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しめさば
「エイダンさんニャら、鮮度を保持したままいつまでも収納出来ると聞いているのニャ。ニャので報酬2割増で、ホウトン村への指定日時配送を追加依頼するニャ。具体的には24日の朝10時指定でお願いしたいニャ。もし良ければ、一週間くらい休みを取って来て欲しいニャ。あいている部屋というか家は幾つもあるので、泊まっても問題ニャいニャ」
そう言ってマーニャさんは、依頼票を出してくる。
今言った内容、つまり時間指定と宿泊7日分無料を含め、5万円の追加報酬として書かれていた。
内容そのものについては、問題はない。
ただ宿泊7日間という期間が引っかかる。
これってきっと、間違いなく……
「この7日間というのは、インガンダ・ルマを食べた後、仕事をしても大丈夫になるまでの期間ということですか?」
マーニャさん。ニヤリという感じの表情を浮かべた。
「やっぱり知っていたニャ。その通りで、インガンダ・ルマは生である程度食べると、下から漏れるのニャ」
綺麗な女性がこういう話をするのを聞くというのは、正直恥ずかしかったりする。
でもマーニャさんは特にそういったことを気にしていない様だ。
だから俺も、極力いつも通りの表情を意識しつつ、話を聞いている。
「元々猫獣人は、一般の普人に比べて肉食寄りの体質ニャ。特に腸が、野菜や穀類を食べるのに向いていニャいニャ。だから普人と同じ生活をしていると、便秘にニャりやすいニャ。だから年に一度は油を流して、胃腸をきれいにする必要があるのニャ」
語っている分野の恥ずかしさもそうだが、内容そのものもなかなか酷い。
だいたいそんなので、本当に胃腸がきれいになるのか、正直なところ疑問だ。
そもそも猫獣人は猫ではなく人間。
そういった体質的違いは、普人間の個人差と同程度しかないとされている。
少なくとも前世はそうだった。
多分この世界でもそうだろう。
それでもマーニャさんの解説は、更に続く。
「でもここ3年、インガンダ・ルマが入らニャくて、皆さん体調が完全ではニャいのニャ。だから今回インガンダ・ルマが入ったのを機に、ホウトン村出身の猫獣人を集めて、治療と体調回復のために皆で食べるニャ。皆、一週間以上の休みを取ってくる筈ニャ。もちろんミーニャもやってくるニャ」
つまり尻から油が漏れること覚悟で、猫獣人が集合してくるわけか。
なんだか酷い絵面が思い浮かんでしまう。
それも全員、若くて綺麗な猫獣人さんの姿で。
何せ俺が知っている猫獣人は、今のところミーニャさんとマーニャさんだけだから。
あとミーニャさんが良く言う『猫獣人だから仕方ない』というのは、ミーニャさん独自の認識とか言い訳ではない気がしてきた。
この胃腸をきれいにするなんて理屈が、村全体でまかりとおっているところからみると。
きっとホウトン村内では、そういった医学的にはどう考えてもおかしい、猫獣人ならではの常識が蔓延しているのだろう。
となるとホウトン村は、インガンダ・ルマを届けるのはいいとしても、長居はしない方が正解という気がする。
「でもここで、俺が持っているインガンダ・ルマを確認しておく必要はないですか」
「エイダンさんからは、インガンダ・ルマの油の匂いがするニャ。ニャら獲ってきたのは確実ニャ。ついでに言うと、全く同じ魚でニャい限り、同じ魚でも微妙に匂いは違うのニャ。
ニャので問題は全くニャいニャ。3匹出してもらえれば、十分に全員が食べられるニャ。ついでに言うとここ3年インガンダ・ルマを食べていニャいので、予算は充分あるニャ。6匹くらい出してくれても問題はニャいニャ。お金は依頼通り、生で食べられるもの1匹25万円支払うのニャ」
マーニャさん、俺が7匹釣って1匹解体したことまで気づいている模様。
ミーニャさんもきっと同様に、そういったかぎ分けが出来るのだろう。
というか人間とそう機能は変わらない筈なのに、何故そんなことが出来るのだろうか。
まだ『魔法でわかりました』の方が納得できるのだけれども。
「あと、ミーニャからはこんニャ伝言もあるのニャ。
『ホウトン村付近のアクラ川は、汽水湖状態にニャっているのニャ。海の魚も川の魚もいっぱいいるニャ。草食いの他にも大きかったり太くて細長かったり、美味しい魚がいくらでも獲れるニャ。
あと怖いお姉さんからの指名依頼も、この期間には入らニャいよう調整しておくのニャ。だから22日の話し合いだけ出れば、一週間休んでも問題ニャいニャ』」
ミーニャさん、効果的な俺の誘い方を把握している様だ。
流石というか、あれだけ飯をたかっていたら把握は当然というか……
あと冒険者ギルドの方の日程調整までやっているのは、流石といっていい。
「あと、ホウトン村でのお祭り用下着も、客用に無料で提供するニャ。インガンダ・ルマを心ゆくまで食べるには、絶対必要ニャ。村全員に十分行きわたる様発注しているので、1人2人増えたくらいでは問題ニャいニャ」
漏らすの上等ということか。
ただそれを綺麗なお姉さんに言われると、複雑な感情になるのだけれど。
しかし汽水域で釣り物豊富というのには、正直なところ惹かれてしまう。
釣ったものがストックできるとは思わないけれど。
ミーニャさんみたいなのがいっぱいいそうだから。
「何ニャら友達も連れてきていいニャ。汽水ではニャく真水の池や森があるので、魚以外の獲物も豊富ニャ。特に水鳥は豊富で数も多いニャ。あと薬草や、猫獣人は食べニャいけれど、山菜も豊富ニャ」
これは言外に、『ジョンも連れてこい』と言っているのだろう。
きっとこの辺も、ミーニャさんの伝言というか、根回しがあったに違いない。
つまり、全てはミーニャさんによって先回りして根回し済み。
行って滞在するしか無さそうだ。
俺一人では何だから、ジョンも巻き込んで。
「わかりました。それでは22日、そちらに向かいます」
「ありがとうニャ。あと市場で買える程度の食料は自在袋に入れて持ち込むから、準備の必要はニャいニャ。エイダンさんはインガンダ・ルマと、魚捕り道具を持ってきて貰えば充分ニャ。ただ新鮮ニャ魚介類は大歓迎ニャ……」
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