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嗚呼、ごめんなさい_
そして___
この作品は二次創作です
↑捏造あり
🪷🐉のネタバレを含みます
視点 mob
いつもの様に、あの貿易商の元へと足を運んだ。自分はもうとっくに”トラノコ”の虜になってしまっている様だ。離れられれば良いのだが、今更そんな事出来ない事は既に悟っている。
sm __嗚呼、いらっしゃい
彼はいつも通り、狡賢く憎たらしく、それでも尚何処か惹かれるような笑みで私を出迎えた。嗚呼腹が立つ。悪いと分かっていながらこんな事を続ける目の前の男も、こんな奴に多少ばかり魅力を感じてしまっている自分も。
_だが今日は少し様子がおかしい。少し前にトラノコを買いに来た時と比べ、あの悔しい程秀麗な笑みの中に多少の焦りや恐怖だろうか…兎に角普通では見られない感情が奥底から湧いているような雰囲気を醸し出しており、少しだが強張った顔をしているような気がする。彼の顔の全体像を見ると、その原因らしきものは見えた。
___左眼。彼の藤の花のように美しく、貪欲な瞳の片方が伺えない。どうやら眼帯で隠されてしまっているようだ。
「おや、スマイルさん。其方の左眼は如何なさったのかな。」
斗私が伺ってみると、彼はトラノコを用意し乍先程より口角が2mmほど下がり、眼を伏せた。長い彼の睫毛は夜の街に飾られた提灯によって薄らと照らされている。
なんと美しい顔だろう、斗私は見惚れて本題の話を直ぐさま忘れてしまった。
「…トラノコ、また高くなったのかい?」
彼の左眼についてはもうすっかり忘れ、最近段々と高値になってきているトラノコの話へと移した。
sm いやいや、流石に此れ以上は大変だろうと思ってね、何なら少し値下げをした所さ。
「それはそれは、あの狡賢く値下げなどした事の無かった貴方が自ら値下げするとは、物珍しい事も有るんですね。」
返答は返ってこない。まあ予想通りと言った所だ。交渉の時は流暢に喋る彼だが、自らの事となるとちっとも話やしない。分かりきっていた事だからそこまで気にも止める必要はないだろう。自分は彼ではなくトラノコに用があるのだから。
視点 sm
今日も一仕事を終え、店の奥に有る鏡の前で眼帯を外し、自らの顔を見る。片眼は藤色に、もう片方は_
其の時、自分がよく店番をしている辺りから「お〜い」斗声が聞こえてきた。
声の主の元へ向かうと、近頃トラノコを良く買いに来る茶香師の彼が出迎えてくれた。
彼の耳に有る耳飾りが風に靡き、其れと共に肌寒さを感じる。彼は「こんにちは」斗軽く会釈をすると、いつもの様に自分の家で御茶と料理を馳走するので来て欲しい斗言い、店から俺を連れ出した。
彼の小噺は誠に面白い物だ。彼の失敗談や可笑しな彼の友人の話、彼の母親についての事等を話してくれた。彼は其の母親にトラノコを飲ませている様だ。そしてトラノコを飲ませても母の容態が一向に良くならない、斗相談を持ち掛けた。
sm それは仕方ないさ、薬なんて殆どが直ぐに効くものばかりでは有るまい。
_嗚呼、だから誤魔化すのは苦手なんだ。彼は納得したような声で「へぇ、」と相槌を打ち乍、然し俺を全く信用はせず、寧ろ怪しむ様な鋭い目付きで此方をじいっと見つめた。俺はこの空間が1番嫌いだ。
できる物ならこんな商売俺だってしたくないさ、でもしなきゃ飢え死ぬかいっそ死んだほうがマシな程に辛い仕事をするしかないのだ。自分の為さ、どうか許しておくれ。
br 今日の御茶は君の御気に入りの〜〜さ。確かそうだったろう?
sm 嗚呼、そうだな。其れにしても良い香りだ。流石は腕自慢の茶香師と言った所か。
br そんなに誉めても何も出ないよ。あと御茶だけではなく料理も少しは手を付けてくれると嬉しいな。
sm すまない、余りにも御茶が美味しそうだったものでね。料理も有難く頂くよ。
彼は料理も御茶も何方の腕もとても良い。然し、其の料理を口に運んだ瞬間、頭を強く叩きつけられる様な痛みが一瞬来たと思ったら、次は身体が動かなくなり其のまま意識を失った。
目が醒めると、路地裏に居た。目の前には、やはり茶香師が居る。やっとの思いで何とか立ち上がると、何かを考える暇も無く腹部に彼の手にあった何かが襲い掛かってきた。
数秒してから気が付いた。彼は手に持っている小さな小さな剣で俺の事を刺したのだ。腹部からは血がドクドク斗流れ出し、最早止血をするのは不可能だと悟る。
br 御前のせいで、御前のせいで俺の母親は…‼︎
sm 嗚呼、ごめんなさい_
掠れた声で己が発した言葉。確かに言った、でも自然と口から出てきた為、自分でも言った言葉に困惑をしていた。
先程まで彼が俺に向けていた見ているだけで殺されてしまいそうな強い復讐の眼差しは、薄らと消えかかっていた。其の代わりに、彼の眼には涙が溢れ、困惑と憎しみで溢れんばかりの顔で此方を見つめていた。
br 何で、何で今更謝るのさ…酷いよ、酷い。
br どうせなら最後まで、ひたすら憎らしい い奴で貫き通してよ…そんな顔でごめんなんて言われたら、君だけが悪い訳じゃないと分かってしまう…
sm …優しいんだな、
今、俺は上手く笑えていただろうか、力が尽きる前に、彼にこれだけは言っておこう。
嗚呼、ずっと君は良い客で、もしも生まれた世界が違ったならば共に過ごす”仲間”となっていたかもしれない。でもこの世界は違う。残酷で、人を騙さないと生きていけない世界。
そんな世界で俺は、最後の言葉に__
sm ありがとう…
君達への感謝の気持ちを贈るよ。
許してくれなくても良いさ、俺はそれだけの事をした。目先の利益に囚われ、自分の為だけに行動をし、多くの人の人生を台無しにした。其の償いという物だろう。
段々と思考も出来なくなる、身体はとっくに言う事を聞かず、多少の力で眼だけは開けていた。だが、もう限界だ。
瞼をゆっくりと閉じた。さあ、これからはきっと俺の罪が裁かれ、世間で言う地獄へと送られる時間となるだろう。
さようなら世界。どうも有難う。
end