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ゆゆゆゆ
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昼過ぎ。
ピークが過ぎたピザ屋。
さっきまでの喧騒が嘘みたいに静か。
スタッフが数名。
片付けをしている。
エリオットはカウンターの中。
トレーを拭きながら、にこにこしている。
でも。
ちらっと視線。
店の隅。
チャンス。
椅子に座っている。
コイン。
カラン
でも。
さっきからずっと同じ。
雑。
明らかに機嫌が悪い。
エリオットが声をかける。
「チャンス」
「……」
返事がない。
エリオットは少し首を傾げる。
それからカウンターを出る。
ゆっくり歩く。
チャンスの前まで来る。
そして――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが前に引かれる。
「……」
チャンスが低く言う。
「仕事中」
エリオットはにこっと笑う。
「終わった」
チャンス。
「まだいるだろ」
エリオットはちらっと周りを見る。
スタッフ数名。
でも気にしてない。
「いいじゃん」
チャンス。
「よくない」
エリオットは少し顔を近づける。
「ねぇ」
チャンス。
「なんだ」
エリオット。
「怒ってる?」
チャンス。
「怒ってない」
エリオット。
「顔」
チャンス。
「うるさい」
エリオットは楽しそう。
「さっきの」
チャンス。
「……」
エリオット。
「ネクタイ」
チャンスの手が一瞬止まる。
エリオットが続ける。
「そんな嫌?」
チャンスは少し黙る。
それから言う。
「……ああいうの」
エリオット。
「?」
チャンス。
「見せんな」
エリオットが瞬きする。
「なにを」
チャンスは少し顔を逸らす。
「……楽しそうな顔」
エリオット。
一瞬止まる。
それから。
にこっと笑う。
ネクタイ。
ぐい
「チャンス」
「なんだ」
エリオットが少しだけ声を落とす。
「嫉妬」
チャンス。
「違う」
エリオット。
「顔」
チャンス。
「……」
その時。
奥でスタッフが声をかける。
「エリオット、これ片付けていい?」
エリオット。
「うん、お願い」
すぐ戻る。
でも手は。
ネクタイを離さない。
チャンスが小さく言う。
「離せ」
エリオットは少しだけ真面目な顔。
「やだ」
チャンス。
「……」
エリオット。
「チャンス」
「なんだ」
エリオットが静かに言う。
「さっきの人のネクタイ」
チャンス。
「……」
エリオット。
「確かに派手だったけど」
少し間。
「好きじゃない」
チャンスが少しだけ目を動かす。
エリオットはにこっと笑う。
そして。
もう一回。
ネクタイ。
ぐい
「こっちの方がいい」
チャンス。
「……」
エリオット。
「いつも触れるし」
チャンスがため息をつく。
でも。
少しだけ笑っている。
チャンスが言う。
「……ほんと」
エリオット。
「ん?」
チャンス。
「ずるいな」
エリオットは楽しそうだった。