コメント
1件
💚
同じグループのメンバーも、9人もいる大所帯だとその人間関係はいささか複雑だ。
どの組み合わせも仲が良いし、誰のことも大好きだけど、それぞれの関係値によって織りなす親密さのグラデーションはかなり変わる。
たとえばゆり組。
宮舘涼太と渡辺翔太の二人は、30年越しの幼なじみというだけあって、言葉なんか交わさなくてもいつもわかり合ってるみたいに見えるし、お互いを何もかも理解しているからこそ、普段はべったりと付き合っている印象はなかった。
どちらかというと翔太は康二と、涼太は佐久間と一緒にいることが多い。
俺の知る限り、二人がプライベートで会っているという話を聞いたこともないし、印象もない。それなのに唯一無二の存在同士に見えるのは、俺だけの気のせいじゃないと思う。
それに、俺と佐久間。
一緒に旅行もするし、遊ぶし、特別な日じゃなくても小さなプレゼントを贈り合うような間柄だが、もう、長くいすぎて空気みたいな存在だ。好きなものは全然被ってないけど、俺たちは補い合うようにお互いをリスペクトしている。佐久間と一緒にいると楽だし、何より一番話しやすい。特筆すべきは佐久間の底抜けの明るさ。佐久間と一緒にいると、何でもないことでも笑い合って、どんな状況も『楽しい』に変わってしまう。不思議な魅力に満ちた友人だ。
他にも照とふっか、康二と涼太、めめとラウール。
ぱっと思いつく仲良しコンビは何組もいる。
それにひきかえ、俺と翔太を結びつける人は少ないと思う。俺たちは、仲の良いメンバー間でも少し距離のあいた存在だ。
それなのに、いつ頃からか、翔太の存在は俺の中で大きくなっていて、 自分でもおかしいなと思うことが増えた。
◇◆◇◆
「ねぇ、翔太ってなんでそんなに綺麗なの?」
朝の情報番組で、翔太を特集した映像を見て、思わず感嘆が漏れた勢いそのままに、次の仕事でたまたま会った翔太に、つい、そう言ってしまったことがある。
「……は?」
翔太は、きょとんとした顔で俺を見ると、たちまち眉間に皺を寄せた。
「知らん」
その後すぐに逃げるようにスタジオに向かって行ってしまったから、俺は何も言えなくなってしまった。
結局その日は、悪いことを言ってしまったんじゃないか、気を悪くしてしまったんじゃないかと気もそぞろになり、一日中何も手に付かなかった。収録後に何か悩みでもあるのかと同期のふっかに心配されたくらいだ。
その日交わした会話はその一度だけ。
俺は、その夜は勉強も手に付かず、ベッドに入ってもなかなか寝付けなかった。真っ暗な部屋でスマホを頭上にかざして、何かフォローのメッセージを送ろうかとも何度も考えたが、のちのち、余計に後悔しそうなので止めた。