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ひとしずく 翔馬の場合

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ひとしずく 翔馬の場合

18 - 第18話 偽りの愛と引き換えに

2025年07月02日

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俺は一体、どうしたのか?


退屈凌ぎのための女だと思っていたのに、奪いたいだなどと思ってしまうなんて。

それほど俺は弱っているというのか。


___せめて金があればなぁ…


サイドテーブルに置かれたミハルの腕時計を見た。これならいくら借りられるのだろう?



「時計が、どうかした?」


「ん?あぁ、わりといい時計してるんだなと思ってさ。これ、いくらしたの?」


「10万くらいだったはず、婚約指輪の代わりにもらったもの、どうして?」


それくらいなら、質に入れてもたかがしれている。適当に誤魔化して昼飯を食べに行くことにした。


ホテルの支払いは、ポケットに無造作に入れてあった一万円札で支払った。カードがないということは、不便だ。そしてなんだか惨めだ。


___やはり、俺はもう終わりなのかな


ミハルをホームまで送る。


「お土産、買って行こうっと」


まるで観光にでも来たようなミハル。

俺とあんなふうに過ごした後でも、俺に愛してると言った後でも、こんな風に家族のもとに帰るミハルに腹が立ってきた。


うれしそうにお土産を物色している姿を見ていてひらめいた。


___そうか、ミハルから金を出させればいいんだ


それから小芝居をうつことにした。思った通り、ミハルは真剣に俺の話を聞いて、そして少しならお金を出すと言ってきた。


___会社員なら、いくらかの蓄えはあるだろう


お金はいただく、その代わりにミハルが欲しがっている“俺の愛”というものを存分に与えることにする。甘い言葉と時間と引き換えに、お金をもらうだけだ。






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