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『秦城っていうんだ。俺は□□。席も隣だし、よろしくね』
中学三年生。クラス替えしたばかりで慣れない席、新しい黒板、初の顔合わせ。隣の席に座っていたのは、とても明るい笑顔の少年だった。
ただ、席についてすぐならともかく、彼は少し経ってから自己紹介をしてきた。だからかもしれないが、第一印象は「不思議な子」だった。
彼は帰宅部。だから放課後は遅くまで教室に残り、何かに没頭していた。……確か読書だ。分厚い、よく分からない本をいつも読んでいた。
『それ何の本?』
次に話しかけたのは俺の方だった。
本が気になったわけじゃない。漫画でも参考書でも何でもいいから、話題のネタが欲しかった。
彼ともっと話してみたい。何となく、そう思った。
『世界の怪奇現象を纏めた本。図書室から借りたんだけど、すごい面白いよ。読む?』
『いや、いい』
変わった奴だった。UFOや宇宙人は絶対にいると言い張り、変な動画や写真をたくさん見せてきた。でもそれが嫌じゃなくて、むしろ引き寄せられた。オカルトじゃなく、彼の人柄に。
『秦城、この前クラスの女子に告られてたでしょ』
『何で知ってんだよ!?』
『たまたま帰る時に見かけたんだよ。雰囲気壊すといけないから隠れてたんだ』
彼は実に真剣な表情で席に座った。
確かに彼の言うとおり、俺はよく告白される方だった。親しくない女子からも視線を感じるし、バレンタインには必ずチョコを貰う。
ただ俺は異性に興味が無いから、告白を受け入れることができなかった。
『えっ、フッたの? どうして、可愛い子だったじゃん』
同性愛者であることは伏せて、告白を断ったことだけ告げると彼は驚いた。
『可愛いけど、全然話したことないんだぞ。顔が良ければ誰でも良いわけじゃない。仲良い子がいいよ。お前が女だったら付き合ったのに』
『えっ。ちょっと、変なこと言わないでよ』
『ごめんごめん』
彼は視線を外して俯いたけど、その頬は少し赤かった。わずかな違和感。それを気に留めることもなく、時間だけが流れていった。
いつも一緒にいた。
放課後は必ずどっかに寄って、好きなジュースを買って、たまに彼の変な趣味の映画を観た。
大切な親友。卒業式で別れるのが嫌だと思った。
『ごめん。俺……秦城のことが好きだ』
でも全て壊れた。
彼から告白されたあの日が、悪夢の始まり。