まさか今、自分がこんな素敵なシチュエーションの中にいるなんて、何だか夢を見ているようだった。
常磐グループが経営するリゾートホテル。
都会からそれほど離れていないこのホテルは、海のそばに建てられているため景観がとても美しい。ネットの写真よりも、実物ははるかに華やかで、心も体もリラックスできそうな何とも優雅な佇まいだ。
今日、本当は、電車とバスで行くからと言った私の申し出を断り、常磐さんが車で迎えに来てくれる予定だった。だけど、急な仕事が入り、代わりに常磐さんのお抱え運転手さんがわざわざ来てくれた。上品な言葉遣いや丁寧な対応が印象に残る立派な紳士だ。
片道1時間ほどで到着し、ホテルの前で降り、何度もお礼を言うと、運転手さんは素敵な笑顔で私を見送ってくれた。
チェックインまでは、まだ十分に時間がある。
私は荷物を預け、早速常磐さんに勧められたプールに行ってみることにした。
水着に着替え、中に1歩入って驚いた。
目の前に、海が遠くまで広がるように見える解放的なインフィニティプールが現れ、その絵画のような美しい光景に息をのんだ。
「海に手が届きそう。まるで海外にいるみたい……素敵」
感動を覚えるほどの素晴らしい景色を1人で見ていることが少し寂しいけど、心はとても穏やかだった。
プールの後はリラクゼーションサロンでアロママッサージ。とても良い香りに包まれながら、慣れた手つきで身体全体をほぐしてもらい、何ともいえないリラックス気分を味わった。
「いかがですか? 松雪様」
「良い香りの中で眠ってしまいそうなくらい気持ち良かったです。本当にありがとうございました」
「季節やご気分に合わせた香りを取り揃えてお待ちしておりますので、またいつでもお越し下さいね」
いつでも……は無理だけど、心も体も軽くなり、オシャレなリゾートスパまで楽しんで、かなりの贅沢をさせてもらってることに改めて感謝した。
夕食は、落ち着いた雰囲気のレストランで、最高の食材を使った日本食をいただいた。どれも盛り付けが繊細で、見た目にも楽しめた。
ママさんの次に美味しい料理に、最後まで大満足だった。
日常から大きくかけ離れたキラキラした世界。
セレブリティな人達にもすれ違ったりして、もはや自分が何者かわからなくなりそうだった。私なんて、本来ならこんな場所にいてはいけない人間のはずなのに。
一生分の幸せを使い果たしたような1日だった。
きっと、こんな時間を過ごすことはもう二度とないだろう。
不思議な感覚のまま、私は部屋に戻った。
あまりにも広くて豪華なスイートルーム。夕食前に1度入った時にはまだ存在していなかった夜の光景が、大きな窓に映し出されている。
「綺麗……」
無数の小さな光が散りばめられた壮大な美しい世界に、思わずため息がもれた。
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