俺は一体、どうしたのか?
退屈凌ぎのための女だと思っていたのに、奪いたいだなどと思ってしまうなんて。
それほど俺は弱っているというのか。
___せめて金があればなぁ…
サイドテーブルに置かれたミハルの腕時計を見た。これならいくら借りられるのだろう?
「時計が、どうかした?」
「ん?あぁ、わりといい時計してるんだなと思ってさ。これ、いくらしたの?」
「10万くらいだったはず、婚約指輪の代わりにもらったもの、どうして?」
それくらいなら、質に入れてもたかがしれている。適当に誤魔化して昼飯を食べに行くことにした。
ホテルの支払いは、ポケットに無造作に入れてあった一万円札で支払った。カードがないということは、不便だ。そしてなんだか惨めだ。
___やはり、俺はもう終わりなのかな
ミハルをホームまで送る。
「お土産、買って行こうっと」
まるで観光にでも来たようなミハル。
俺とあんなふうに過ごした後でも、俺に愛してると言った後でも、こんな風に家族のもとに帰るミハルに腹が立ってきた。
うれしそうにお土産を物色している姿を見ていてひらめいた。
___そうか、ミハルから金を出させればいいんだ
それから小芝居をうつことにした。思った通り、ミハルは真剣に俺の話を聞いて、そして少しならお金を出すと言ってきた。
___会社員なら、いくらかの蓄えはあるだろう
お金はいただく、その代わりにミハルが欲しがっている“俺の愛”というものを存分に与えることにする。甘い言葉と時間と引き換えに、お金をもらうだけだ。