別のクラスになった。
無事に退院してきた修が、廊下の向こうから歩いてくるのが見えた。
ここで声をかければ、関係が元に戻るのではないか——そんなことを思った。
——聞いたよ、死にかけたんだって?
——もう大丈夫なの?
——どうせ、本読みながら歩いてたんでしょ。
——馬鹿だなあ、ホントに。
そんな軽口が、頭の中を駆け巡る。
しかし結局、それらの言葉が口から発せられることはなかった。
かつてどんな風に修と喋っていたのか、体が忘れてしまったかのようだった。
もしかしたら、それは向こうも同じだったのかもしれない。
そして、二人はすれ違った。
オーマには悪いが、たいして面白い話でもない。
どこにでも転がっている、ありふれた悲劇だ。
「……まあ中学に上がって、環境が変わると、いろいろね」
由宇がそう言うと、オーマは納得いっていなさそうな様子で、ふうん、と呟いた。
「そんなもんですかねえ——あ、いましたよ!」
オーマの言葉に、顔をあげる。
しかし、そこには誰の姿もなかった。
薄霧の中、建物が崩壊してできた瓦礫の山がそびえ立っているのみである。
「ねえ、オーマ。街一番の物知りっていうのは、一体どこに……?」
「目の前にいらっしゃいますよ。ほら」
そう言うオーマの視線の先——そこにあったのは、瓦礫の傍らにポツンと佇む、一本の電柱だった。
コメント
1件
ああ〜、第39話「恋バナ」読んだよ!😭💕 由宇と修の過去、めっちゃ切なかった……。 小学生の頃、あんなに仲良かったのに、男子のからかいで修が「好きじゃない」って言っちゃった場面、胸がギュッてなったよ。 お互い気にしてるのに、すれ違っちゃう感じがリアルで辛い…… でもオーマ(猫)がガールズトークしたがるの、可愛すぎるでしょ!笑 最後の「街一番の物知り=電柱」ってオチには思わず「えっ!?」ってなったよ!次が気になる〜!!✨
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